田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鬼沢組(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-28 06:24:57 | Weblog
3

ケンはのんびりとつぶやきながらキーをあけた。
「注意していけ」橋本は天野に声をかける。
隼人がいた。
隼人はまだ部屋にいた。
隼人は動かない。
「パソコンをもっていけ」
「情報をコピーすれば」
天野が橋本をみておどろいていう。
こんなガキに指図されたくない。
橋本はおもしろくない。
そんなのおれには関係ない。
勝手にやれ。
天野は直人のパソコンを開く。
「パスワードは?  教えてくれますよね。」
「さあ、わすれたな。いやきいていないのかもしれないな」
隼人が素人っぽく無邪気にバックれる。
「いいのかな、痛い目みますよ」
橋本はふたりのやりとりをニヤニヤしながら聞いている。
隼人が動いた。
パソコンのキーを打ちこむのに集中していた天野の頭を上からたたいた。
軽くたたいた。
だが天野はスチールの机に顔をたたきつけられた。
鮮血がパソコンにとびちった。
机で鼻をつぶした。
「隼人、キサマ」
橋本はなぐりかかった。
橋本のストレートを隼人はかわした。
左に体をひねる。はずみをつけ強烈な右回し蹴りを隼ははなった。
橋本の顔面を右の足がむなしくかすめた。
その右足を軸として、左足の蹴り。
これはかすかに橋本の脇腹をかすめた。
それだけで、橋本の背広がさけた。
「榊流空手。そのていどのものか」
「調べがついていますね」
「バカか。パソコンごとつぶすぞ」
 橋本がドスを隼人につきつける。
「橋本さん、むちゃしないでください。
パスワードを聞きだすのがさきです。
ここにはかなりの情報がはいっています。
それをコピーしないことには。
隼人のタマとるより、情報をとりましょうよ」
「シャレてる場合か。その面なんとかしろ」
血だらけの顔で天野はパソコンを叩いている。
橋本が天野に視線をむけた。
隙が生じた。
隼人も胸のホルスターから拳銃を抜く。
天野の足を撃った。
回転いすの軸が火花を散らした。
はずみで天野が顔をのけぞらして床に転倒した。
隼人はすばやくパソコンをかかえこむ。
隼人は橋本を拳銃で牽制しながらドアにむかった。
ケンの顔面に拳銃の台尻をたたきこむ。廊下に走り出た。
廊下の角のエレベーターがとまった。
しめた。
だれか、マンションの住人が昇ってきた。
ドアがひらいた。
兇暴さを全身にただよわせている。
橋本の仲間だ。
後ろからは橋本がドスをキラメカセて追ってくる。
左側は壁。
右にはドアが並んでいる。
そのひとつが内側からひらいた。
「隼人。はやく」
隼人は素早く男の声にしたがった。
「黒髪秀行です」
「ほんとだ、直人のそっくりさんだ」
寝起きみたいな髪の男がいった。
「キリコの弟の霧太です」
「なんだ。同じビルの同じ階にいたのですか」と隼人。
 橋本たちがドアを叩いている。
「ポリスを呼んだ。ほうっておけ」
 


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