ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第51回 Finca La Emperatriz @「キャッチ The 生産者」

2009-07-26 11:09:22 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2008年10月21日)

第51回  Eduardo Hernaiz  <Finca La Emperatriz>

スペインを代表するワイン生産地 リオハ から、
フィンカ・ラ・エンペラトリスエドゥアルド・エルナイスさんが来日しました。




<Eduardo Hernaiz> (エドゥアルド・エルナイス)
フィンカ・ラ・エンペラトリスの若きオーナー。



歴史あるワイン生産地 リオハ
                      ―Finca La Emperatriz―

スペインワインといえば、昔も今もやはり “リオハ” が真っ先に浮かぶ人が多いと思います。しかし、近年メキメキと頭角を現してきた新しい生産地と比べると、ちょっと古臭くて洗練さに欠けるイメージもあるかもしれません。

そんなリオハをもう一度おさらいしてみると・・・

リオハは 55,000ha とスペインでも大きなワイン生産地で、
リオハ・アルタ、 リオハ・アラベサ、 リオハ・バハ の3つのエリアに分かれています。



エドゥアルドさんの指しているところがリオハ

アルタとアラベサでは、北側のカンタブリア山脈が湿った北風を遮ってくれるので、温暖な大陸性気候になります。
エブロ川下流のバハでは、地中海からの湿った暑い風が川を遡ってくるため、暑く乾燥した準地中海気候になります。

ブドウ品種にも特徴があり、
アルタはテンプラニーリョが多く、バハはガルナッチャがよく育ちます。

今回紹介する『フィンカ・ラ・エンペラトリス』リオハ・アルタ のバニョス・デ・リオハ(“リオハのお風呂場”の意味、500m先にオハ川がある)に位置するワイナリーです。



Q.ワイナリー名『ラ・エンペラトリス』の由来は?
A.ナポレオン3世(1808~1873)の皇后で、フランス王妃モンティジョ・デ・マリアユージニアが所有していた「ラ・エンペラトリス」という畑名から来ています。彼女は当時かなりの権力を持っていた女性の1人です。彼女はスペイン貴族の娘でした。

畑の広さは101haあり、リオハでは1ha単位の小さい畑が多い中、これほど大きなまとまった畑は珍しく、リオハ・アルタの単一畑では最大です。権力者が持っていたために、まとまった畑として残りました。我々はここを1996年に取得しました。




Q.「ラ・エンペラトリス」の畑の特徴は?
A.標高570mに位置し、小石や握りこぶし大の石がゴロゴロしている畑です。リオハでも非常に貧しい土壌のひとつで、他の穀物や作物には貧しすぎるため、昔からブドウが栽培されてきました。
そのためブドウは熟しにくいのですが、よく熟すと素晴らしいワインになります。
また、石が多いので水はけがよく、石が日中に蓄えた熱を夜間に放出して温度調整を行うという良い面もあります。


Q.全社でどのくらいの畑を所有していますか?
A.自社畑は150haです。しかし、畑の広さ、ブドウの樹齢の高さ、ブドウの品質はラ・エンペラトリスが突出して優れています。
ラ・エンペラトリスの3/4が株仕立てで樹齢は約45年です。


Q.フィンカ・ラ・エンペラトリスの特徴は?
A.リオハの近代化は1870年代頃から行われてきました。フィロキセラ禍でボルドーから逃げてきた人がリオハにやってきたため、アロの街に大きなワインメーカーが次々と誕生していきましたが、大規模ワイナリーは農家からブドウを買ってワインづくりをしていました。当時は小さなワイナリーはなく、また、アルタもバハもアラベサの区別もなく、全部いっしょくたにしてワインをつくっていたのです。

しかし、我々は違います。リオハ・アルタで最も大きな1区画の畑を持っていますので、100%自社畑のブドウでつくろう、という考えの下、ワインづくりを行っています


Q.ファーストヴィンテージは?
A.我々ファミリーがラ・エンペラトリスの畑を1996年に取得後、畑に手を入れながら2000年にワイナリーを設立しました。
よって、我々の最初のワインのヴィンテージはです。

畑からワイナリーまでブドウを運ぶのに便利なように、ワイナリーはラ・エンペラトリスの畑の真ん中に建てました。最新設備を導入し、発酵から熟成までの過程をすべてコントロールしています。


Q.リオハではアメリカンオーク樽が伝統的ということですが?
A.発酵はステンレスタンクで行いますが、熟成はオーク樽を用います。寿命が長く複雑性のあるワインをめざしているので、樽は欠かせません。
当社では、フレンチとアメリカンの両方の樽を使い分けています。
オークの種類を探っている段階で、毎年、新しい種類の樽を試し、ローストの加減、熟成期間も変え、試行錯誤しています。


Q.あなたの哲学は?
A.ブドウの果実の持つクオリティを最大限に引き出し、リオハの伝統を尊重しながら、素晴らしいラ・エンペラトリスの畑の個性を表現することです。

味わいとしては、やわらかでまろやかな、カドのないタンニンを求め、口の中で長く味わいの残るワインをめざしています。


<テイスティングしたワイン>


Finca La Emperatriz Viura 2006 (白)

きゅっと引き締まった果実味と、ちょっとビターな余韻が残る、心地良い白ワインです。

「アロマを保つイキイキとしたワインを目指しています。ビウラはシャルドネよりも香りが弱めですが、ボディがあり、粘性のあるワインに仕上げることができます。また、これは樹齢50年のビウラ100%でつくっているので、樹齢の高さから来るコクもあると思います」 (エドゥアルドさん)



Finca La Emperatriz Rosato 2007 (ロゼ)

ロゼにしては濃い色!淡めのルビー色が実に美しいロゼで、香りも豊かです。

よい赤ワインをつくることを目的とし、赤ワインとして醸造している途中で10%抜き取った果汁からつくったロゼです。ブドウを24時間ステンレスタンクに入れて色素を抽出しています。07年はテンプラニーリョ80%、ガルナッチャ20%ですが、比率は年によって変えます。
イチゴ、バナナなどのフレッシュな香りが楽しめるワインで、フルーツの香りを大事にしながらつくりました。このロゼは、ワインを飲み始めた人に飲んで欲しいですね。また、カジュアルシチュエーションにもピッタリです」(エドゥアルドさん)



Finca La Emperatriz Tempranillo 2005 (赤)

非常にモダンできれいな香りが華やかで、赤なのにスッキリ飲めるタイプです。

テンプラニーリョ100%で、樹齢10年ほどの若木からつくっています。フルーツ香を生かすためにやや早めに収穫し、ステンレスタンクで発酵させます。
全く樽に入れていないので、飲みやすい味わいの赤ワインに仕上がっていると思いますし、若飲みワインとして、3年くらいで飲み切っていただけるといいと思います。飲む時の温度は、やや低めがオススメです」(エドゥアルドさん)



Finca La Emperatriz Crianza 2003 (赤)

香りがとてもよく、口にすると旨味もあり、非常にバランスが取れているワインです。

クリアンサは熟成期間が最24カ月必要で、うち6カ月の樽熟成が必要ですが、エンペラトリスのクリアンサは、14カ月の樽熟成後、12カ月瓶熟成を行っています(合計36カ月)。

「これ以降が我々のメイン商品で、最も売っているものです。クリアンサはテンプラニーリョ95%とガルナッチャ5%で、70%は若木のブドウを、30%は樹齢50年の古木のブドウを使っています。20の違った畑から収穫したブドウをそれぞれ発酵させ、樽にも別々に入れて熟成させます。樽は使用済みアメリカンオークです。
フルーツ香が残っていますが、複雑味があり、バニラの香りが奥底からしてきますので、ある程度ワインを飲みつけている人に飲んでほしいワインです」 (エドゥアルドさん)

Finca La Emperatriz Reserva 2001 (赤)
クリアンサよりもさらに素晴らしい香りで、旨味も凝縮され、とてもきれいな味わいのワイン。よい年のみリリース。

レセルバは最低36カ月の熟成、うち12カ月は樽での熟成が必要ですが、このレセルバは、樽熟24カ月後、22カ月の瓶熟成を行っています(合計46カ月)。

「テンプラニーリョ90%、ガルナッチャ5%、グラシアーノ2.5%、ビウラ2.5%で、テンプラニーリョは50年樹齢のものを100%使っています。生産量を抑え、コンセントレートされたワインづくりを目指しています。

熟した感じのワインをつくるため、マセレーションは3週間かけて行います。発酵はステンレスタンクで行い、熟成樽は50%が新樽で、50%が使用済み樽です。80%がアメリカンオーク樽、20%がフレンチオーク樽ですが、アメリカンを多めにして、ややクラシカルなスタイルにしています。
複雑味があり、スパイス、ミネラルを感じさせるワインです。これは大きなグラスで、また、料理と合わせて飲んでほしいですね」 (エドゥアルドさん)



Finca La Emperatriz Terruno 2005 (赤)

色合いが濃厚ですが若々しく、口にすると、フレッシュな果実味を感じます。

「若い樹をどうやってよいワインにしていくか?を考えてつくった、実験的ワインです。垣根方式で、陽をできるだけ浴びさせようと、実験的区画で栽培しています。テンプラニーリョ100%です。最も現代的なリオハを目指し、色々試し、いいものだけをテルーニョにしています。ステンレスタンクで発酵後、11月に樽に入れますが、すべてフレンチオークで、9~14カ月樽熟成させます。熟した果物の香りが特徴で、口の中でパワフルさを感します」(エドゥアルドさん)


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インタビューを終えて


フィンカ・ラ・エンペラトリス はまだ若いワイナリーですが、リオハの伝統をそこかしこに残しながらも、現代で洗練されたワインづくりを行っています。




エドゥアルドさんは、一見すると、“タレ目がやさしそうなお兄さん”ですが、話し始めるとすぐにキリッとしたオーナーの顔になりました。

非常に熱心で、ワインづくりに熱い情熱を注いでいるのが伝わってきます。

樹齢の高い、非常にまとまった“ラ・エンペラトリス”の区画を持ちながらも、それに甘えることなく、若い樹の可能性を引き出そうと努力している姿に好感を持ちました。
今後も見守っていきたいワイナリーです。



そうそう、エドゥアルドさんから、

「2001年はリオハのエクセレントイヤーでした。2004、2005年も良い年でしたよ」

という情報をいただきました。

今回試飲した中で、レセルバが2001年、テンプラニーリョとテルーニョが2005年。
なるほど、飲んで納得です。


(取材協力)ミリオン商事株式会社


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