ウランバートルから3時間ほどでバイヤンウンジュルという町に着いた。その日の夕方、ゲルの脇でヒツジの解体をしていた。その「さばき」は実に見事なものだ。殺したところは見ていないのだが、胸腔を切り、新動脈を切るのだと思う。私が見たときはすでに腹側から皮をはぎ、左右に開いて四肢の関節部で骨を外し、要するに皮と四肢の先端部だけと、胴体と四肢の付け根とに分ける。皮を剥ぐときは刀を使わず、毛わと体のあいだに手を入れ押し開くようにする。ドライバーのジャガさんがいつの間にか参加して手伝っている。モンゴルでは良くあるのだが、こういう作業をしているときに、初めての人が挨拶も無しに、作業を手伝い始め、手伝ってもらった方も何も言わないで作業をして、「もっと引っ張れ」などと旧知であるかのように話しかけたりするので、不思議な感じがする。
皮をはいだあとは、腹腔を開いて消化器官を背骨からはがすようにとる。無造作なようで、消化管を切らないように注意している。というのは消化管を切って内容物が出ると肉が臭くなるからだ。直腸のあたりでは慎重になって一時作業を止め、肛門の側から、直腸の周りを削ぐように喝を入れる。そうしておいて腹腔側から引くので直腸がスポンと外れる。これらはバケツのような容器に入れる。腎臓などは別にとって容器に入れる。
次に胸骨の部分を切って胸腔を開ける。血が溜まっており、横隔膜を切ってからになっている腹腔にだし、心臓をとる。肺や食道は使わないので別の容器に入れる。腹腔の血はすくい出す。この血は多分、腸詰めに使うのだと思う。この間、毛皮を敷いたシート状の上で作業をするが、そこには一滴の血も落とさない。つまり胴体の筋肉に全く傷をつけていないのだ。
この後、肋間筋を切り、椎骨も外して、料理をするのに適当な大きさに分割する。頭骨の外し方は難しいのだが、環椎の構造を知っていて、刀を巧みに入れてあっさりと外した。見事なものだ。
解剖学的な知見があるのではないだろうが、経験的に、あるいは代々引き継がれた技術の伝達により、ヒツジの体がどうなっているか、どのタイミングでどうするのが良いかを熟知している。
ヒツジの解体。一滴の血もこぼさない。
皮をはいだあとは、腹腔を開いて消化器官を背骨からはがすようにとる。無造作なようで、消化管を切らないように注意している。というのは消化管を切って内容物が出ると肉が臭くなるからだ。直腸のあたりでは慎重になって一時作業を止め、肛門の側から、直腸の周りを削ぐように喝を入れる。そうしておいて腹腔側から引くので直腸がスポンと外れる。これらはバケツのような容器に入れる。腎臓などは別にとって容器に入れる。
次に胸骨の部分を切って胸腔を開ける。血が溜まっており、横隔膜を切ってからになっている腹腔にだし、心臓をとる。肺や食道は使わないので別の容器に入れる。腹腔の血はすくい出す。この血は多分、腸詰めに使うのだと思う。この間、毛皮を敷いたシート状の上で作業をするが、そこには一滴の血も落とさない。つまり胴体の筋肉に全く傷をつけていないのだ。
この後、肋間筋を切り、椎骨も外して、料理をするのに適当な大きさに分割する。頭骨の外し方は難しいのだが、環椎の構造を知っていて、刀を巧みに入れてあっさりと外した。見事なものだ。
解剖学的な知見があるのではないだろうが、経験的に、あるいは代々引き継がれた技術の伝達により、ヒツジの体がどうなっているか、どのタイミングでどうするのが良いかを熟知している。
ヒツジの解体。一滴の血もこぼさない。