ねこ庭の独り言

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『なぜ外務省はダメになったか 』 ( 大勇の村田次官 )

2017-10-17 22:28:34 | 徒然の記

 村田良平氏著『なぜ外務省はダメになったか』( 平成14年刊 扶桑社 ) を、読了しました。

 縦割り行政が日本をダメにしている、省益あって国益なしなど、官僚社会をあらわす言葉として何度も耳にしてきました。日本国内での話だとばかり思っていましたが、国外においても同様になっているとは、予想もしていませんでした。

 知らないことというより、知りたかったことを数多く教えてくれた、有意義な本でした。

 昭和4年生まれの氏は、今年88才です。京都大学を卒業後に外務省へ入り、外務省のトップである次官となり、駐米大使、駐独大使を務めた人物です。元同僚だった岡崎久彦氏が、推薦文を巻頭に寄せていますので、まずそれを紹介します。

 「村田大使の新著出版は、近来にない快挙である。」

 「およそ役人が四囲に気兼ねしながら書いた文章ほど、つまらないものはない。」

 「私は氏との長いつき合いで、世情の毀誉をおもんばかって筆を曲げることをしない、信念と見識のある人と知っていた。」

 「氏は最近の産経新聞で、外務省の後輩を実名で批判した。」

 「それを聞いた外務省の、現役・OBの間に衝撃が走った。」

 「国家のために必要な時は、西園寺の言う大勇が必要なのであろう。外務省改革問題の嵐の中の現在、私は村田次官の大勇を評価する。」

  この本が出版される直接のきっかけとなったのは、当時の世間を騒がせた二つの事件です。

  1. 外務省役人による、官房機密費流用事件 ( 平成13年発覚 )

  2. 瀋陽総領事館における脱北者への、不当な対応事件  ( 平成14年 )

 記憶を辿ってみますと、連日テレビや新聞で騒がれ、外務省が大いに叩かれていた事件だったと思い出します。本題に入る前に、事件の概要を紹介しておきます。

 〈 1. 外務省役人による、官房機密費流用事件 ( 平成13年発覚 )  〉

 首相外遊を担当する外務省の「要人外国訪問支援室長」 である松尾克俊が、過去7年に渡り、約10億円に上る官房機密費を私的に流用していた事件です。
 
 受領した10億円のうち、7億円を競走馬 ( 14頭 ) の購入や、ゴルフ会員権、高級マンションの購入に充て、さらには愛人へ供与するなどし逮捕されました。
 
 時の小泉首相により、斎藤国際事業団総裁、林駐英大使、柳井駐米大使、川島事務次官、飯村官房長が更迭されるという金銭まみれの大事件でした。
 
 〈 2. 瀋陽総領事館における脱北者への、不当な対応事件  ( 平成14年 )  〉

 金高哲一家など5人の亡命者が、日本国総領事館に駆け込んだところを、中国の武装警察官に取り押さえられました。

 総領事館の敷地内に、無断で警官が足を踏み入れていたにもかかわらず、応対に出た宮下副領事が亡命者の取り押さえや敷地立ち入りへ抗議を行わず、警官の帽子を拾うなど友好的な態度をとりました。

 逮捕された亡命者が、北朝鮮へ送還される可能性があったのに、何も対応しなかった様子が、支援団体NGOによりビデオカメラで撮影されており、これが国内のテレビで報道され、日本と韓国で大きな批判が起きました。

 阿南駐中特命全権大使が事件発生直前に、「亡命者が大使館に入ってきた場合は、追い返すよう」にと、指示を出していたことも明らかになり、さらに問題が大きくなりました。

  この二つの事件について、村田氏はなんと語っているか。著作から紹介します。
 
 〈 1. 外務省役人による、官房機密費流用事件について 〉
 
  ・この一年余の期間に外務省をめぐる問題で、国民の知るところとなったものは、余りにもひどい。
 
  ・元外務省員としての、私の誇りは深く傷つけられた。
 
  ・公務員倫理の問題は日本に限ったことではないが、道義の頽廃は、日本全体に及んでいる現象であると考える。
 
  ・その原因の根幹は、敗戦後、物質欲のみに動かされ、良心を失った国民が増えたこと。
 
  ・学校教育や家庭のしつけにおいて、私心を抑えて公共を重んじる。恥を知るという、当然のことを教わらなかった国民が増えたことであろう。
 
 外務省の役人の不祥事を、国民全体に広げてしまう論調に、官僚特有の言い訳を感じましたが、次の言葉には同意しました。
 
   ・私は、国を愛するということにまったく触れていない、教育基本法は最悪の欠陥法であり、一日も早く改正されるべしと考えている。
 
  ・また文部省が推進しようとしている、ゆとり教育なるものは、日本の子供たちの学力低下と、道徳教育の一層の頽廃をもたらす亡国の政策だと考えている。
 
  ・しかし、これらのことがあるからといって、過去数年間に行われた外務省の醜態は、いささかも弁護できるものではない。
 
  同じ官僚のトップにいた次官ですが、どうやら氏は元文部科学省の前川氏とは、比較にならない人物のようです。前川氏の座右の銘は「面従腹背」だそうですが、外務省の村田氏は愛国心を語ります。
 
 ただそんな氏をトップに持っていた外務省も、なぜか現在は愛国心が見えず、害務省と揶揄されています。
 
 本日は二つの事件のうちの一つしか、紹介することができませんでした。残念ですが、続きは次回にいたします。長くなりますと、訪問される方がいなくなり、まずもって、息子や孫たちが読んでくれません。( ただし、孫娘二人は、現在3才 )
 
 選挙のことも気になりますが、外務省の内情や課題も、今後のためには必要な知識です。自分の気持も引き締めて、明日に備えます。お休みなさい。
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