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『南方熊楠』(読書メモ)

飯倉照平『南方熊楠:森羅万象を見つめた少年』岩波ジュニア新書

眼光鋭い南方熊楠の写真はインパクトがある。その顔だけでなく、彼の生き方そのものが独創性に満ちている。

大学予備門を退学後、15年間アメリカとイギリスに留学し、独自の博物学を修める。学校という枠におさまりきらないため、すぐに退学し、自己流の研究をすすめる熊楠。

生計のために働くことはせず(実家の援助で生活)、嫌いな相手は徹底的に攻撃したり、大酒を飲んで暴れたりと、ほとんど子供のような人なのだが、好奇心・探究心は人一倍強い。

本書を読み、研究者としての熊楠はつぎの点ですごいと思った。

一つ目、先人の研究をしっかりと勉強するところ。熊楠の勉強法は、図書館に行って自分の好きな文献を抜き書きすること。さまざまな分野にわたってこれを徹底的に行う。

二つ目、本を読むだけでなく、森や川に出かけて、植物等を採取しているところ。いわゆる実地にデータを集めて分析する「実証研究」である。

三つ目、博物学、人類学、粘菌学、地誌、旅行記、動物学等、さまざまな分野を研究し、それらを「統合」しているところ。また、東洋の考え方を西洋の学問の観点から分析するなど、両者を融合するのが熊楠のアプローチだったようだ。

四つ目、自分の研究成果を『ネイチャー』等の学術雑誌にどんどん投稿しているところ。独学だと自己満足に陥りがちだが、熊楠は世界の一流雑誌を通して、自分の発見したことを世の中に広めている。

先人から学びながら、自らの足でデータを集め、自分の頭で考えて、独創的な知見を生み出す熊楠の姿勢に、優れた研究者のモデルをみた。
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