「令和7年第1回定例会、市長報告、優先整備路線の検証
及び総合判断について」に関する私見
2025.3.1
高槻成紀
<はじめに>
表記の市長報告が小金井市(議会)のホームページに公開されました(こちら)。また私は、You Tubeで2月17日の市議会の様子を見ました。これらには、私の個人名が出てくるので、これらに対する私の考えを小金井の行政に関わる人々に伝える責務があると感じ、以下に記すことにしました。 私は小金井市民にとって野川の自然はかけがえのないものであり、それを将来の世代に残すのは現在の市民の責務であるとの思いから、これに悪影響を及ぼす「3・4・11号線の報告」についての見解を書きました。これを以下「高槻文書」とします。これは、ある小金井市民が市長に読んでもらいたいからと要請されたことに応えたものであり、これを白井市長が読むこととなりました。その時点で私は、白井市長が道路反対を主張するのに役立つという期待から執筆しました。そして、私はこれを小金井市の要請によるものとしてほしいと要望しましたが拒否されました。
その後、この内容をスライドにして市長の前で説明しました。それはこの道路計画は野川の自然にダメージを与えるにもかかわらず、道路計画報告書は調査結果を歪曲し、生態学的な誤りがあるとともに、現代保全生態学の知見や考え方が反映されていないばかりか、東京都が策定した東京都生物多様性地域戦略にも反するものであり、このような報告書に基づいて道路計画が進められることは不適切であるから調査をし直す必要があるという内容です。そして、結論のひとつとして、小金井市は3・4・11号線計画を見直すことを東京都に決然と主張すべきであるとしました。
しかるに、市長報告は3・4・11号線を推進することを東京都に要望するものとなっています。これは「高槻文書」と全く違うものであり、市長報告の中では環境に配慮するなどの言葉を並べることで論点をわかりにくくしていますが、要するに私の主張を無視したものです。これは、私個人として不本意であるだけでなく、小金井市民にとっても禍根を残すものです。
<市長報告の内容>
市長報告では3・4・11号線について検証は次にように評価したと紹介しています。
「環境に対する影響については、一定の影響はあるものの動植物への影響の範囲は限定的であり、多くの種の存続は維持され、事業実施区域外にも同質の環境が広く分布するため、主要な生息生育の場は残存し、生物に相互関係への影響は維持されると評価されています。」
私は「高槻文書」にこの検証の評価は正しくないことを明示しました。
次に市長報告では私の個人名をあげて、
「理学博士である高槻成紀氏に、東京都が委託した道路概略検討の動植物の予測・評価の結果等に関する分析を依頼し、専門家の見地からの意見を聴取しました。」
と記述されていますが、上記の通り私は小金井市から依頼を受けていないので、これは事実と違います。また意見を聴取したとありますが、私は文章として渡した上で、スライドのプレゼンテーションをしたので、意見聴取という記述も正しくありません。
市長報告では、その後私が「高槻文書」に書いたことが記述され、
「当該検討では貴重種の保護が必要とされていますが、評価のほとんどが「生息する、生育すると予測する」となっており、「問題なし」とされている評価に疑問を抱いている、との見解が示されました。」
とあります。私はこの道路予定地には多くの貴重種があるという調査結果から、道路計画は中止すべき、あるいは少なくも凍結して新たな調査をし直すべきだと主張しました。にもかかわらず、市長報告では「疑問を抱いている」と、私の主張を明らかに弱める表現で紹介しています。これは著者の意図を歪曲するものであり、このような形で紹介されることは容認できません。また、私は「高槻文書」に要点を書きましたが、市長報告では、以下の点が削除されています。
「都道建設とはいえ、その道路は小金井市につけられるものである以上、東京都は小金井市の意見を聞くべきである。小金井市は市民の意向を汲み、それに即した行政判断をし、東京都に対して決然と主張すべきである。」
私は「高槻文書」を小金井市の自然を未来の世代に良い形で引き継ぐという小金井市の掲げる素晴らしい理念(小金井市みどりの基本計画, R3 こちら)に共鳴して、道路計画に反対すべきであると書きました。私にとって重要なこの主張が恣意的に削除する形で引用されたことは容認することができません。しかもこの引用内容を事前に相談することもありませんでした。これは内容的にも手続き的にもきわめて問題です。
市長報告はこれに続けて総合判断が書かれています。
「4 総合的判断について
総合的判断は、検証結果を踏まえるとともに、自然環境に関する学識経験者の見解及び自然災害に対する対策の必要性を鑑み判断しました。」
ここには個人名はありませんが、もしこの学識経験者が高槻であるとすると、私が主張する「道路はつけるべきでない、調査をやり直すべきだ」とする内容が、道路計画要望に利用されていることになります。これは自然保護のために人生をかけてきた私にとって耐え難いことであり、容認できません。市長報告では、総合評価には能登半島の事例を紹介するなどして道路の利便性を優先し、自然の破壊はやむを得ないことにしています。道路の利便性は道路計画の一般論であり、それは小金井市の野川の特殊性とは別の議論であるはずです。この中で
「東京都生物多様性地域戦略の行動方針に沿って、整備後も整備前の生態系が保全されるよう、動植物の調査、地下水位の一定期間のモニタリング等必要な対策を求めます。」
としていますが、道路を作る以上、すでに生態系は整備前には戻らないのであり、道路は中止にするしかないのは明白です。このことは、東京都生物多様性地域戦略にも、小金井市みどりの基本計画にも反するものです。市長報告のこの文章は、生態系に配慮するかのような虚偽記述によって道路推進をカモフラージュするという意味で不誠実です。
<まとめ>
ホームページに公開された市長報告には以下の不適切な記述があります。
1)高槻の個人名が事前の了解を得ることなく表記された。
2)私は小金井市に依頼されて「高槻評価」を書いたのではない。依頼する形を要望したにもかかわらず断られた。にもかかわわらず、市長報告には依頼したと書かれている。
3)「高槻評価」には6点が要約されているが、最重要な6番目の内容が削除されている。つまり、不正確な引用を本人に確認することなく公開した。
4)「高槻評価」は「道路反対ないし凍結、調査をやり直すべき」と主張しているにもかかわらず、それが道路推進の根拠の1つとされている。これは自然保護のために生態学研究をしてきた私の名誉に関わることである。
以上のことから、現在公開されている市長報告を取り下げ、修正することを求めます。
以上は私の市議会を見ての印象ですが、私の個人名をあげて不正確な引用をした市長報告がこのまま小金井市のホームページに公開されている状況は市議会の責任において是正してください。もし市長報告が民主的議論を踏まえて公約通りに道路計画に反対する内容になるのであれば、私は喜んで高槻文書を提示します。小金井市議会は市民の期待に応えてください。お願いします。