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「あ、こっちだ!」と思える瞬間

櫻川米七さんは、日本で4人しかいない幇間(ほうかん)の一人。幇間とは、もともと遊興の酒間を幇(たす)くる者という意味で、お座敷遊びを楽しく盛り上げるために気を配り、旦那衆を持ち上げる役目を担う人らしい。「太鼓持ち」とも呼ばれる。

ただ、米七さんは、はじめから幇間を目指したわけではない。21歳のとき、落語家の柳家小さんに弟子入りするが、3年ほどたったある日、たまたま、「最後の幇間」と言われた悠玄亭玉介の芸を見る機会があった。

「その時、あ、こっちだ!と思ったんです」

と米七さん。

都々逸、小唄、三味線をまじえて、客と同じ座敷での軽妙な踊りやコミカルなフリをするところが落語とは違う。

「踊りの型というか、動きの面白さというか、様子がいいというか・・・・・ま、とにかくカッコいい!と思ったんです。」

と米七さんは述懐している。

自分の価値観に合うキャリアの転機は突然やってくる。そのとき「あ、こっちだ!」と思える瞬間があるということは幸せなことかもしれない。僕はもともと社会心理学を専攻していたが、大学院を出た後、民間の研究所で働いていたときに経営学やマーケティングと出会い、「こっちかな」と思ったことを思い出した。

出所:「太鼓持ちという生き方:櫻川米七」『ひととき』2010. Vol. 10, No.5, p.36-41.
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