田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血/夕日の中の理沙子 麻屋与志夫

2009-03-10 19:29:57 | Weblog
体育館の用具室から煙はでていた。

消火器ですでに火は消しとめられていた。

ボヤていどだったのだろう。

無人の部屋からどうして火がでたのかしら? 

集まってきた生徒たちに会話を背に理沙子は歩きだしていた。

黒い帯のようなノロがずうっと校庭のほうまでつづいている。

あのふたりのイメージが理沙子の脳裏に浮かんだ。

(まさか! ソンナ!! ありえない!!!)

あのふたりが、放火するなんて。するわけがない。

進学できないからと絶望的になってはいたが。

あのふたりは、自閉的になってはいたが攻撃性はなかった。

「わたしだって、つい最近まで進学できないとおもっていたんだよ。勉強だけはし

つかりしときなよ。環境がかわるってことだってあるんだから。世の中こんな不景

気はいつまでもつづかないって」

そういって、あのときわかれた。

校庭の隅にこんもりとした森がある。

学校ができるずっと前から。

このへんが那須野が原の南端であったころからの木々を。

そのまま残した一角だ。

黒い帯はその森に理沙子を誘っている。

残された臭いをおいかける犬のように。

理沙子は注意深くすすんだ。

あたりにはだれもいない。

この黒い帯は異様だった。

なにかささくれだっている。

あとからくるものにサインを残している。

あとからくるものの感覚にうったえかけているものがある。

あのこたちだ。そして……Vが一緒だ。

彼女たちは、それをあとからくるものに警告しているのだ。

理沙子は走りだしていた。

Vは興奮している。いがらっぽい大麻ににおいがする。

そして。

ああ。血の臭いだ。けっしてあってはいけない血の臭いだ。

銅のような血の匂いだ。

金っ臭い血の臭いだ。

理沙子はさらにスピードをあげた。

全力疾走した。

森に入る。

そしてみつけた。

ふたりが、首筋から血を流して倒れていた。

血はもう凝固していた。

死の淵にあって、混濁した意識でふたりの残したメッセージ。

吸血鬼にやられた。死者の残した声が理沙子の心にきこえてきた。

吸血鬼にやられた。

理佐子は恋人コウジがVにおそわれたのを目撃して覚醒した。

そのときいらいの激しい怒りがこみ上げてきた。

VVVVVVVV……。

Vにたいする憎悪。激怒。

抹殺してやる。

理沙子に欠けていた最後の闘争本能がめざめた。

敵は消去する。

殺す。

第一級のハンターとしていま理佐子は誕生した。

仇はうつ。かならず、アイツラを倒すからね。

理沙子は涙を流していた。

あいつら人間ではない。

悪魔だ。悪魔なんだ。

アニメの影響もあって、あいつらを甘く見ていた。

あいつらはわたしの敵だ。敵だ。敵はほろぼす。打倒する。

あいつらは乙女の血を吸って……ふたたび若返ろうとしている。

許せない。

携帯が鳴った。

コウジからだった。健康を回復して東京にもどったコウジからだった。

「合格した。おめでとう。理沙子。これで医者の卵だな」

今日が、T大の合格発表の日だということを理沙子はわすれていた。

「理沙子、どうした。なにかあったのか」

理佐子は涙を流していた。





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ああ、快感。



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