ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

2021年の注目ワインはローカル品種ーチリワインの例

2021-01-05 21:34:05 | ワイン&酒

2020年は新型ウイルス感染拡大の影響を受け、プロ向けのワイン試飲会の開催が中止になったものが多かったですが、感染状況が落ち着いてきた秋に、来場者を限定したチリワイン試飲会が、都内の在日チリ大使館にて開催されました。

 

チリワインというと、コストパフォーマンスに優れたワインの宝庫なわけですが、コスパ以外に注目すべき点がいくつもあります。

その筆頭は、なんといっても、地場品種ブドウのワインです。

 

今回紹介されたのは、日本未輸入ワインばかりでした。

 

 

その中に、チリならではのブドウ品種やブレンドのワインがいくつかありました。

 

マイナーだけどチリらしいブドウ品種といえば、「パイス」(Pais)です。

スペインからキリスト教伝来用のワインのためのブドウとして中米に渡った品種で、チリでは「パイス」、アルゼンチンでは「クリオージャ」、アメリカでは「ミッション」と呼ばれています。

チリではマウレ・ヴァレーやビオビオ・ヴァレーで広まりましたが、凝縮感のあるワインにならないことから引き抜かれ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種に植え替えられてきました。

 

が、近年は、この伝統品種を守ろう!という動きも出ていました。

また、元々パイスを栽培している昔ながらの小さな生産者もあり、彼らのブドウを使ったワインが登場しています。

パイスは房が大きな品種で、乾燥に強いため、灌漑が不要という特徴があります。

チリには樹齢の高い木があり、100年どころか樹齢200年という木も存在するそうですよ。

 

左から)

BAGUAL PAÍS 2017 Vina Viejo Encino(イタタ・ヴァレー)

FURTIVO PAÍS 2017 Vina Aynco(ビオビオ・ヴァレー)

TRANCOYÁN PAÍS 2017 Vina Los Quiscos(イタタ・ヴァレー)

 

ビオビオはチリで最も南にある冷涼産地として知られていますが、イタタはビオビオの北に隣接した産地になります。

上3つのうち、FURTIVOはパイス80%とサンソー20%のブレンドで、ほか2つがパイス100%になります。

 

BAGUALは2016年からボトリングを始め、この2017年が2ヴィンテージめ。

4代続くワイナリーで、パイスの樹齢はわかりませんが、花崗岩土壌の古い畑で、ゴブレ仕立てで栽培されています。昼夜の温度差が大きく、酸がしっかり残り、フレッシュな味わい。アルコール度数は12.5%。

 

FURTIVOのパイスは樹齢200年

ボジョレー・ヌーヴォーで知られているマセラシオン・カルボニック(ブドウの破砕なしで密閉タンク内発酵)をSO2なしで行ない、発酵は天然酵母のみ、ノンフィルターというワインです。スモーキーさとチェリーっぽさがあり、アルコール度数は12.5%。

 

TRANCOYÁNのパイスの樹齢は90年で、オーガニックで栽培されています。こちらも、土壌は花崗岩で、ゴブレ仕立て。

果実味が強く、スパイシーなタイプですが、アルコール度数は12.3%と低め。

 

パイスのワインは重たくならず、軽快でチャーミングなスタイルの傾向でしょうか。

少し冷やし気味にして飲むと、赤いベリー系のみずみずしい果実味が楽しめそうです。

 

KORTA SELECCIÓN ESPECIAL GROSSE MÉRILLE 2019

 

はじめて飲んだ品種「GROSSE MÉRILLE グロッセ・メリル」100%。

 

別名は「Verdot」。晩熟タイプの黒ブドウです。

フランス品種ですが、フランスでは20世紀に姿を消しています。

現在、フランスのボルドー南東部、ペリゴール地方、その東のSaint-Rabierなどでわずかに栽培されているMérilleと関係があるのでは?と言われる超マイナー品種で、チリでもマイナーです。

KORTAワイナリーでも、この品種単独でボトリングしたのは初だそうです。

産地は、ロントゥエ・ヴァレー内のサグラダファミリア・ヴァレー。

 

見てわかるように、赤ワインですが、色がかなり薄いです。

薔薇の花びら、ゼラニウム、白い花など、フローラルなアロマが豊かにあり、味わいはライト。アルコール度数は13%。

ガツンと濃厚な料理に合わせるというよりは、ワインの繊細さを探るように飲みたいかも。私が合わせるならチーズかな。

 

 

 

KORTA Winesには他にも魅力的なワインがあり、この白ワイン「IRUNE 2019」は、ヴィオニエ51%、ソーヴィニヨン・ブラン20%、リースリング19%というユニークなブレンドです。

アロマティックな香りはもちろん、やさしくピュアな味わいが魅力的でした。

チリの白ワインというと、どうしても単独品種のシャルドネやソービニヨン・ブランに落ち着いてしまいがちですが、オリジナルブレンドは、大きなカギになってくると思います。

 

 

「K42 CABERNET SAUVIGNON 2018」もKORTA Winesで、カベルネ・ソーヴィニヨン100%の赤ワインですが、価格がとにかく素晴らしい!

ここには書けませんが、この価格ならまとめ買い!と思ったほど。

重たすぎず、非常にチャーミングで飲みやすいカベルネで、ハウスワインとしてストックしておくのにピッタリだと思います。

力の入ったチリのカベルネは多いですが、ほどよく肩の力が抜けたカベルネで、もちろん品質は欠かせないワインとして、このカベルネは推したいです。

 

 

この2つもぜひ日本に輸入してほしいわぁ~

 

SAVIA PINOT NOIR 2018 Vina Aynco(マレコ・ヴァレー)

TRES C CINSAULT 2019 Vina TRES C(イタタ・ヴァレー)

 

ピノ・ノワールは、パイスで紹介した生産者で、産地はビオビオのさらに南のMalleco Valleyです。

ビオビオより南ということは、さらに冷涼な産地ということ。

チリワインも産地がどんどん広がっています。

畑は海岸山脈の麓にあり、土壌は花崗岩とクレイ。ブドウの樹齢は25年。

 

味わいは、ブルゴーニュのピノ・ノワールと全然ちがいます。

冷涼な土地らしく、果実味は繊細でピュア。還元臭が少しあり、鉱物感もありますが、うまみがしっかりあります。

 

サンソーは、樹齢70年以上のブドウ100%。

クレイローム土壌に、ゴブレ仕立てで植えられています。

サンソーといえば、フランス南部というイメージですが、チリにもあり、しかもこんな古い樹齢のものがあるとは驚きです。

 

色は意外にも暗く濃いです。チェリーリキュール、ワイルドベリーの風味を感じます。ていねいに飲みたくなるワインでした。アルコール度数は13.8%。

 

 

以上、ひとまず一部のワインをピックアップしましたが、日本にはまだ入ってきていない興味深いチリワインがたくさんあるのね…というのが正直な感想です。

チリはかつて訪問したことがありますが、とにかく広い(というか、縦に長い!)というイメージがあり、多様な生産者がいることを実感しました。

日本に入ってきているチリワインは、実はまだまだごく一部です。

チリワインの奥深さを、もっと探るべし!です

 


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