田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

最終章/一億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-28 07:29:41 | Weblog
最終章

1

等々力渓谷のロケ。
ここが都内かとおもうほど森閑としていた。
渓谷の流れに沿ってふたりは、散策していた。
ふいに美智子がいった。
樹間から漏れる都会の陽光のもとで山藤が数房咲いていた。
木漏れ日をうけて。
紫色の光の雫となっている。
藤の花はまさにいまが盛り。
それで思い出したのだろう。

「霧降りもフジの花がきれいに咲いているわ。
いってみたいな。
なつかしいわ。
3年も霧降りの山藤の花をみてないなんて信じられない」
「あのときも、
藤の花を見に来ましょうって誘ってくれましたよ」
「直人が生き返ったと思った。おどろいたわ。ただもう夢中だった」

「まだ直人の夢をみますか」
「まえほどではないけど」
「死ぬには若過ぎましたから」

美智子がさびしそうな横顔をみせて撮影現場のほうに去っていった

『ああ、わたしたちの命が永遠につづくといいのに。あなた、あなたはどうしてわたしをのこして死んでしまったの。わたしをつれていってくれればよかったのに。わたしだけをのこして死ぬなんてどういうこと。わたしもあのとき死んでいればよかった。わたし、さびしい。さびしい』 

美智子がセリフの練習をしていた。
隼人に聞かせたいのかもしれない。
隼人には美智子のさびしさがいたいほど伝わってきた。


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