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遊び感覚で原理を学ぶ

今の若者は、すぐに役立つ知識や技術には関心を示すが、基礎理論など、一見遠回りになるようなことには手を出さない傾向があるという。思考が短期化しているのかもしれない。これは世の風潮とも一致している。

自動車の変速機製造メーカーであるジヤトコでは、ゲーム感覚モノ作りの原理を学べる研修プログラムを開発した。たとえば、空き缶とコイルを使ってモーターが回転する原理を教えたり、金属加工技術を使って昆虫やアニメキャラクターの絵を描かせるといった課題だ。

ふだんの変速機の生産ラインでは、そうした技術や知識は不要らしい。しかし、いざ機械が故障した場合に、機械の原理を知っているかどうかで対応時間も異なる。

以前、ITプロジェクトマネジャーの方にインタビューしたときにも同じようなことをおっしゃっていた。システム開発をゼロから作った昔の技術者とちがって、今の人達はシステムの中身を知らない傾向がある。何も起こらなければ問題ないのだが、いざトラブルになると、システムの原理を知らない人は、知っている人にくらべて、トラブル対処に数倍の時間がかかるという。

モノづくりに限らず、営業でも人事でも「原理」を知ることで、仕事に深みが出ると思う(そもそも、原理を明らかにすることも大変そうだが)。

われわれ日本人は「原理は苦しい修行を通して学ぶもの」とつい考えてしまいがちである。ジヤトコの優れた点は、遊び感覚、ゲーム感覚で「原理」を習得させようとしているところ。楽しみながら原理を学べば、そのうち「どうなっているんだろう」という疑問がわき、自ら探索するようになるのかもしれない。

出所:日経産業新聞2008.5.20
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