田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

襲撃 2/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-03-15 18:58:24 | Weblog
2

二階はかなりの広さがある。

体育館のような空間がそこにはあった。

目くらましだ。

建物の外観からみてそんな広さがあるわけがない。

数十倍も広くかんじられるのだ。

みように歪みが、現実よりひろくみせているのだ。

頭痛がする。あたまに金属音がする。危険信号だ。

翔太はへたりこみたいのを必死でこらえている。

どこからか幽冥の光のような陰気で弱々しい明かりがさしている。

濃い乳白色の霧が流れこんできた。

霧は渦をまき、しだいに人型を形成する。

声がする。日本語だ。だがどこかおかしい。

「いらっしゃい。歓迎します」

「いらっしゃい。歓迎します」

冥府の底からきこえてくるような陰鬱な声。

とぎれとぎれの声。

翔太には凝集した霧の中にだれかいるようなのだが視認できない。

もどかしい。そして鳥肌だっている。怖いのだ。

姉の死を契機に覚醒した。

それ以前のまだ能力に目覚めず――。

なにか周囲にいるような感じだけで――。

V視認できずにいたころにもどつてしまつたようだ。

両側にいる。前後にもいる。

すっかり取り囲まれた。

「なにごようですか」

「なにごようですか」

普通の人は、なにも見えないから安心して生きていける。

この世のものではない者をみてしまったら……。

平然とは生きていけない。

見えないほうが幸せなのだろう。

だが翔太には見る能力がある。

それがいま発動しない。だから怖いのだ。

見ることができない。




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襲撃/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-03-11 20:52:00 | Weblog
第八章 襲撃

1

夜。

宇都宮の夜は暗い。

オリオン通りの裏。

釜川との間の路地に人影がわいた。

雑居ビルの裏口だ。

表はルーマニヤパブになっている。

通りに面しているとアーケードでおおわれている。

ビルの高さはわからなかった。

三階建てだった。

「表からは飯田室長の班が入る。

おれたちはここから突入する。

逆らうものは消去してかまわない」

織部所長と仕事をするのは翔太もはじめただった。

(こんなことをするのは現実的にみておかしい。

確かに警察の力をかりずにやるにはことが重大すぎはしないか。

でもときとして、現実よりもファンタジーの世界のほうがリアルなこともあるの

だ)

翔太はそう納得して織部につづいた。

ふたりだけだ。

飯田班は6名だ。

ドアはなんなく開いた。

妖気はただよっていない。

2階への階段を上る。





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吸血/夕日の中の理沙子 麻屋与志夫

2009-03-10 19:29:57 | Weblog
体育館の用具室から煙はでていた。

消火器ですでに火は消しとめられていた。

ボヤていどだったのだろう。

無人の部屋からどうして火がでたのかしら? 

集まってきた生徒たちに会話を背に理沙子は歩きだしていた。

黒い帯のようなノロがずうっと校庭のほうまでつづいている。

あのふたりのイメージが理沙子の脳裏に浮かんだ。

(まさか! ソンナ!! ありえない!!!)

あのふたりが、放火するなんて。するわけがない。

進学できないからと絶望的になってはいたが。

あのふたりは、自閉的になってはいたが攻撃性はなかった。

「わたしだって、つい最近まで進学できないとおもっていたんだよ。勉強だけはし

つかりしときなよ。環境がかわるってことだってあるんだから。世の中こんな不景

気はいつまでもつづかないって」

そういって、あのときわかれた。

校庭の隅にこんもりとした森がある。

学校ができるずっと前から。

このへんが那須野が原の南端であったころからの木々を。

そのまま残した一角だ。

黒い帯はその森に理沙子を誘っている。

残された臭いをおいかける犬のように。

理沙子は注意深くすすんだ。

あたりにはだれもいない。

この黒い帯は異様だった。

なにかささくれだっている。

あとからくるものにサインを残している。

あとからくるものの感覚にうったえかけているものがある。

あのこたちだ。そして……Vが一緒だ。

彼女たちは、それをあとからくるものに警告しているのだ。

理沙子は走りだしていた。

Vは興奮している。いがらっぽい大麻ににおいがする。

そして。

ああ。血の臭いだ。けっしてあってはいけない血の臭いだ。

銅のような血の匂いだ。

金っ臭い血の臭いだ。

理沙子はさらにスピードをあげた。

全力疾走した。

森に入る。

そしてみつけた。

ふたりが、首筋から血を流して倒れていた。

血はもう凝固していた。

死の淵にあって、混濁した意識でふたりの残したメッセージ。

吸血鬼にやられた。死者の残した声が理沙子の心にきこえてきた。

吸血鬼にやられた。

理佐子は恋人コウジがVにおそわれたのを目撃して覚醒した。

そのときいらいの激しい怒りがこみ上げてきた。

VVVVVVVV……。

Vにたいする憎悪。激怒。

抹殺してやる。

理沙子に欠けていた最後の闘争本能がめざめた。

敵は消去する。

殺す。

第一級のハンターとしていま理佐子は誕生した。

仇はうつ。かならず、アイツラを倒すからね。

理沙子は涙を流していた。

あいつら人間ではない。

悪魔だ。悪魔なんだ。

アニメの影響もあって、あいつらを甘く見ていた。

あいつらはわたしの敵だ。敵だ。敵はほろぼす。打倒する。

あいつらは乙女の血を吸って……ふたたび若返ろうとしている。

許せない。

携帯が鳴った。

コウジからだった。健康を回復して東京にもどったコウジからだった。

「合格した。おめでとう。理沙子。これで医者の卵だな」

今日が、T大の合格発表の日だということを理沙子はわすれていた。

「理沙子、どうした。なにかあったのか」

理佐子は涙を流していた。





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腐女/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-03-09 15:54:49 | Weblog
姉の姿は消えていた。

(いつからこんなところに、ルーマニヤパブがあったのだ。

それとも夜だけパブとなって現れるのだろうか)

翔太の首筋を冷たいものがなでた。 

扉の向こうにだれかいる。

招かれている。

その気配が凄まじい妖気となって扉の下からながれだしてくる。

翔太はふらふらと扉に吸い寄せられた。

胸で携帯がふるえている。

翔太は扉に手をかけようとしたところで、踏みとどまった。

「翔太すぐきて」

理佐子だった。

「ふたりがふらふらしてる」

7

ふたりは翌日ケロッとして学校にあらわれた。

翔太とオリオン通りのはずれで介抱してやったのがウソみたいだ。

今年初めてできた就職希望のEクラスの生徒だった。

あまりの不況に進学をアキラメタ生徒のためのクラスだった。

まちがいなく大麻を吸っている。

もうすぐ、卒業式だ。

それまではしらんぷりしていてやろう。

というのが翔太の意見だった。

潔癖な理沙子はゆるせなかった。

高校生が大麻を吸うのをゆるせなかった。

おれたちはポリスじゃないから。

ボスである翔太のいうことだ。

理沙子は受け入れた。

それにしても、操にまで大麻が広がっているのはショックだった。

それもヤクザの影がみえがくれしている。と翔太はいっていた。

「あああのひとたち。Eクラスの腐女よ。

BL小説ばかり読んでる、オタクよ」

廊下からこっそりとのぞく。

その姿があまりに異常だった。

精気がない。干からびた感じだ。

始業のベルがなった。

理沙子はじぶんの教室にもどった。

昼まではなにも起きなかった。

弁当を広げていると、廊下がきゅうにさわがしくなった。

「火事よ。体育館から煙がでてる」

廊下にでたとたんに、人の流れにのみこまれた。

みんな体育館に向って走っていた。

「いまごろ、火がでるなんておかしいよ」

「もしかして、放火」

「そんなこといわないほうがいいわよ。でも受験のストレスでだれかが……」

くちぐちに好き勝手なことをいっている。

「あそこは腐女のタマリ場よ」

そんなことを理沙子はきいたことがない。

どうして、腐女とかオタクといってバカにするのかしら。

ひとの好みはいろいろある。

じぶんとちがうからと迫害する。

なぜなの?





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ルーマニヤパブ/夕日の中の理沙子 麻屋与志夫

2009-03-08 13:07:18 | Weblog
「翔太さん。こんばんは」

ふいに声をかけられてビツクリした。

オレンジ色のベレーをかぶったタウンポリスのおじさん、横松さんだった。

「操高校の女子生徒に会いませんでした」

操は女子高だから、女子とつける必要はないと翔太は気づいた。

なにか頭が霞がかかったようにぼんやりしている。

「あの宝石店の前を通ってきましたが……なにかゾクッとしましたよ」

翔太の聞きたくはない会話になりそうだった。

「四人ずれだったかな」

翔太は横松の話題に引きこまれないようにさらに質問をした。

横松は首をよこにふった。

彼がそのあとに続ける言葉は見当がついていた。

――あの後ずっとこの通りは不景気だものね。

映画館もなくなった。

撤退する店舗が続出してるものね。

これでおかしな事件でもおきたら死活もんだいだから。

パトロールがんばらなきゃ。

もとニーヨーク宝石店の前をパトロールしてきた横松が。

彼女たちに会わなかったということは。

途中で彼女たちは消えたということだ。

お店に入ったのだろう。

翔太が予期したようなヤクザの影はない。

ヤクザのいた残留思念はない。

あまりに個性の強い人間が通過した後には悪意がその場にとどこおる。

それを翔太は敏感に感じられる。

「翔太」

あたりに人影はない。

元宝石店の前にさしかかっていた。

「翔太。わたしよ」

店の前には濃い乳白色の霧がたちこめていた。

その中で人型のものが揺らいでいる。

「姉さんか? 喜代子姉さんか」

「そうよ。ようやくわたしの声がきこえたのね。ずつと呼びかけていたのよ」

「姉さん、ごめん。むりにでもあの日、出勤する姉さんを止めればよかった」

「そんなことは気にしないで。あれは運命だった。

それより翔太、あなたねらわれているわよ」

「おれは姉さんの恨みをはらす。

姉さんたちの死の悲鳴をよろひんで吸いこんだVをゆるさない」

「怨念を晴らそうとすれば、それは自分にももどってくるわ」

「それでもいい。そのためにおれは覚醒した。

そのためにハンターとなれた。姉さんの恨みは晴らしてみせる」

霧が晴れた。ルーマニヤパブの前まで来ていた。

姉と話しながら翔太は歩いていたらしい。




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吸血鬼作家の歯はボロボロ 麻屋与志夫

2009-03-07 21:08:20 | Weblog
3月7日 土曜日
●息子夫婦が帰省している。
「ただいま」という息子の挨拶のことばがすきだ。
家に息子が帰ってきたという実感がしみじみとわく。
すぐに仏壇に線香をあげる。これも泣かせる行為。
長男としての自覚からのその立ち居振る舞いが心地よい。
これで、ふたりでお酒でものめればいうことなし。でも今回はパス。

●10日ぶりでT歯科。
風邪をひいていたので、ブラッシングをすっかり怠けた。
その報いで歯茎が三か所もはれて痛む。
風邪もまだのこっている。
鼻水たらたら。
喉はいらいら。
咳がでる。
しかたなく午後また風邪薬をのむ。
明日は胃の調子がわるくなるだろうな。

●この際だから、ゆっくりとこれからの執筆計画を練っている。
去年はブログで小説を発表することに明け暮れた。
今年は売れなくてもいいから純文学の恋愛ものに初挑戦しょうとおもっている。

●だって、だって歯がぐらぐらした吸血鬼作家なんてさまになりませんよね。

●落ちこぼれのショボクレタ吸血鬼でも描いてみようかな。
二本立てで行こうかな。
などと夢想している。
書くことがありすぎる。
風邪などのんびりとひいてはいられないのだ。

●あたりはすっかり春の兆し。
千手山公園の桜もうっすらと薄紫色に変わってきている。
ことしは例年よりはやく桜がみられそうだ。
そしてあの「恋空」の観覧車。
おおぜいの恋人をのせて回って下さい。
回転しない観覧車なんて、とまったままの回転寿司のながれみたいなものだ。
動いて「なんぼ」というわけだ。

●小説の売れない作家なんて、もっとひどいですよね。
その、レイゾンデテールをうたがわれます。
存在意義そのものがあやぶまれますものね。
がんばらなくちゃ。


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吸血鬼作家も風邪はひくのだ。 麻屋与志夫

2009-03-06 06:02:58 | Weblog
3月6日 金曜日

●風邪をひいた。熱はでなかったのだが。鼻水はでる。咳はでる。難儀だった。そ

れでも塾の授業だけは休まなかった。つらかった。

●ひごろ元気な人間ほど、病気になると気が弱くなるらしい。常日頃の生活習慣が

いいからか、カミサンとの菜食主義がいいからか病気はあまりしない。でも、いま

までに大病を三度ほど患っている。

●だから、風邪の苦しみくらいではへこたれない。二階の書斎に寝ているあいだに

本をよんだ。夕日の中の理沙子も校正した。まちがいってあるものですね。ぼく

が、おれとなっていたり。人物の名前をとりちがえていたり。熱もないのに……汗

顔のいたり。理沙子は明日あたりからまた書き継ぎます。よろしくお願いします。

整合性におかしなところがありましたら、ぜひコメントをおよせください。

●吸血鬼作家は風邪などひいてはいけないのだ。あくまでも不死身。心身ともに強

靭を売り物にしているのに……このテイタラクハなんとしたことか。

●でも休養にはなりました。ちょうど、学期末。塾の方もいよいよ新学期です。新

たな希望をもった新入生もはいってきます。春はやはりいいですね。



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