ク:先生!新しいのを書いてきましたよ。どうぞご覧になってください。
バ:おー、君か、クレープス君。まぁ座り給え。どれどれ・・・
と言ってバッハ先生は弟子のクレープスが持ってきた楽譜を眺めます。
バ:この前持ってきたハ長調のリュート協奏曲は、ありゃつまらん曲だったが、今度のやつはまあまあかな。リュートというのはヘ長調の方が綺麗に響くのかのう?そういや最近若いリュート奏者が書いた協奏曲のうち、コハウトというウィーン人の作品もなかなか良かったがそれもヘ長調だったな。
ク:いえ、別にヘ長調だけがというわけでは。クラインクネヒト氏のリュート協奏曲はとてもいい曲ですが、ハ長調です。
バ:おう、その曲は知っておるぞ。お前の曲を入れてリュート協奏曲作曲の3K、コハウト、クラインクネヒト、クレープスとでもしておいてやろう。(笑)でもわしはどうもこの最近の作風にはついていけんなぁ。わしの息子たちもお前みたいな曲を書いとるがどうも好かん。
バッハ先生の作風は典型的なバロックのスタイル、しかし18世紀第2四半期以降全く新しい書法で書く作曲家が現れてきます。たとえばペルゴレージ。彼が書いた奥様女中というオペラブッファとバッハ先生の書いたコーヒーカンタータはほぼ同じころに作曲上演されていますが、同じ時期の作品とは思えないくらい作曲スタイルは異なります。リュート奏者たちの中にもヴァイスの次の世代であるファルケンハーゲン、ハーゲン、コハウトなどが今までのバロックのスタイルとはかなり異なる新しいスタイルで曲を書き始めるのがこの頃でした。
註)クレープスは2曲の協奏曲(ヘ長調とハ長調)現代に伝えられています。クラインクネヒトは、ガンバやフルート曲で知られているクラインクネヒトの弟だと考えられます。兄弟ともバイロイトの宮廷に奉職してました。クラインクネヒトはハ長調の協奏曲と変ロ長調のソナタが残されています。
…あ、今日は…か。
でもとってもためになる与太話(失礼!フィクションという意味で)ですワン🐶
それまではペルゴレージと言えば、スターバト・マーテルだけしか聴いたことがなくて、作曲者が大変若くして(26歳で?)他界したという知識だけで、しかも最初に聴いたCDがカークビーとカウンター・テノールのボウマンの歌唱だったので(エマ・カークビーに対する思い入れが強いおいらですワン)、終曲の最後のアーメンのところまで一気に飽きずに聴けました。これがバッハと時代が重なってる人の曲であることを知り驚いていますワン🐶恥ずかしながらバッハのロ短調ミサとかマタイの受難曲などの大作は、何度聴きはじめても、最後まで聴き通したことがありません。たしか先生は「バッハは稀代のメロディイスト」と仰ったのを覚えてるのですが(記憶違いならごめんなワン!)全く同感で、平均率クラヴィーア曲集なんか聴いてても多彩なメロディの宝庫であり、何度聴いても飽きないのですが…長い曲はどうも苦手ですワン🐶 素人がクラシック音楽を飽きずに最後まで聴き通すには、音楽の理論も含めて作曲に纏わる背景的な知識(情報)が必要であることを痛感します。 そこまで熱心な鑑賞者ではないので、残りの人生は気に入った音楽をメインに聴いていくつもりですワン🐶
話があちこち飛びますが、おいらは中川先生の講座と演奏に出会って、音楽の好みもずいぶん変わり(広がり)思いがけず老後の楽しみが増えて幸せですワン🐶
相変わらずの長駄弁にお付き合いくださりありがとうございました。ワンワン🐶
>え、これ実話ですか?... への返信
いつも翌日に解題を書くのですが、今回は不要かな?