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『羊をめぐる冒険』(読書メモ)

村上春樹『羊をめぐる冒険(上・下)』講談社文庫

『風の歌を聴け』が良かったので、青春三部作の完結編と呼ばれている本書を読んだ。

大人になった僕が結婚し、離婚してから、耳のモデルをしている彼女と一緒に「なぞの羊」を探す物語。友人の「鼠」も出てくる。今まで読んだ『ノルウェイの森』や『風の歌を聴け』と違って、ミステリーやファンタジーの要素が入っているのが意外だった。

ただ、いつも冷静で淡々と生きている「僕」は変わらない。

印象に残ったのは、耳のモデルをしている彼女との会話(上巻, p.77)。

「あなたは、あなたが自分で考えているよりずっと素敵よ」
「なぜ僕はそんな風に考えるんだろう?」と僕は質問してみた。
それはあなたが自分自身の半分でしか生きてないからよ」と彼女はあっさりと言った。
「あとの半分はまだどこかで手つかずで残っているの」
「ふうん」と僕は言った。

「半分しか生きていない」という表現がすごい。よく考えてみると、自分をフルに生きている人は少なくて、部分的にしか自分を生きていない人のほうが多いのかもしれない。

村上春樹の小説は、ストーリーよりも、描写や会話のディテールに魅力があると思った。




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