のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

我が世帯あがる雲雀の如くにてさがることこそ矢より速けれ(醒睡笑)

2008年04月17日 | 農のあれこれ
近くのガソリンスタンドのお兄ちゃんはよく話しかけてくれます。
「うちでは今年からは米づくりをやめちゃいましたよ。
これからはうちに米はないと思えよ、だって」

彼の家は兼業農家で、
自家用飯米だけは自分で作り続けていましたが、
今年から耕作を全面委託したのだそうです。
地代は現物で戻るのですが、
経費分を除くとむしろ赤字になるような微々たる程度。

「これまで自分じゃあ何もしてなくて親任せだったけれど、
これでいいのかなあとは思うんですよ。
田んぼがあるんだから自分で作っていた方がいいかなあって。
だって、これから絶対、食糧不足になるでしょ」

そりゃあ機械代等を考えれば、
米作りを続けていても赤字にはなるので安易には薦められないけど、
その気があるなら米作りの技術だけでも
受け継いでいたほうがいいんじゃないか。
そんな話をしてきました。


今夜のNHKTVの番組「クローズアップ現代」は
食糧危機がテーマでした。
国際市場で穀物を買おうとして苦労する商社や
農地を借り集め飼料用穀物を生産する農業法人が紹介されていました。

雑誌『週刊東洋経済』2008年2月18日号は
「食の戦争 空前の価格高騰が日本の食卓を襲う」が特集テーマ。
NHKの今夜のプログラムの元ネタのような内容です。


雑誌『世界』最新号(2008年5月号)でも特集は「食と農の危機」。

例の冷凍食品事件以降、あちこちの情報媒体で
食糧危機がよく取り上げられるようになりました。
漠然と、しかし確実に
将来の食についての不安感が広まっているように思います。

では、どうしたらよいのか。
なかなか答えは見出せないのですが、
『世界』には興味深い記事がありました。

消費者の現状を生協総合研究所の近本さんは
生協組合員の消費動向調査の結果から考察しています。
(「既婚女性は食生活のマネージャーであり続けるか?」)
これまでは既婚女性が家族の食のマネージャーとして位置づけられてきたが、
時間に追われる日々の中で個食が進むことで
主婦はマネジメントから解放され(降りてしまい)、
しまいには料理スキルの低下、
自分自身の食マネジメントすらできなくなってしまう。
今後、とりあえず家族はいらないという層が増えていくと
さらに食への関心は薄れていく…

「無理をしないで、変えられるところから少しずつ」という
昨今の食育ブームは食の自己崩壊を助長するという指摘にも
はっとさせられました。
日本型食生活が消費者自身の惰性で自己崩壊したことを
考えると、こんな悠長な論議には疑問が湧く、と。
(神門善久「何が食生活を乱したのか」)

他方、農業生産の場ではどうか。

食のグローバル化によって農産物価格、農地価格が低下、下落し、
まさに農業恐慌が農村を襲っている。
そんな中、山形の置賜盆地のある町では
農民手作りによる集会「俺達百姓は怒っている!」が開かれ、
衰退した地域をどうにかしたいと商業者も参加して、
地域に腰を据えて世界を覆っている構造を変えようという動きもある
と紹介されています。
(大野和興「農と食の崩壊と再生」)


「できることからこつこつと」だけでは何も変えられない。
だからこそ、現状をしっかり把握することが必要なのかもしれません。