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 『明るい病院改革』

麻生泰著『明るい病院改革:誰も泣かせない新しい経営』(日本経済新聞社)を読んだ。

著者は、政治家・麻生太郎氏の弟で、麻生ラファージュセメント株式会社の社長だ。麻生グループの系列である麻生飯塚病院の改革をもとに書かれたこの本は、病院改革の一例を知る上で有益だと思った。医者ではなく、企業経営者の視点から書かれているところも特徴とえいる。

ただ、読んでいる途中は、期待した内容とは違い、少々がっかりした。なぜなら、日本の医療政策に対する提言が数多く盛り込まれて、著者の熱い思いは伝わってくるのだが、具体的な病院改革の方法という意味では、他病院との違いがよくわからなかったからだ。

でも、よく考えると、お手軽な処方箋を期待する方が甘いのかもしれないと思った。よい病院を作るためには、地道な改革の積み重ねが必要なのだろう。その意味では、リアルな現状が書かれているといえる。参考になったのは、次の2点。

第1に、病院におけるTQMの導入についてイメージを与えてくれる。飯塚病院は、早稲田大学で経営工学を専攻している棟近教授と共同研究をしているのだが、先生からの寄稿文や巻末の事例紹介が参考になった。

第2に、共同購入、請求漏れ防止、外注化における留意点など、経営者ならではの視点が盛り込まれている。外注化する場合には、ノウハウの蓄積とコスト低減のバランスを考えなければならない点が強調されている。安易な外注化を戒めているのは前回紹介した武氏の著書と共通するところだ。逆に、自前を貫くことが、他病院から業務受託するビジネスチャンスになることも提言している。

本書を読んで感じたことは、病院マネジメント高度化の鍵は事務スタッフが握っているということだ。これは、私が行っている病院の事例研究を通しても感じたこと。コストを低減しつつ、医師が医療に集中し、看護師が現場で良いケアを実践できるようなサービス・マネジメント・システムを整えるのが事務スタッフの責任になる。
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