そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



画像ないのでここクリックベートーヴェン:交響曲全集
ルガノ放送交響楽団,ルガノ放送合唱団,ラースロ(マグタ),ラバリエ(リュシエンヌ),アリエ(ラファエル),ムンテアーヌ(ペトル),シェルヘン(ヘルマン),ベートーヴェン
プラッツ


年末だ。
師走だ。
年の瀬だ。
ということは、ベートーヴェンの交響曲第九番の季節だ。

今もちょうど日本テレビで読響の第九をオンエアしている(深夜2時前から3時過ぎまで)
読響の指揮者は下野竜也氏。
今、第2楽章に入ったところだけど、なかなかいい。
テンポがいい。
僕が好きな少し速めのキビキビした第九だ。
テレビなので音の細かいところまでは分からないけど。
なかなかいいぞ、今年の読響の第九。

ということで。
今回は第九の話だ。
それも笑える第九。

指揮者によってクラシックは同じ曲が如何様にも変わる。
そして、そのいい例として、第九にはすごい演奏が残っている。
それがこのシェルヘンという指揮者が残したルガノ放送交響楽団の演奏だ。
昔は第九単品でCDが買えたんだけど、今は交響曲全集しか売っていないみたい。
でも、このシェルヘン&ルガノ放送楽団の第九だけは、一度は聴いておいて損はない面白さなのだ。
だって、クラシックで笑える演奏ってなかなか、ない。
クラシックに笑いは基本的に、ない。
でも、この第九は笑えるのだ。

聴けば分かる。
すごいぞ。
何がすごいって、第4楽章の出だしのスピードが尋常ではないのだ。
速いのだ。
あまりにも速いスピードで指揮棒が振られるのだ。
そのためオーケストラがとても演奏しきれなくて、崩壊している。
その結果、指揮者は怒りのあまりうなり声を上げる。
観客はゴホンゴホン咳をする。
もう、すさまじい、崩壊した第九がここにある。
必聴だ。
だって、弾けてないんだもん。
それを観客の前でやってのけたシェルヘンはすごい。
楽団員が怒って帰ってしまっても無理ない暴走指揮なのだ。

なぜそんな速さで指揮棒を振ってしまったかというと、シェルヘンにも理由がある。
実はベートーヴェンの自筆の第九の楽譜には、この部分のテンポの指示が♪=96と書いてあるのだ。
この♪=96というテンポ、絶対に演奏が無理なスピード。
研究ではベートーヴェンの書き間違いだと言われている。
♪=66のはずが間違って♪=96と書いてしまったらしい。
だけど、シェルヘンはそのベートーヴェンの間違った♪=96の指示に忠実に従おうとしているのだ。
実際はそんなシェルヘンでも♪=96ではさすがに演奏出来ず、♪=76ぐらいにテンポは落ちているのだが。
それでも尋常じゃないスピード。
その結果、演奏崩壊だ。
必聴だ。

このCDは交響曲全集なので、第一番から第九番までベートーヴェンの交響曲が全曲入っている。
そして、シェルヘンがルガノ放送楽団と組んで録音したベートーヴェン交響曲は、第九以外も全部すごい。
とくに第六番「田園」と第八番は、ムチャクチャだ。
速さがムチャクチャだ。
ベートーヴェンの楽譜に忠実に演奏しようとしすぎて、他ではあまり聞けない異常なスピードの演奏になっている。
しかもシェルヘンは演奏中に怒鳴りまくる。
笑える。
必聴だ。

なんて書いているうちに、テレビの読響が第4楽章に入った。
さて、下野竜也氏のお手並み拝見だ。
……
……
……
あれ?
ちょっと、速すぎるかな。
合唱がキビキビしすぎ。
僕の注文、厳しすぎるのかな?
ワハハ。
かと思ったら、今度は遅すぎる。
で、
あららららら。
ラストはそんなハイテンポかよ?
ええぇぇ~!?

うーむ。
クラシックって、指揮者が本当に大事だ。

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