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マーケティングの学会

僕は、組織論と心理学とマーケティングの境界領域を研究しているため、それぞれの学会に参加することが多い。今、AMA(American Marketing Association)という米国のマーケティング学会に出席するためにテキサスのオースティンに来ている。初日の土曜日に発表だったため、日曜、月曜とリラックスして発表を聞くことができた。

マーケティングでは、サービス・マネジメントに関心がある。僕の発表テーマは「サービス風土とパーソナリティが、個人の顧客志向に与える影響」である。研究対象は、看護師と旅行代理店の(店頭)販売員だ。要は、彼らの顧客志向(顧客を大事にしたいと思う気持ち)が、彼らの性格によって決まるのか、それとも職場の風土に左右されるのかを明らかにしようとした研究である。

分析の結果、看護師も販売員も次の点で共通していた。
1)風土よりも性格の方が強く影響していた
2)性格の中では、「他人に共感できる特性」と「物事を正確にこなす特性」が大切になる

違っていた のは次の点
1)販売員は「情緒の安定」、看護師は「創造性」が必要となる
2)看護師は、風土の影響をあまり受けない

こうした違いが生じるのは、彼らの仕事の性質とスキルの違いによると思われる。看護師は、いろいろなアクシデントに臨機応変に対応しなければいけないので創造性が必要となり、高度な知識・スキルを持つ専門家であるため、周りの影響を受けにくいのではないか、と考察した。

看護師の顧客志向はサービス風土に影響されにくいという結果が出たが、別の分析をしてみると病院への愛着に強く関係していることがわかった。つまり、職場がサービスを重視するかどうかは、看護師が患者さんを大切にするかどうかにはあまり影響しないが、病院で働き続けたいという気持ちを高める効果があるのだ。

フロアからはいろいろ質問やコメントをもらった。
・看護師にも「情緒の安定」が必要じゃないか?
・パーソナリティにそんなに説明力があったとは驚きだ
・サービス風土には優秀な看護師を惹きつける機能があるのだろう
・サービス風土の影響力が低いのは、日本の文化がそもそもサービス重視だからじゃないか?
などなど。
やはり、発表すると視点も広がって、一人で考えているよりいいなと感じた。

2日目と3日目の発表で印象に残ったのは、「サービス・ドミナント・ロジック」「サーブクウォル、その後の20年」のセッション。やや抽象的な議論だった気もするが、現状が確認できたのがよかった。

ちなみに、日曜日のオースティンはマラソン大会が開かれていたため、街がお祭り気分で、みんな楽しそうだった。
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