田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

報復はわたしたちの使命/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-11-26 03:20:16 | Weblog
6

遅かった。駆けつけるのが遅かった。
 
点呼をとっていると百子の携帯がなった。
メールだった。
「さようなら。いっぱい、いっぱいの友情ありがとう……」
そこで途切れていた。
もっとなにか言いたかったのだろうが。

遅かった。青山墓地まで駆けつけた。
黒のめだたない服。
クノイチ装束が、なにかのジョークのように墓石にしがみついていた。
墓石にしがみつかなければ立っていられない。
墓石に顎をのせ、左手で墓石をだいていた。
そして、みぎてでメールをうった。
さようなら。いっぱい、いっぱいの友情ありがとう。
「小太郎!! 」
百子がつぶやくように、ささやきかけ頬をよせる。

それは百子の涙。
あるいは小太郎がながした涙かもしれなかった。
まだ頬にはぬくもりがあった。

母の胎内にいるうちに、男の子であることを期待されて名付けられた。
小太郎。そう呼ばれるのを恥じていた。
恥ずかしいよ「コタ」と呼んで。
さわやかな、あどけない童女のような笑い声が百子のこころにひびいてくる。

大地に横たえる。
骨と皮ばかり。
あとは溶かされ、飲みこまれてしまった。
クノイチのフイギァを、衣裳だけをそこに横にしたみたい。
目だたない古布、ぼろ布のようにも見える。

「コタ。コタ。コタ。あなたのことは、わたしたちが覚えている。死ぬまでわすれない。死んでも、次の世代に語り継ぐ。伊賀の小太郎。クノイチの小太郎。コタ」

百子がすっくとたちあがった。
クノイチ48、いや100人もの仲間が黙とうから顔を上げた。

「みんなリベンジだよ。やられれば、やりかえす。弱腰はだめ。敵に攻め込まれれば、攻めかえす。殺されれば、殺す。なめられたら、お終いだからね。仲間の仇は、生きている者が果たす」

異能部隊も到着した。
百子の檄をきいてた父。
百子の肩をだいた。
「敵は鬼だ。もしものときのために言っておく。悲しんでいるのに悪い。甲賀のタカはお前の父親ちがいの姉さんだった。甲賀の飯降家でかあさんが生んだお前の姉さんだ。勘七さんが夭逝した」
それで父と再婚した。
だからわたしのこと、知っていたのだ。
わたしが、百々百子だとしっていたのだ。
「ますますファイトがわいてきた。ふたりのクノイチのために、みんなの命ははあずかったよ」
「オス」

鬨の声をあげた。

タカの働きで知った地下への入り口。
マンホール。
墓石の影の落ち葉の下の階段。
墓石の土台石をずらしたところ。

クノイチ・ガールズが突入する。

「別働隊が原宿のテントあとからすでに侵入しているからな」

と異能部隊長の顔にもどった父。

百子はにっこりとほほ笑む。

敬礼をかえす。


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