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自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

歌詞の動植物

2020年06月18日 | 標本
新聞に載るなど年に一度ありやなしやのはずなのに、あろうことか1日に二度も載るという稀有なことがありました。荒川のシカの取材(こちら)の少し前に電話取材がありました。農水省系の人が童謡の歌詞に使われた動植物や景色の言葉の数を調べて、何が多かったかを分析した論文が公表されたので、解説をしてほしいということでした。論文を送ってもらったら、英語のものでした(こちら)。いわゆる「理系」の雑誌だから、検定法や図表は理系の論文によく見るものですが、多い少ないと言っても「動物が多い」のは正しくは「動物の歌詞が多い」ので慣れない感覚でした。しかし著者の認識は「歌詞によく出てくるということは人々の自然認識を反映しているはずだ」ということにあります。それはおもしろいことだと思いました。

 実は私は日本人に愛唱される唱歌「故郷」について似たような試みをして『唱歌「ふるさと」の生態学』(ヤマケイ新書)という本を書きました(こちら)。ただし、「定量的」なアプローチはせず、例えば冒頭に「ウサギ追いし」とあるが、そもそもウサギを追うどころか、見たことのある人がどれだけいるだろうか。なぜこういう歌詞があるのだろうか、という設問をして、それを生態学的にときほぐしました。自画自賛で恐縮ですが、動物も植物も生態学も歌も好きという人はそうはいないので、これらすべてが好きな私でないと書けない本だと思っています(こちら)。そういうことでコメントを求められたようでした。
 シカの取材とも重なるのですが、日本人が「都市生活者」になり、日常から自然が遠ざかってしまった現在、「故郷」がこれまでと同じようには歌われなくなる可能性があります。すでにこの30年ほどは、「故郷」ができ大正時代の人々が抱いたのと同じ共感を持てなくなっています。これは思いのほか大きな問題かもしれません。

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