田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

「マヤ塾」炎上(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-29 21:05:37 | Weblog
3

智子が倒れていた。
動かない。

隼人は頸動脈にふれる。
鬼に襲われ瀕死の状態でここに逃げこんだのだろう。
出血はない。
だが顔面蒼白。
かなりのダメージを受けている。
CDをもっていた。
眼をあける。焦点がさだかではない。
必死の形相で隼人にCDとメモリーをさしだす。

「これをうちの人に……翔ちゃんにわたして」

仲のいい夫婦だったのだろう。
若いときから夫を「翔ちゃん」と呼んでいたのだろう。

これがその最後の呼びかけになるかもしれない。

隼人はしっかりと智子のさしだしたCDとメモリーを受け取った。

消防士がきた。
まだ鬼にとりこまれていない。
隼人たちをののしらない。
制服警官がいるので態度が違う。
阿久津と智子の搬送は救急隊員に任せた。

里佳子がかけつけた。
ひと眼で状況をさとる。

「お母さん」

静かすぎる呼びかけ。
だからこそ、悲しみがこめられている。
本当の、深い悲しみはあとからやってくる。

隼人はキリコのところにもどる。
さらに火勢が強くなった。
鬼とキリコは塾の裏庭で戦っていた。
鬼は後生大事にパソコンを抱えていた。
智子が懸命に守っていたCDは隼人が受けとっとている。
PCのメモリーもすべて無事だろう。
「奥さんはたぶん助からない」
キリコはそれを聞くと裂帛の気合とともに鬼の胴に黒髪を巻きつけた。
隼人は身動きできない鬼に銃弾を撃ち込んだ。
遠慮することはない。
相手は敵だ。
敵は悪魔だ。
日本では、鬼といわれる。
悪魔、ゴーレム。
いろいろな呼び名がある。
吸血鬼とも呼ばれている。
いずれにしても、人の血を吸う、魔の者だ。
破壊されたパソコンだけを残して鬼は消えた。
「やったのか」
「たぶん、逃げただけ。あいつらしぶといから」


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