のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

我こそは悪人なれば救われん

2011年12月02日 | わが家の時時
今年は浄土宗の宗祖・法然の没後800回忌
その弟子の親鸞も没後750回忌
それにちなみ二人ゆかりの名宝展が開かれていたので上野に出かけてきました

冷たい雨の一日であったのにもかかわらず
会期も最終週に入ったこともあってか
会場は善男善女老若男女が列を作り熱気に満ちていました

実はこの夏にわが家に縁のある弁ねいさんのシンポジウムが地元でありました
そこに“大正の法然”というキャッチがついていましたので
法然という人はどういう人なのか どういう教えなのか
高校の日本史以上の知識がありませんでしたので
少し勉強してみようかと興味を持っていました

             

3.11以降
特に法然さんがブームを呼んでいるようです
平安末期から鎌倉期にかけての末法の世に天災や戦乱が重なった時代が
現代に通じているうえにさらに原ぱつ事故です
なぜ事故を防げなかったのか
自責の念に陥った現代人が「悪人正機説」に救いを求めている
という話にも説得力があります

このときの「悪人」とは
何か倫理的に悪いことをした人という意味ではなく
自分の中の「悪」に気がついた人のことで
みずから悟りを開けなくとも絶対肯定してくれる仏が
救いの手を差し伸べてくれる
そういう思想のようです

             

会場で法然を紹介する本を買ってきました
町田宗鳳『法然・愚に還る喜び 死を越えて生きる』2010.11 NHKブックス1168
松岡正剛『法然の編集力』2011.11 NHK出版

町田さんは20年間臨済宗で修行された後に渡米して神学を学び
いまは法然の研究者として活躍されているという方
一神教には信仰の中に「悪」を取り入れることはないが
闇の世界も信仰の中に取り込み
神を“完璧なる存在”でなく“完全なる存在”とすることで
精神を安定させることができるといった
心理学者のユングにも法然の思想は通ずるといいます

松岡さんは「悟りの仏教」から「救いの仏教」へ編集し直して
ただ一心に「南無阿弥陀仏」と称えれば往生が約束されるという
「専修念仏」を“選択”した法然の編集力に着目しています
そしていま「地震-津波-原ぱつ-被災-喪失-死者-家族-鎮魂-浄土
-南無阿弥陀仏-法然」という連想が切っても切れないといいます

どちらも文明のパラダイム・シフトに際して
法然の思想が大きな意味を持つのではないかと問題提起しています

さわりだけしか読んでいませんが
ああなるほどなあと思うことしきり
しかし どちらの本も大手メディアのもの
もしかして実はこのブーム
原ぱつ事故の責任論から眼をそらさせるためのワナ?