リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

泣き別れ

2006年02月28日 20時56分53秒 | 音楽系
クラシック・ギターなどモダン楽器の人は楽譜を見ないで演奏するのが普通ですが、古楽の人は楽譜を見て演奏することがほとんどです。要は上手に演奏すればいいんで、どっちでもいいことではありますね。

私は暗譜が結構得意で、今この年でも暗譜の部分の脳みそはほとんど衰えていません。人の名前はすぐに忘れますが、不思議なもんですね。といって、わざわざ暗譜で弾くことはほとんどありませんけどね。

先日コンサート用の楽譜を整理していたら、あることに気がつきました。ヴァイスのドレスデン写本のうち何曲かは、楽譜の順と曲順が異なっています。ほんとは、ジグが最後に来る場合に、最後にメヌエットが書かれていて、メヌエットの終わりに「ジグに続く」って書いてある場合です。

これって、私は当時の習慣では急速楽章のジグ(とかプレスト)で終わらず、エレガントなメヌエットで終わる習慣があって、少し時代が後になって、その写本に誰かが順番を入れ替える書き込みをしたのでは、と思っていました。

いつもコンサート用の楽譜は縮小したものを使っていましたが、今回はオリジナルのサイズに拡大してオリジナルと同じページ組にしてみました。そうすると、この写本の場合、プレストの楽章は大体2ページ、メヌエットは1ページなんですが、1回も曲の途中で譜めくりの必要がないんですね。

ところが本来の曲順に並べると、プレストが途中で譜めくりが必要になります。つまり「泣き別れ」してしまうんですね。ということは、「メヌエット」のあとに「ジグに続く」と書いて、ページを戻るようになっていたのは、実は泣き別れ防止ということだったのかなと他の組曲(ソナタ)を見てみましら、やはり全てそうでした。

こんなことは、みなさんご存じだったのかもしれませんが、誰も教えてくれませんでしたねぇ。スイスにいたとき今村さんにこの曲順の話をしたことがありましたが、彼は「泣き別れ防止」のことはいってませんでしたねぇ。うむ、実はこれは意外な新発見だったりして。

さて、明日からアメリカに出かけます。インディアナ州のパーデュ大学でコンサートをする予定です。帰国は3月6日ですので、それまでブログはお休みです。