田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

裏鹿沼(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-20 07:50:11 | Weblog
3

妻が万引きヨバワリされた。
滑ってころんだりした。
図書館の前をよこぎってVIVAホームセンターにむかっていた。
商工会議所のわきの舗道のきれたところにあった泥濘。
智子が目に見えない悪意の手で足をすくわれたように倒れた。
なんの注意もはらっていなかった。
でも――とっさに翔太郎の手がのびた。
倒れていく妻の肩口をつかんだ。
ぴりっとセェタが切れた。
智子は地面に転んだ。
翔太郎の手からセェタの肩口まで毛糸がつながっていた。
でもそのために地面に倒れた衝撃はやわらげられた。
重苦しい沈黙。
なにか理不尽なモノが襲いかかって来たような恐怖。
智子はお気に入りのセェタが台無しになったことを嘆いた。

翔太郎はそれどころではなかった。
なにか不吉なことがやってくる。
omen。
前兆。
だ。

テレビには美智子が映っていた。
受賞パーテイの録画だった。
翔太郎はテレビを見るのは妻にまかせて、里恵に電話をかけた。
話が長くなりそうなので携帯はよした。
塾の教室の壁掛け電話からかけた。
ドアをしめるとテレビの音声はとだえて聞こえなくなった。
携帯では、どこが送話口がわからない。
話していても違和感がある。
翔太郎は携帯がきらいだ。
電話をフックにもどした。
グッショリ手に汗をかいていた。
受話器を握っていた掌に赤い痣ができている。
それほどきつく握った覚えはない。
汗は脇の下からもふきだしていた。
背筋がみように冷えびえとしている。
これは!! 恐怖からでた。
冷や汗だ!!
なんてドジだ。
のんびりとテレビを見ているときではない。
ひさしくこうした感覚におそわれなかった。
どっぷりと平穏無事な日常のなかにひたっていた。

あれはほんとうに40年前に、わたしの身に起こったことなのだろうか?
じぶんは超感覚のあることを忘れていた。



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