田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

拡張現実/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-29 01:03:12 | Weblog
拡張現実

5

翌日、翔子は担任の黒田博美先生に職員室に呼びだされた。
「なんてことしたの。こればどういうこと」
パソコンのモニターには演武が映っていた。
翔子の右手から30センチのもあるアイアンの武器が出現する。
それが突きだされた。
静止画面。
翔子の伸びきった腕と両足の緊迫した静止には、
緊張感がはりつめている。
美しい。
よくできた彫刻のようだ。
静止が解かれて動く! 
動く!!
跳ねる!!!
回転する、翔子。
二回転。
脚がのびて回し蹴り。

あの時の映像だ。
そうか、校門のてまえだった。
それで……街をいくひとに目撃され携帯の動画で撮られた。
それをyou tubeの動画サイトに投稿されたのだ。
「わかるでしょう。
これがどんな重大な影響をわが校の評価におよぼすか」
「もうしわけありません」
「謝罪してすむことではないのよ。
操作しだいでは、Augmented Reality、AR――拡張現実となるのよ。
なんでこんな路上パフォーマンスを、
それも校門の前でしたのよ。
わが校のサイトをひらくとこれからは、
このあなたのパフォマンスがいつでもでてしまうのよ」

翔子はまったく別のことをかんがえていた。
現実の博美先生の声がとおのいていた。
(吸血鬼が鏡に映らないというのはほんとうだった。吸血鬼の鏡像はないという伝説はほんとうだったのね。ちかごろのアニメや日本製の吸血鬼小説に毒されて、デーウオーカー。太陽のもとでも歩きまわれる。鏡にも映る、なんて信じていた。ひょっとするとあれは鬼、日本の吸血鬼のことなのかもしれない。東欧の正統派の吸血鬼は伝説のまま進化はしていない。そうだわ。それに違いない。マチガイナイ)

「翔子さんきいているの?
退学処分になるかもしれないのよ。
もっと真剣にききなさい」

気がつけば博美先生は職員室で、
ほかの先生の視線をあびているのに、
ヒスをおこしていた。

(ホンバモンの吸血鬼は太陽の光には弱い。鏡には映らない。そのほか……なにか弱点はあったかしら……)

「村上翔子さん」

博美先生が大声をあげた。

「村上翔子。このコなの、問題の生徒は?」

校長先生が翔子の顔を覗き込んでいた。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
プチしていただければ作者の励みになります。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 文鎮の剣/さすらいの塾講師 ... | トップ | 校長がみかただぁ!!/さすらい... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事