田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

アルブレヒトデューラーローズの落花  麻屋与志夫

2009-11-10 16:42:34 | Weblog
11月9日 火曜日

●午前3:45起床。

足もとに気を配りながら階下のDKに降り立つ。

「奥様はバンパイア」のアイデアが浮かんだので寝床でメモをとった。

それだけではこころもとない。

記憶にあるうちにハルに向かおうとすこし早いが起きてしまった。

2時間ほどしかねていなかったが……。

小説を書くのがおもしろくて、ねているどころではない。

●キッチンには天窓がある。

まだ夜なので暗い。

てさぐりで、柱についているスイッチをいれた。

●そこにおもわぬ光景がひろがっていた。

純白のテーブルのうえにバラの花が散っていた。

●薄いアプリコットの花弁が重なっていた。

バラはアルブレヒトデューラーローズ。

テーブルの上の空気を華やいだ濃艶な色合いにそめあげている。

それぞれに重なりちらばったようすはひとの手が介入していない。

――自然な模様をみせていた。

光のあたり具合でできた色の濃淡もいい。

わたしの頭で言語群がすばやく浮かび、その選択をせまってくる。

この瞬間の静謐。

そして散ったバラを惜しみながらも眺めている。

このきぶんを表現するには言葉はあまりに平凡すぎる。

カミサンが起きたらカメラにおさめてもらうことにした。

●バラはなぜ散るのか。

咲きすすみ、落花の時季がきたからだ。

その自己完結的ないさぎよさが怖い。

独語(モノローグ)の崩落。

……ねえ、わたし咲いている。

咲いているのよ。

みてちょうだい。

みてよ。……といったささやきがひとしれず途絶えていた。

さわさわと恐怖がわたしを襲う。

見て、みてといった……モノローグのふいの断絶。

その木霊だけがわたしのこころにひびいている。

●ポットからお湯をそそぎひとりで熱いお茶をのんだ。

       

       

     pictured by 「猫と亭主とわたし



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幽体離脱/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-10 05:26:56 | Weblog
奥様はバンパイァ 69

○そして高熱にうなされるなかで玲加はビジョンをみた。

敵の逃走経路。

そしてアジトを確かめるために追尾していったノボルが苦しんでいる。

誰もいない広いコンクリートの床に投げ捨てられている。

○「たちなさい。ノボル。あなたは人狼よ。あなたは強い。だれにやられたの。こ

こはあなたたちの大麻ファクトリーのあったところ。建物の隅々までよくしってい

るはずでしょう。さあ……わたしとこんな陰気くさいところ……脱出しましょ

う……」

○まだ入り口には立ち入り禁止の黄色いテープがはられていた。

大麻のイイ匂いがする。

それは乾燥させて吸う乾燥大麻のざらざらしたいやな臭いではない。

野生の植物としての大麻の甘ったるい芳香だ。

皮を剥いで麻の綱をつくるために存在している植物としての匂いだ。

だれがタバコにして吸うことを教えたのだ。

近くは終戦後に日光に来たGIだ。

かれらが、日光街道の両側に大麻畑が広がっているのを見て無断でその葉を基地に

もちかえり吸ったのがはじめだ。

古くは悪魔だろう。

アダムとイブにリンゴを教えたように。

わたしたちに血を吸うことを教えたように。

人に麻薬を教えた。

それらのことを、玲加はすばやく悟った。

脳にフラッシュバックがおきたよただ。

「さあ……たてる。ノボル」

「玲加さんか。どこにいるのだ。姿をみせてくれ」

「あなたはわたしたちのたいせつな仲間。たすけてあげる」

「声きり……きこえない」

「わたしの体はまだ家でねているの。幽体離脱したつもりなのに……ダメージがつ

よすぎて声だけしかとばせないの。そう……動けるじゃない」

「不意をつかれて、脳震盪をおこしただけらしいや」

「そう。さあ、この廊下だわ。わたしにも見おぼえがある。さきに階段がある」

○このとき、どかどかと階段を巨体男がおりてきた。

玲加はノボルをみて大声を上げようとする男のこころをすいこんだ。

なんていやらしい。不味い。

○男はポカンとしている。

○「さあ。いまのうちよ!!!」

○ドカ! どか!! Dokadokadoka!!!

と巨体女、巨体男、が階段をおりてくる。

○玲加は虚空にむかって「コーン――」と狐の超音波を発した。

みんなが、みみをおさえている。

のたうちまわっている。

こんなこともわたしはできたんだ。

玲加はさらに音波をたかめた。

「コーン、コーン、コーン」




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