松尾睦のブログです。個人や組織の学習、書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。
ラーニング・ラボ
大義名分を与える
売上高経常利益を8年間で1.5%から14.3%にまで伸ばしたキャノン電子。酒巻社長のインタビュー記事を読んでいて、その秘けつは次の3つにまとめることができると思った。
その一:目標に大義名分を与える
酒巻社長は「コスト削減」ではなく「環境経営の推進」を強調している。時間、生産スペース、人の異動距離、エネルギー使用量を減らすことは、結果的に環境にやさしい経営につながる。たしかに、コストダウン運動よりも、環境のために頑張ろうと言われたらやる気が出てくる。
その二:まず3%の人間の意識を変える
酒巻社長いわく「全社員の意識を一気に変えるのは無理」。トップがメッセージを伝え続けることで、優秀で感度の高い3%の社員の意識が変わると、その周囲にいる30%の社員の意識が変わるという。
その三:専門部署に権限を与える
環境経営を進める「環境部」に権限を持たせることがポイント。非協力的な職場があれば、環境部の担当者が日報等を通してトップに報告する。「サラリーマン社会では、権限を与えるのが一番効果がある」らしい。
これら3つのポイントの中でも「大義名分を与える」ことが最も大事だと思った。われわれは、なんだかんだいって「自分の仕事が世の中のためになっている」ときに燃えるからだ。
神戸大学の金井壽宏先生は、変革型リーダーの本質を「大きな絵を描いて、メンバーを巻き込みながら実行すること」と述べているが、今の時代、「どのような絵を描いて見せ、それをどう伝えるか」がリーダーに求められている、と思った。
出所:「カギは自発的なムダ削減」日経ビジネス2010年5月10日号、p.56-59.
その一:目標に大義名分を与える
酒巻社長は「コスト削減」ではなく「環境経営の推進」を強調している。時間、生産スペース、人の異動距離、エネルギー使用量を減らすことは、結果的に環境にやさしい経営につながる。たしかに、コストダウン運動よりも、環境のために頑張ろうと言われたらやる気が出てくる。
その二:まず3%の人間の意識を変える
酒巻社長いわく「全社員の意識を一気に変えるのは無理」。トップがメッセージを伝え続けることで、優秀で感度の高い3%の社員の意識が変わると、その周囲にいる30%の社員の意識が変わるという。
その三:専門部署に権限を与える
環境経営を進める「環境部」に権限を持たせることがポイント。非協力的な職場があれば、環境部の担当者が日報等を通してトップに報告する。「サラリーマン社会では、権限を与えるのが一番効果がある」らしい。
これら3つのポイントの中でも「大義名分を与える」ことが最も大事だと思った。われわれは、なんだかんだいって「自分の仕事が世の中のためになっている」ときに燃えるからだ。
神戸大学の金井壽宏先生は、変革型リーダーの本質を「大きな絵を描いて、メンバーを巻き込みながら実行すること」と述べているが、今の時代、「どのような絵を描いて見せ、それをどう伝えるか」がリーダーに求められている、と思った。
出所:「カギは自発的なムダ削減」日経ビジネス2010年5月10日号、p.56-59.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
若手に任せる
神戸製鋼所の機械事業部は、全社の売上の約2割を占めるにすぎないが、営業利益は最も高く、主力の空気圧縮機は世界のトップシェアを維持しているという。
同事業部の特徴は、20代の若手社員に仕事を任せ、活躍の場を与えているところにある。例えば、高校を卒業して入社した3年目の社員を一人で海外に赴任させ、入社2年目の社員に工程管理システムの改良を任せている。
なぜ、若手に任せる文化が生まれたのか?
それは、人が足りなくて、20代の若手に任せざるを得なかったためである。しかし、やみくもに任せたわけではない。同社は、熟練者の技術を標準化し、それまでベテランの勘で動かしていた複雑な工程をコンピューターで管理するようにした。
ただ、熟練工の技術を標準化しITで管理するところまでなら、多くの企業が取り組んでいる。神戸製鋼所がすごいのは、環境の変化に応じてこのシステムを改善する役目を若手に任せているところ。
ベテランの仕事を若手でもできる仕組みにすると同時に、そのしくみを若手に改良させる。ここまで取り組んで、はじめて若手が永続的に育つ環境ができる、といえるだろう。
環境を整備した上で任せれば若手は育つ。とてもわかりやすい事例である。
出所:「20代に任せる理由」日経ビジネス2010年5月10日号、p.38-42.
同事業部の特徴は、20代の若手社員に仕事を任せ、活躍の場を与えているところにある。例えば、高校を卒業して入社した3年目の社員を一人で海外に赴任させ、入社2年目の社員に工程管理システムの改良を任せている。
なぜ、若手に任せる文化が生まれたのか?
それは、人が足りなくて、20代の若手に任せざるを得なかったためである。しかし、やみくもに任せたわけではない。同社は、熟練者の技術を標準化し、それまでベテランの勘で動かしていた複雑な工程をコンピューターで管理するようにした。
ただ、熟練工の技術を標準化しITで管理するところまでなら、多くの企業が取り組んでいる。神戸製鋼所がすごいのは、環境の変化に応じてこのシステムを改善する役目を若手に任せているところ。
ベテランの仕事を若手でもできる仕組みにすると同時に、そのしくみを若手に改良させる。ここまで取り組んで、はじめて若手が永続的に育つ環境ができる、といえるだろう。
環境を整備した上で任せれば若手は育つ。とてもわかりやすい事例である。
出所:「20代に任せる理由」日経ビジネス2010年5月10日号、p.38-42.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
『野中広務: 差別と権力』(読書メモ)
魚住昭『野中広務 差別と権力』(講談社文庫)
政治家・野中広務に対して良いイメージがない人でも、この本を読むと野中ファンになるのではないだろうか。それだけ魅力的な人物として描かれている。
国鉄職員、町議、町長、府議、副知事と階段を一歩一歩上ってきた野中氏が、政府の中枢にまで登りつめ、首相就任目前のところで踏みとどまる。なぜか?
「私は自分が総理総裁の器でないことはよくわかっていた。私にふさわしいのはナンバー2で上の人間を助ける仕事である。」と彼は述懐する。
政敵の弱みとなる情報を握り、脅しに近い方法で相手を屈服させ、派閥や団体を仲介する能力によって「影の総理」とまで呼ばれた野中氏だが、自身の差別体験もあり、弱い者や虐げられている者に対し限りないやさしさを示す。そのコントラストが鮮明である。
最も心に残ったのは、野中氏が国鉄に勤めていた頃のエピソード。友人と闇市で飲んでいた彼は、広島で被爆した売春婦と出会う。被爆で顔がケロイド状になった女性を見た友人は逃げようとするが、野中氏は彼女の話をじっくりと聞く。
「女は戦時中の体験を語り出した。落ち着いた話しぶりからして、相当な教育を受けてきたらしい。野中は腰を据えてそれに耳を傾けた。「いろいろ苦労してきたんやな。命があっただけでもよかったやないか。これから必ずいいことがあるからな。」最後にそう言って二十円ほどの金を握らせた。」(p.67)
この後、彼女は野中氏に会うために国鉄の組合大会が開かれている温泉を訪れ、別れ際に彼の背中を拝みつつ、次のように言ったという。
「あの人はきっと偉くなる。だって、私がこうやって毎日、あの人が出世してくれるように祈っているんだから。」(p.68)
弱い立場にいる人々の気持ちを理解できる共感力と、敵をなぎ倒し、政策を実行する力。これら2つを兼ね備えた政治家はなかなか現れないのではないか、と思った。
政治家・野中広務に対して良いイメージがない人でも、この本を読むと野中ファンになるのではないだろうか。それだけ魅力的な人物として描かれている。
国鉄職員、町議、町長、府議、副知事と階段を一歩一歩上ってきた野中氏が、政府の中枢にまで登りつめ、首相就任目前のところで踏みとどまる。なぜか?
「私は自分が総理総裁の器でないことはよくわかっていた。私にふさわしいのはナンバー2で上の人間を助ける仕事である。」と彼は述懐する。
政敵の弱みとなる情報を握り、脅しに近い方法で相手を屈服させ、派閥や団体を仲介する能力によって「影の総理」とまで呼ばれた野中氏だが、自身の差別体験もあり、弱い者や虐げられている者に対し限りないやさしさを示す。そのコントラストが鮮明である。
最も心に残ったのは、野中氏が国鉄に勤めていた頃のエピソード。友人と闇市で飲んでいた彼は、広島で被爆した売春婦と出会う。被爆で顔がケロイド状になった女性を見た友人は逃げようとするが、野中氏は彼女の話をじっくりと聞く。
「女は戦時中の体験を語り出した。落ち着いた話しぶりからして、相当な教育を受けてきたらしい。野中は腰を据えてそれに耳を傾けた。「いろいろ苦労してきたんやな。命があっただけでもよかったやないか。これから必ずいいことがあるからな。」最後にそう言って二十円ほどの金を握らせた。」(p.67)
この後、彼女は野中氏に会うために国鉄の組合大会が開かれている温泉を訪れ、別れ際に彼の背中を拝みつつ、次のように言ったという。
「あの人はきっと偉くなる。だって、私がこうやって毎日、あの人が出世してくれるように祈っているんだから。」(p.68)
弱い立場にいる人々の気持ちを理解できる共感力と、敵をなぎ倒し、政策を実行する力。これら2つを兼ね備えた政治家はなかなか現れないのではないか、と思った。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
現場と経営陣のギャップを埋める
1712年創業の食品卸・国分は、昨年度の決算で大幅増益になったらしい。前回紹介した日立ソフトエンジニアリングと共通していたのは、コミュニケーションを強化しているところだ。
国分には「ジェネレーションの会」と呼ばれる、30~40代の現場社員と役員が直接対話する場がある。日立ソフトの「段々飛び懇談会」(2階級階層の違う社員の飲み会代を補助する制度)と趣旨は同じである。
興味深いのは、「役員は質問を受ける立場に徹する」というルール。これによって、現場社員が聞きたいことを存分に聞くことができる。放っておくと、役員の演説会になる恐れがある。
もうひとつの工夫は、現場社員の方も、同世代を無作為に10名集めている点。最初は緊張している現場社員も、2時間ほどの懇談を終え、飲み会に突入するころには打ち解けて盛り上がるという。これまで160回以上開催され、のべ2000人以上が参加したとのこと。
単なる「職場単位の飲みニュケーション」ではなく、話し合いを深める工夫がされている点が印象的である。現場と経営陣のギャップが広がると組織はギクシャクしだす。両者の「距離感を縮める場」を設けることは、組織が一体化する上でも大切だと感じた。
出所:「挑戦者が老舗を伸ばす」日経ビジネス2010年5月3日号p.80-82.
国分には「ジェネレーションの会」と呼ばれる、30~40代の現場社員と役員が直接対話する場がある。日立ソフトの「段々飛び懇談会」(2階級階層の違う社員の飲み会代を補助する制度)と趣旨は同じである。
興味深いのは、「役員は質問を受ける立場に徹する」というルール。これによって、現場社員が聞きたいことを存分に聞くことができる。放っておくと、役員の演説会になる恐れがある。
もうひとつの工夫は、現場社員の方も、同世代を無作為に10名集めている点。最初は緊張している現場社員も、2時間ほどの懇談を終え、飲み会に突入するころには打ち解けて盛り上がるという。これまで160回以上開催され、のべ2000人以上が参加したとのこと。
単なる「職場単位の飲みニュケーション」ではなく、話し合いを深める工夫がされている点が印象的である。現場と経営陣のギャップが広がると組織はギクシャクしだす。両者の「距離感を縮める場」を設けることは、組織が一体化する上でも大切だと感じた。
出所:「挑戦者が老舗を伸ばす」日経ビジネス2010年5月3日号p.80-82.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
段々飛び懇談会
2010年版の「働きがいのある会社」ランキングでも10位に入った日立ソフトエンジニアリングは、赤字に陥った2005年からV字回復することに成功した。その秘けつは、つぎの3点らしい。
1)社長の積極的な情報発信
2)懇親会によるコミュニケーション強化
3)社員(シニア、若手、女性)による提案
別段目新しさは感じないが、たぶん、これら3つがしっかりと連動している点に成功のポイントがあるのだろう。「トップの意思表示」と「ボトムによる提案」が、「腹を割ったコミュニケーション」によってうまくつながったといえる。
面白いのは「段々飛び懇談会」と呼ばれる飲み会。一般社員と部長、課長と役員など、階層が違うために普段話す機会が少ない人が飲む場合に、それぞれに3000円を補助する制度だ。年間3000万円の予算がつけられ、他の懇談会を合わせるとのべ1万4千人以上が利用したという。
改革を成功させる上で「トップダウンとボトムアップのバランスの大切さ」はよく指摘されるが、両者をつなぐコミュニケーションに一工夫をすることが鍵になる、と思った。
出所:「”ダメ会社”から5年で復活」日経ビジネス2010年4月5日号、p.68-70.
1)社長の積極的な情報発信
2)懇親会によるコミュニケーション強化
3)社員(シニア、若手、女性)による提案
別段目新しさは感じないが、たぶん、これら3つがしっかりと連動している点に成功のポイントがあるのだろう。「トップの意思表示」と「ボトムによる提案」が、「腹を割ったコミュニケーション」によってうまくつながったといえる。
面白いのは「段々飛び懇談会」と呼ばれる飲み会。一般社員と部長、課長と役員など、階層が違うために普段話す機会が少ない人が飲む場合に、それぞれに3000円を補助する制度だ。年間3000万円の予算がつけられ、他の懇談会を合わせるとのべ1万4千人以上が利用したという。
改革を成功させる上で「トップダウンとボトムアップのバランスの大切さ」はよく指摘されるが、両者をつなぐコミュニケーションに一工夫をすることが鍵になる、と思った。
出所:「”ダメ会社”から5年で復活」日経ビジネス2010年4月5日号、p.68-70.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
どうか、主があなたの行いに
どうか、主があなたの行いに豊かに報いてくださるように。
(ルツ記2章12節)
(ルツ記2章12節)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
次ページ » |