田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

『安堂ロイド』最終回。ありがとう。感動しました。 麻屋与志夫

2013-12-16 09:00:24 | ブログ
12月16日 月曜日

●『安堂ロイド』最終回。
よかった。
涙した。
カミサンを誘ってみた。
もしカミサンがつまらなかった。
と。
評価したら、悲しくなるなぁ。
と心配だった。
ともかく、一日に平均2本くらい洋画を観ている。
どこにもいない。
と広い家の中を探しまわるとテレビをみている。
絶対的な洋画ファンだ。

●「あなたの小説、ツマラナイワヨ。どうしてハリウッド映画みたいに、息もつかせない展開にならないのよ」とのたまうカミサンだ。
完全な洋画ファンだ。

●『寅さんシリーズ』を宇都宮の二荒神社の前にあったミヤマス座で見ようとした。恋人同士の、昔々のことだ。彼女はもちろん嫌がった。「日本映画をみるなら、帰る」とはさすがにいわなかった。むりに映画館に引き入れたような雰囲気だった。だって、周囲の人かジ-ッとわたしたちを見ていた。完全無欠のあの頃から洋画ファンだった。

●先日も『SPEC』を観ようとしたら「アナタヒトリデミタラ」と言われてしまつた。ああ、昔と変わった。完璧に拒否された。拒絶の言葉を口に出せるようになった。二人で過ごしてきた幾星霜の時の流れを実感しました。いやぁ、参った。まいった。マイッタ。

●その完全無欠絶対的洋画フアンのカミサンも「感動したわ」と言ってくれた。木村、柴咲、大島、本田の演技もよかったわ。と言ってくれた。

●人気がなかったらしい。不評だと聞いている。古い世代の人たちは、IT用語にあまり馴染みがないので、セリフが難しすぎたのかもしれない。そんなことはない。セリフがわたし的にはすばらしかった。生のリアルな会話よりも、IT用語が頻発される愛の語らい。すごくたのしかった。

●こんどは、カミサンを再度誘って『SPEC』をミニイコーウ。

●『安堂ロイド』と『SPEC』は発想の基盤は同じような気がする。そこで。わたしも、同じテーマを二つの超短編の書きわけたことがあった。作品を再録します。お楽しみください。


超短編 35 異次元の愛  2013-05-12 06:41:24 | 超短編小説

●愛してくれていることは、わかっていたのよ。
でも、わたしには父のきめた婚約者がいたの。
そのひとのことは、すきでも、きらいでもなかった。
しいていえば、すこしだけすきだったのかな。
わざわざ、愛を拒むほどいやだ、ということはなかったの。
父の期待をうらぎってまで――。
ほかのひとをすきになるだけのエネルギーがあのころのわたしにはなかったのよ。
あなたが、わたしに関心をもっていてくれたことは、かんじていた。
だって、あんな熱っぽい視線で受講中に、みつめられれば、わかるわよ。
父は、わたしに青山の医院をついでもらいたかった。
医学部に落ちたわたし。
もう、教え子のなかのKに婿にきてもらうほか。
つまりわたしがかれと結婚するいがいに。
医院をけいぞくしていく方法はのこされていなかつたの。
あなたの、あの熱い視線にこたえられなくて、ゴメンナサイ。

●わたしは、待合室のむこうがわにいる中年の女性をみつめていた。
喉のあたりに赤いマーキングも顕な患者。
喉頭がんの末期らしい。
声もでない。
顔色も土気色。
あのマーキングの箇所に放射線をあててもらうのだ。
部屋の長椅子にすわったひとたちは。
そのおちこんだようすからみて。
末期患者がほとんどだった。
最後のほのかな希望の明かりをもとめてここにきている。
彼女なのだろうか。
名字もかわっていない。
もちろん名前も。
ほぼまちがいないとおもうのだが。
その初恋のひとが時空をこえて、いまわたしのまえにいるというのに――。
わたしはいまになっても、声をかけられないでいる。
もっとも話しかけても、彼女には声は出せないのだろう。
ふるびて、黄ばんだかき損じの原稿用紙をもみくしやにするみたいな声しかでないだろう。
その声をわたしは、放射線科の初診の時に聞いた。
たまたま、ケアルームでとなりのベッドに彼女がよこたわっていた。
こんな病気になって、父のいた大学病院で宣告されるのはいやだったの。
治療をうけるのは、いやだったの。
ききとれないような乾いた声で、彼女が看護師にいっていた……。
そして、それからなんどもこうして、地下の放射線科の治療室の廊下で彼女とあうことになった。
わたしは、彼女をいまもじっと、みつめているだけだ。
万感の愛をこめて。
いまでもすきだ。
あれから、ずっと麗子さん。
あなたのことを、想わない日はなかった。

●わかっていたわ。
わたしたちに声はひつようない。
わたしも、あなたが、次元のちがう、世界でいきだしたことをしっていた。
あなたが、小説家としていきていることをしっていた。
でもあなたのほんはよまなかった。
よめなかった。
もし、わたしえの恨みごとでもかいてあったら、どうしょう。
それがこわかった。
あなたの愛をうけいれるべきだった。
ゴメンナサイ。
いまさらあやまっても、もうおそいかもしれないけど。
これからはいつもあなたの傍にいてあげる。

●やっぱり、麗子さんなのだ。
目の光はむかしのままだ。
黒い瞳がじっと、わたしをみている。

●愛していたのよ。
きつと。
ことばにして、自覚できていなかっただけよ。
昭和の古い女だから、それを口にだせなかったのよ。
 

●ありがとう。これからはずっと一緒だ。
 

●わたしたちは愛の絆でむすばれていたのね。
最後にこうしてあえてよかった。
もう、死ぬことなんかこわくはない。
でも、あなたはいきつづけて。
死ぬのははやすぎるわ。
いい小説かいてね。
わたしのわずかだけど余命をあなたに捧げるわ。
わたしのぶんまでながく生きてくださいな。

●一瞬にして理解しあった愛でも――。
生涯を共にした愛でも――。
愛にはかわりない。
むしろ、瞬間的に感じた愛の方が濃厚で、ふかいのかもしれない。

 
●最後にあなたに会えてうれしかったわ。
 

●麗子はよろよろ放射線照射室にきえていった。


超短編33 トイ・プードルとコギ―の幸せ 2013-03-29 10:01:57 | 超短編小説

ペットショップのショーケース。
二匹の子犬が隣りどうしのケースのなかにいた。
トイ・プードルのメスとコ―ギのオスだ。
ショーケースだから正面はもちろんガラス張り。
お客さんがよくみることができるように全面は大きな一枚のガラス。
曇りひとつなく照明をあびて光っている。
中仕切も清潔な透明なガラス。
隣同士の子犬たちがたがいにジャレあっている。
仕切は子犬が前足をかけられるくらいの高さだ。

「きみなんて名前」
コギーが隣のトイ・プードルに声をかけた。
「あなた、そんなこともしらないの。わたしたちには名前はないの。飼い主がつけてくれるのよ」
おねえさんぶっている。
真っ白い毛並みに赤いリボンがよく似合う子犬だ。
ちょこちょことあるくしぐさが、とてもかわいい。

「飼われるまでは名前がないのよ」
「そうだね。ぼくだって名前がないもの」
「でも……ほんとは、あるのよ。わたしはじぶんのことパピヨンと呼んでいるの。自由に青空をとびたいワ」
「パピヨンちゃんのあたまに蝶が止まっているようで、かわいいね」
「ありがとう。ほめられて、ウレシイワ」
「ほんとはね、ぼくも名前あるんだ。翔太っていうんだよ。飼い主がね、きゅうにフランスに留学することになって、またここにもどってきちまったのさ。たった60日の縁だったけど――」
「わたしたちながくはここにいられないのね。さびしいわ」

そして、その翌朝。
「翔太。翔太」
という呼びかけに目覚める。
パピヨンが可愛い女の子にだかれていた。

「さようなら。翔太。また会いたい。会いたいわ」

翔太はねぼけまなこでパピヨンをみおくった。
あまりにも、きゅうな別れなので、一声も鳴くことができなかった。
悲しむこともできなかった。
ただぼうぜんと、冷たいガラスに顔をおしつけていた。

それから無情にも歳月が流れた。
「翔太。翔太。翔太でしょう」
なつかしいパピヨンの鳴き声がする。
「ぼくをよんでいるのは、パピヨンなの」
「あなたまだじぶんのことを、ボクなんていうのね」
つとめて明るい声で隣から呼びかけているのはまちがいなくパピヨンだ。

赤さびのういた鉄の格子のある不潔なペットケージ。
保健所の殺処分待ちのケージのなかでパピヨンと翔太は再会した。
二匹には、過ぎこしかたの想いを話し合う時間はのこされていなかった。
こうした状況で会うということは、お互いにあまり幸せではなかったのだろう。

「死ぬまでにもういちど会いたかったよ。あのとき、さよならもいえなかったもの。ぼくねぼけていてさ」
パピヨンがなつかしそうに笑った。
「わたし、あのときの翔太のねぼけ顔いまでもおぼえているよ」
翔太が深いため息をついた。

保健婦が二匹の犬をそれぞれのケージからひきだした。
「仲良さそうだから、いっしょに逝かせてあげましょう」
翔太とパピヨンは臨終の床にならべられた。
「パピヨン。最後にこうして会えてうれしいよ」
「わたしもよ。翔太。うれしいわ」
こうして二匹はじめておたがいのカラダのヌクモリを感じた。
鼻をつきあわせた。
ペロペロなめあう。

「まるで恋人同士のようね」
保健婦がいう。
二匹ははじめて、そして最後のlastキスをしていたのだ。

保健婦の手には注射針が光っていた。













 角川ブックウォーカー惑惑星文庫で検索してください。
 はじめの4ページくらいは立ち読みコーナーがあって気軽に読めますよ。
 ブログとは違ったGGの小説の文章を読んでみてください。
 
 
 

 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。


にほんブログ村 ライフスタイルブログ スローライフへにほんブログ村

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする