2013年3月27~29日に東京で開催された 「第14回世界最優秀ソムリエコンクール」 の決勝が、29日に東京国際フォーラムにて公開で行われました。
同コンクールが東京で行われるのは、1995年に田崎真也さんが優勝して以来です。18年ぶりのこととあって、広いホールを埋め尽くす観客が、新しいソムリエチャンピオンの誕生を見守りました。
結果はすでに報告しましたので、今回は公開決勝の内容を紹介したいと思います。
決勝では、3名が1人ずつ順番にステージに登場し、実技や設問をこなしていきます。
登場は、ベルギーの Mr.Aristide Spies(アリスティード・シュピース)、カナダの Ms.Veronique Rivest(ヴェロニク・リヴェスト)、スイスの Mr.Paolo Basso(パオロ・バッソ)の順でした。
※女性の決勝進出は初
場面1
カウンターで3人の客へのシャンパーニュを5分以内にサービスする
用意されているのは、モエ・エ・シャンドンの2003年、2002年、1995年。
1人は酸味がイキイキとしてミネラル感のあるシャルドネのセパージュのものを、
1人はリッチで芳醇で果実味が豊かなものを、
1人はモカやキノコ、ヘーゼルナッツなどのフレーバーのあるものを希望。
どの客にどれをサービスするかは、皆すぐにわかり(2002、2003、1995の順)、後は時間との闘いです。パオロの流れるような手早いサービスはさすが!と思わせました。
※田崎真也さん優勝の年ということで1995年が用意されました
場面2
コース料理(1人20,000円)を注文したグループ客に5種のワインを提案する。
ただし、白ワインは2種まで。
“天ぷら”(キングクラブ、アスパラガス)が登場するのが、さすが日本での大会。
ヴェロニクは前の料理から通してカリフォルニアのロシアン・リヴァーのピノ・ノワール。パオロは、イタリアのフリウリのトカイ・フリウラーノ。フリウラーノの方がピタッとはまると思いますが、ピノ・ノワールはチャレンジですね。
場面3
仏ボルドー、サンテミリオンの赤ワイン、シャトー・ラ・ガフリエール1985(だったと記憶)をデキャンタし、6分以内に6人の客にサービスする。
とにかく手際のよさ、スピードが大事。
パオロはちょっとせわしい感がありましたが、早い、早い!
グラスを置くのも、ワインを注ぐのも、レディファースト、男性は年配の方から。
ヴェロニクはコルクが途中で折れそうになりましたが、無事に抜けた時には会場から拍手が起きました。また、テイスティンググラスに注ぐ際には手が震え、そこで時間切れとなりましたが、その際にも拍手が起きました。彼女には観客を味方につける親しみやすさがあり、応援したくなる魅力があります。
場面4
ワインリストの間違い探し
これはかなり難解!国を見ても、伝統的生産国はスペイン(しかもチャコリ)、ポルトガル、オーストリアくらいで、あとはウルグアイ、ワシントン州、南ア、中国、ニューヨーク州、タイ、メキシコ。
ここまで覚えないと、世界の舞台では通用しないということ。厳しい!
場面5
1】4種のワイン(白1、赤3)のブラインドテイスティングを12分で行ない、品種、産地、年号を口頭で言い当てる。
2】6種のべバレッジのブラインドテイスティングを3分で行い、回答シートに記入する。
回答(上が2】で、下が1】)
4種のワインを見ると、インドはスーラのシュナン・ブラン、イスラエルはヤルデンのピノ・ノワールが入っています。どちらも注目されている産地、生産者で、日本でもおなじみです。まさか世界大会に出るとは!
ヴェロニクは、最初、白をシュナンとしたのに、後でグリューナ・フェルトリナーに変更しました。アリスティードはリースリングか?パオロは日本の甲州と判断。
赤に関しては3人ともガタガタで、なぜかネビオロやサンジョヴェーゼが多く挙がりました。が、アリスティードは4番目の赤ワインを正解である“ボーヌ 1級 2005”に最も近い“シャンボール・ミュジニー2006”と判断しました。
6種のベバレッジも超難解。日本のトマトのリキュールだなんて、わかる方が普通じゃないでしょう。3番目のピコンをアリスティードはズバリ当てていました。
場面6
スクリーンに順々に映し出される15人の人物を口頭で言い当てる。
これはマニアック!でも、つくり手の顔を知ることも大事なこと。ソムリエには幅広い知識が求められているのだということが、この出題からわかります。
以上をこなすのに、1人あたり約45分かかりました。見る方も緊張します。
各選手は長い時間、連続して緊張にさらされるわけですが、その緊張を全く感じさせなかったのが、優勝した パオロ。彼は前回のチリ大会(2010年)で2位。あと一歩で優勝を逃しましたが、それがいい経験となったのでしょうか。今回は堂々たる戦いっぷりでした。
彼の優勝を一番喜んだのは、チリ大会優勝者 Gerard Basset(UK)(右)かもしれません
流れるような接客がパオロの持ち味だと思いますが、早すぎてせわしなさを感じる時があります。早口すぎると聞き取れなかったり、客側がせかされているように感じます。多すぎない言葉で簡潔に説明してくれると、こちらもゆったりとした気分でいられると思います。
2位になったヴェロニクは、手際の良さの点ではパオロに一歩及ばないものの、彼女にサービスされると心地よいなぁ~、と感じさせてくれる点があります。人間味があり、あたたかみ、やさしさがあり、彼女にまかせていいよね、そんなふうに感じました。Humanityが今後も彼女の大きな武器になるでしょう。女性の決勝進出は初!準優勝おめでとう!
3位、31歳のアリスティードは、頼りなさ、ぎこちなさ、硬さを随所に感じました。真面目な好青年で、ていねいな態度にも好感が持てますが、他の2人と比べると、若いゆえの頼りなさが出ていたと思います。でも、彼にはまだまだこれからチャンスがいくらでもあります。でも、世界3位はスゴイ!
それにしても、世界最優秀ソムリエコンクールを東京で見られたのは素晴らしいことでした。ソムリエだけではなく、ワインにかかわる仕事をしている人にとって、貴重な経験となったと思います。ソムリエの中には、次回は自分が!と思った方もいるかもしれませんね。今回の大会が、ワイン業界にとっていい刺激になったのは間違いありません。
戦いの後のパオロ・バッソ
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【参考】
セミファイナル (準決勝)のブラインドリスト
クオーターファイナル (準々決勝)のブラインドリスト
同コンクールが東京で行われるのは、1995年に田崎真也さんが優勝して以来です。18年ぶりのこととあって、広いホールを埋め尽くす観客が、新しいソムリエチャンピオンの誕生を見守りました。
結果はすでに報告しましたので、今回は公開決勝の内容を紹介したいと思います。
決勝では、3名が1人ずつ順番にステージに登場し、実技や設問をこなしていきます。
登場は、ベルギーの Mr.Aristide Spies(アリスティード・シュピース)、カナダの Ms.Veronique Rivest(ヴェロニク・リヴェスト)、スイスの Mr.Paolo Basso(パオロ・バッソ)の順でした。
※女性の決勝進出は初
場面1
カウンターで3人の客へのシャンパーニュを5分以内にサービスする
用意されているのは、モエ・エ・シャンドンの2003年、2002年、1995年。
1人は酸味がイキイキとしてミネラル感のあるシャルドネのセパージュのものを、
1人はリッチで芳醇で果実味が豊かなものを、
1人はモカやキノコ、ヘーゼルナッツなどのフレーバーのあるものを希望。
どの客にどれをサービスするかは、皆すぐにわかり(2002、2003、1995の順)、後は時間との闘いです。パオロの流れるような手早いサービスはさすが!と思わせました。
※田崎真也さん優勝の年ということで1995年が用意されました
場面2
コース料理(1人20,000円)を注文したグループ客に5種のワインを提案する。
ただし、白ワインは2種まで。
“天ぷら”(キングクラブ、アスパラガス)が登場するのが、さすが日本での大会。
ヴェロニクは前の料理から通してカリフォルニアのロシアン・リヴァーのピノ・ノワール。パオロは、イタリアのフリウリのトカイ・フリウラーノ。フリウラーノの方がピタッとはまると思いますが、ピノ・ノワールはチャレンジですね。
場面3
仏ボルドー、サンテミリオンの赤ワイン、シャトー・ラ・ガフリエール1985(だったと記憶)をデキャンタし、6分以内に6人の客にサービスする。
とにかく手際のよさ、スピードが大事。
パオロはちょっとせわしい感がありましたが、早い、早い!
グラスを置くのも、ワインを注ぐのも、レディファースト、男性は年配の方から。
ヴェロニクはコルクが途中で折れそうになりましたが、無事に抜けた時には会場から拍手が起きました。また、テイスティンググラスに注ぐ際には手が震え、そこで時間切れとなりましたが、その際にも拍手が起きました。彼女には観客を味方につける親しみやすさがあり、応援したくなる魅力があります。
場面4
ワインリストの間違い探し
これはかなり難解!国を見ても、伝統的生産国はスペイン(しかもチャコリ)、ポルトガル、オーストリアくらいで、あとはウルグアイ、ワシントン州、南ア、中国、ニューヨーク州、タイ、メキシコ。
ここまで覚えないと、世界の舞台では通用しないということ。厳しい!
場面5
1】4種のワイン(白1、赤3)のブラインドテイスティングを12分で行ない、品種、産地、年号を口頭で言い当てる。
2】6種のべバレッジのブラインドテイスティングを3分で行い、回答シートに記入する。
回答(上が2】で、下が1】)
4種のワインを見ると、インドはスーラのシュナン・ブラン、イスラエルはヤルデンのピノ・ノワールが入っています。どちらも注目されている産地、生産者で、日本でもおなじみです。まさか世界大会に出るとは!
ヴェロニクは、最初、白をシュナンとしたのに、後でグリューナ・フェルトリナーに変更しました。アリスティードはリースリングか?パオロは日本の甲州と判断。
赤に関しては3人ともガタガタで、なぜかネビオロやサンジョヴェーゼが多く挙がりました。が、アリスティードは4番目の赤ワインを正解である“ボーヌ 1級 2005”に最も近い“シャンボール・ミュジニー2006”と判断しました。
6種のベバレッジも超難解。日本のトマトのリキュールだなんて、わかる方が普通じゃないでしょう。3番目のピコンをアリスティードはズバリ当てていました。
場面6
スクリーンに順々に映し出される15人の人物を口頭で言い当てる。
これはマニアック!でも、つくり手の顔を知ることも大事なこと。ソムリエには幅広い知識が求められているのだということが、この出題からわかります。
以上をこなすのに、1人あたり約45分かかりました。見る方も緊張します。
各選手は長い時間、連続して緊張にさらされるわけですが、その緊張を全く感じさせなかったのが、優勝した パオロ。彼は前回のチリ大会(2010年)で2位。あと一歩で優勝を逃しましたが、それがいい経験となったのでしょうか。今回は堂々たる戦いっぷりでした。
彼の優勝を一番喜んだのは、チリ大会優勝者 Gerard Basset(UK)(右)かもしれません
流れるような接客がパオロの持ち味だと思いますが、早すぎてせわしなさを感じる時があります。早口すぎると聞き取れなかったり、客側がせかされているように感じます。多すぎない言葉で簡潔に説明してくれると、こちらもゆったりとした気分でいられると思います。
2位になったヴェロニクは、手際の良さの点ではパオロに一歩及ばないものの、彼女にサービスされると心地よいなぁ~、と感じさせてくれる点があります。人間味があり、あたたかみ、やさしさがあり、彼女にまかせていいよね、そんなふうに感じました。Humanityが今後も彼女の大きな武器になるでしょう。女性の決勝進出は初!準優勝おめでとう!
3位、31歳のアリスティードは、頼りなさ、ぎこちなさ、硬さを随所に感じました。真面目な好青年で、ていねいな態度にも好感が持てますが、他の2人と比べると、若いゆえの頼りなさが出ていたと思います。でも、彼にはまだまだこれからチャンスがいくらでもあります。でも、世界3位はスゴイ!
それにしても、世界最優秀ソムリエコンクールを東京で見られたのは素晴らしいことでした。ソムリエだけではなく、ワインにかかわる仕事をしている人にとって、貴重な経験となったと思います。ソムリエの中には、次回は自分が!と思った方もいるかもしれませんね。今回の大会が、ワイン業界にとっていい刺激になったのは間違いありません。
戦いの後のパオロ・バッソ
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【参考】
セミファイナル (準決勝)のブラインドリスト
クオーターファイナル (準々決勝)のブラインドリスト
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