「月あかりの下で」~ある定時制高校の記憶~というドキュメンタリー。自主上映なので、会場は普通の会館の会議室のようなところ。見知った顔がチラホラ・・・
映画の舞台は埼玉県立浦和商業高校定時制のあるクラス。その入学から、四年後の卒業までの様子を、太田直子という女性が毎週通って撮影(演出・編集・ナレーションも)したもの。長い記録だけに、生徒達の変容が見られ、感動的。
入学式。生徒達にまつわりつくよどんだ空気、やる気のなさに、「なにこれ? 勉強しに来たんじゃないの?」と最初はびっくりした。
先生に向かってのタメ口はもちろん、机の上に寝ころんで無礼な応対をする姿に『私が教師なら、耐えられないなあ!』と思った・・・が、ここの担任は違った。どんな格好やヘアスタイルや、言葉遣いであっても、決してそれを教師目線で注意はしないのだ。
生徒の多くは中学時代に不登校になったり、家庭が抱える問題などでいっぱい傷ついたりしてきた。だから、先ずはどんな彼らでもそのまま受け入れ、学校を「居場所」にして貰いたいという信念からだとわかり、すごい!出来そうで出来ないことと感動した。
初めはクラスにも入らず、保健室でしばらく遊んでいくだけだった濃い化粧の女の子。でも、先生方は見捨てない・・・待つ。成績が悪くても、補習で何とか救おうとする。
一年後、彼女はクラスに溶け込んでいた。
そして、感動の卒業式。全員・・・とはいかないが、それでも沢山の生徒が笑顔で、それぞれの未来へ向かって進んでいった。
しかし、この定時制高校は今はない。統廃合が進むこの世界。
「ここがあったから立ち直れた」というOB達の必死の抵抗も空しく・・・
「学校」という教育的「居場所」が無かったら、増えるのは刑務所・・・誰かが言った。その通りだと思う。
この映画は、たくさんの賞を受けています。見たい方は3月20日エポック中原へ。
追伸:上映後、太田直子さんがいらして、色々話してくださいました。おかしかったのは、今度文部科学省で上映するそうで、彼女と映画に登場した担任が呼ばれているんですって。定時制高校を復活する?