ねこ庭の独り言

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『自らの身は顧みず』 - 4 ( 背広組と自衛官 )

2017-10-03 15:52:40 | 徒然の記

 「 国の安全保障、防衛省の組織に関する意見は正論であり、いずれ見直される時が来る。」

  これが、三つ目の読後感です。私が注目したのは、防衛省の組織に関する氏の意見です。普段なら、窺い知れない内部事情です。
 
 「わが国の文民統制の実態は、自由主義国家のそれより、」「北朝鮮や中国のシステムに近いのである。」「自由主義の国で、自衛隊ほど、文民統制の徹底している軍はないと言っていい。」「防衛省には、軍人の集団である自衛隊と、」「背広組による内局があるが、」「普段は内局が自衛隊を監視している。」
 
 「このため内局と、陸海空の各幕僚監部は、対立的な関係に置かれている。」「内局は各自衛隊に、大きな影響力を行使できるが、」「各幕僚監部は、内局に影響力を行使することはできない。」「この差別的状況が、自衛官にとっては、極めて居心地が悪いのだ。」「みな大人なので、口に出して言うことはないが、」「制服自衛官のほとんどが、恨めしく思っていることは間違いない。」
 
 「各幕僚監部と自衛隊の各部隊は、強い信頼関係で結ばれている。」「しかし同様な信頼関係が、」「内局と各幕僚監部には存在しない。」「自衛隊や自衛官が困っている時、」「内局に助けてもらったという経験を、持たないからである。」「何かあると、内局は自衛隊を叩き、自分たちのステータスを維持することに躍起になっているように見える。」
 
 「多くの自衛官がそう思っているところに、防衛省の問題がある。」「信頼関係がないから、情報の共有化ができず、」「内局に知られると損をするから、」「報告義務のあること以外は報告しないということになる。」「このような状況を、私はまずいと思い、」「子や孫の世代に残すべきではないと思っている。」
 
  氏の言葉を引用しているのには、訳があります。去る8月31日、「2・26事件」について書いたブログで、私は次のように述べました。
 
 「防衛省の中で、制服組と呼ばれているのが自衛官です。防衛大学出身者は、自衛官に任官した時から制服組となります。」「それ以外の事務次官、参事官、内部局員、事務官、技官が、俗に背広組と呼ばれています。」
 
 「現行憲法のもとでは、シビリアンコントロールのため、」「背広組の事務官が、組織的には制服組の上に位置しています。」
 
 「デスクワークの官僚が、現場で命をかける自衛官の上に立ち、」「それでうまくいくのだろうかと、思っていましたが、」「やはり庶民の常識は、間違っていませんでした。」
 
 予想が正しかったと自慢したいのでなく、事実を知れば、誰でも気のつく不合理な話だと言いたかったのです。田母神氏の本音を読めば、いびつな組織だということが、理解されるます。平成27年に自衛隊法が改正され、不合理がかなり是正されていますが、まだ不十分です。(  平成27年6月に、改正防衛省設置法が成立し、〈背広組優位〉の規定が撤廃されてい他ことを、ネットの検索で今日初めて知りました。)
 
 自衛隊が国防の任務を遂行できるように、省内の見直しが本格的に行われるのは、「憲法改正」以後ではないでしょうか。本が出版されたのが平成20年ですから、氏の意見は自衛隊法が改正される以前の話です。
 
 一連の流れをたどりますと、やはり氏は、来栖参謀総長と同様に、正論を述べる自衛官です。国を守る軍人が、自衛隊員と呼ばれるようになり、誇りを傷つけられたまま、戦後72年が経過しました。氏が、自衛隊員の気持ちを代弁していると思えば、無視できないものがあります。
 
 「自らの身は顧みず」という表題が少し大げさで、「乱暴な意見を言う氏は、やはり危険だ。」と、・・そう思う人は、危険を除去する方策を考えればいいのです。日本のため、憎まれ役を買っている氏を知れば、評価すべき意見です。
 
 氏の本を取り上げて以来、ブログを訪問する人が減りましたが、致し方ありません。個人として氏がどういう人物かということより、自衛隊の問題点が何かを知る本だと、そんな切り分けが必要です。気に入らない人物の意見は、何を聞かされようと気に入らない・・と、それではいけません。
 
 しかし私には、そういう偏見を責める資格がありません。何故なら私は、反日左翼の意見を頭から否定し、聞く耳を持たない、同じ偏見の持ち主だからです。
コメント (4)
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