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古い本 その96 古典的恐竜7 1877年(つづき)

2022年05月05日 | 化石

 Cope, E. D., 1877. On a Gigantic Saurian from the Dakota epoch of Colorado について前回の続きを書いていく。
 Camarasaurusが書かれているのは、No. 25 (1877) で、この中には次の項目が含まれている。一つ一つを独立した論文とみなすのが主流のようだ。
⚪︎ Verbal communication on a New Locality of the Green River Shales containing Fishes, Insects and Plants in a good state of preservation. p. 1. (良い保存状態の魚類・昆虫類・植物を含むGreen River 頁岩の新産地に関する会話での連絡)
⚪︎ On a New Species of Adocidae from the Tertiary of Georgia. pp. 2-4. (Geogia州の第三系からのアドクス科<亀類>の新種について)
⚪︎ On a Gigantic Saurian from the Dakota epoch of Colorado. pp. 5-10.  (ColoradoのDakota時代からの巨大な爬虫類)
 「Dakota epoch」というのがよく分からない。地質年代の細分でEpochというのは使われるが、現代のリストではDakota epoch は見当たらない。Epochではなくて小文字なのも意味があるのか? Cororado州なのにDakotaという地名はいくつかあって、デンバーの西の山に幾つか見られる。そこの地層にある「Dakota Group」の年代ということだろう。産地はデンバーの南西のCanyon Cityから遠くないところ、となっている。なお、Dakotaの名前は、ちょっと北にある南北ダコタ州のともに、先住民族の名前に由来している。
 7ページにCamarasaurus supremusという見出しがあって、その上にこれまでに知られていない種類であると書いてあるから、新属新種の提示である。図版はない。この論文の発行日付は1877.8.23であることを記しておく。あとで関係してくるから。

335 Cope, 1877. p. 7.

 Copeは、この論文を書いたすぐあとに、Camarasaurusに関する別の論文を投稿した。今度は私的な発行物ではなく学会誌である。
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1878. On the Vertebrata of the Dakota Epoch of Colorado. Proceedings of the American Philosophical Society. Vol. 17: 233-247, Plates 1-9. (Colorado 州のDakota時代の脊椎動物について)
 この論文は、1877.12.21の学会講演の記録の形で出ている。印刷物の発行は1878.1.12となっている。今度はスケッチが14枚ついていて、9ページの図版にまとめられている。スケッチは線画であるがあまり出来は良くない。ここではPlates 1,5を紹介する。

336 Cope, 1878. Plate 1. Camarasaurus supremus 頸椎と胴椎 胴椎の横幅約100cm

337 Cope, 1878. Plate 5. Camarasaurus supremus 肩甲骨 最大長約150cm

 この講演記録の形の論文は247ページまでのものだが、すぐ後の277ページから数ページを使って、1877.12.21の学会の記録が記してある。18人の出席で、副会長のMr. Fraley が座長を務めたとある。279ページの下端に「Cope教授がLamarasaurusなどの実物大の脊椎骨・大腿骨などの巨大な化石爬虫類のスケッチを示した。」とし、その記載がこの本にあるともしている。LamarasaurusはもちろんCamarasaurusの誤植だろう。つまり、Copeの研究内容は、口頭で1877年末の学会で発表されていた。
 Cope, 1878論文の237ページにちょっと面白い記述がある。抄訳すると「私がCamarasaurusを記載する直前に、Dr. Marshは100マイルほど北のDakota層から爬虫類の仙骨の記載を公表した。Prof. Marshはそれに Titanosaurus montanus という名を与えた。しかし、この名前は属の特徴や種の形態に関する記述を伴っておらず、命名のルールに適合しない。」という。なるほど、仲が悪かったんだ。MarshのTitanosaurus新種記載論文というのは次の論文。
⚪︎ Marsh, Othniel Chaeles 1877. Notice of a new and gigantic dinosaur. American Journal of Science and Arts, ser. 3, Vol. 14, Art. 13,: 87-88. (新種の巨大な恐竜に関するノート)投稿日付 1877.6.20 
 簡単な記述で、図版はない。Copeは「仙椎をもとにして」としているが、他に後肢の骨があったと記してある。投稿日付が6月下旬とすると、発行は早くて7月上旬だろうか。Copeはそれを読んでから8月23日付の自分の発行する「ジャーナル」を(多分急いで)発行したわけだ。命名規約上の問題は何もない。
 以上の調べから次のデータが正しそう。
Camarasaurus Cope, 1877. 模式種: Camarasaurus supremus Cope, 1877. 記載は1877.8.23
産出地 Dakota, Colorado州 アメリカ

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