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『こうしたら病院はよくなった!』

武弘道著『こうしたら病院はよくなった!』(中央経済社)を読んだ。

武氏は、埼玉県病院事業管理者。「病院事業管理者」とは、病院経営に関するすべての権限を委譲された人のこと。赤字経営だった埼玉県立4病院を3年間で黒字に転換させた彼は「埼玉のゴーン」と呼ばれている。

武氏の変革で特徴的だと思ったのは次の3点。

第1に、類似病院の経営状態を数値で徹底比較し、それをベースに意思決定しているところ(ちなみに、データは「地方公営企業年鑑」から入手している)。例えば、医師、看護師、コメディカル、事務、外部委託にかかる経費の割合を出すと、経営状態の悪い病院と良い病院の差が明確になる。そして、良い病院の経費比率に近づくように、改善を行うのである。

第2に、ムダな経費は削ると同時に、医療の質を高めるために必要な投資を惜しまないところ。変革の3年間では、共同購入や入札制度によって経費を徹底的に削る一方、医療機器購入費は増えている。ただケチればよいというものではなく、使うところには使う姿勢が大切だ。

第3に、職員の意識改革のためにコミュニケーションの機会を増やしているところ。変革の趣旨を説明する会を定期的に開き、職員との意見交換の場を設けている。また、看護部長を副院長にし、医師にボーナス査定制度を導入するなど、モチベーションアップの対策もしっかり行っている。

印象に残ったのは「経営の良い病院は一様に似ているが、経営の悪い病院はそれぞれ異なった要因で経営が悪い」という言葉。武氏の変革手法は病院に限らず、他の組織にも適用できると感じた。

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