田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

文鎮の剣/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-28 07:37:10 | Weblog
文鎮の剣

4

翔子は蝙蝠のあとを追いかけた。
エレベーターで降りた。
先回りはできなかった。
蝙蝠は黒い羽根を広げて滑空していた。
追いつくことはできた。
ああだが! なんとしたことか!!
蝙蝠は昇降口から校庭にでるところだった。
でも、おかしい。
面妖だ。
ここは東京は池袋にある学校だ。
それもJR池袋駅はすぐそこだ。
庭を広大にとることはできない。
前庭なんかあるわけがない。
蝙蝠は低空飛行。
上空にはまだ斜陽が差している。
光を避けているのだ。
すごく距離があるようにみえる。
でも目の前を飛んでいるにちがいない。
まだVRの世界にいるのだ。
翔子はなにか手に提げている。
文鎮だ。
それも二個。
水鳥を模した丸っこいほうを投げた。
ロッテの渡辺俊介投手のようにアンダースロー。
蝙蝠は六階建ての校舎の影をゆうゆうと飛んでいる。
地上すれすれに飛ぶ蝙蝠に、
地上すれすれの位置から、
文鎮の水鳥を投げた。
ゲギョっと不気味な鳴き声がした。
昇降口にほとんど隣接して校門がある。
そこに碧眼金髪の東欧の美女がうずくまっている。
無意識につかんできたもうひとつの文鎮、
条幅用の30センチもある――を構えて近寄る。
青い目が赤くかわる。
「ひっかかったね。あんなもので、わたしが傷つくとオモツタカ」
跳ね起きるとおそってきた。
「そんなこと想定内」
「ソウテイナイ。わかんない。わることば使ってよ」
「これでどう」
翔子は文鎮を剣として、彼女の胸につきだした。



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