年末に、今年の出来事を振り返ってみると・・・いいことって、あまりないですねえ。
悪いこと、不安なこと、困ったことなら山のようにありました!
1,自民党が圧勝して、やりたい放題の政治の世界。最悪だった特定秘密保護法の成立。この先にあるのは憲法改悪への道だけだなあ。
2,来年に迫る消費税増税。格差社会はどこまで進むのか・・・福祉は切り捨て。増える一方の高齢者は姥捨て山へ行かされるのかなあ。
3,原発が抱える諸問題は一向に解決しないのに、海外へ輸出する政府。福島の現実をちゃんと見てるのかしら!
4,学校現場を離れて10年。今の学校の「管理体制」のひどさに、教員の従順化、無責任化も一層進んでいるらしい。考えない教員、新聞すら取ってない教員は私達の頃にもちらほらいたけど・・・学習会やっても、集まるのは高齢教員か退職教員ばかりだしね!
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今年一番考えさせられたのは、雑誌「世界」2012年8月号の森達也氏のインタビュー記事。凄い内容です。(森さんの文は朝日新聞で見かけるたびに心に鋭く響く。彼の文からここに辿り着いた。)
題は「厳罰は有効な刑罰なのか・・・ノルウェー元法相に聞く」というもの。2011年にノルウェーで起きた連続テロ事件(32歳の男性がたった一人で77人を殺した)を国民や政府がどう捉えたかという、大変興味深いものだった。
それとは別に、私は「ルポ 虐待」(大阪2児置き去り死事件)を読んだとき、涙なしでは読めなかった。若い母親に殺された幼い姉弟を思うと、母親をひっぱたいてやりたい気持ちにさえなった。しかし、母親が懲役30年という判決を下されたと知り、その刑罰が果たしてふさわしいものかどうか疑問が残った。
ノルウェーの連続テロ事件の犯人は、「死刑」ではなかった。懲役21年。なぜならそれが最高刑だから。日本なら間違いなく死刑だったろう。
「事件後、死刑復活の世論が起きませんでしたか?」という問いに元法相は「私の友人や大勢の知り合いもこの事件の犠牲者でした。国民から過激な意見が出るかも知れないと思いました。しかし、遺族の反応は『愛と知恵』によって自分たちの熾烈な体験を克服しようというものでした。」と。
「事件後に国民的な議論になったのは、犯人を死刑にすべきとか、出来るだけ長く刑務所に閉じこめろなどの観点ではなく、裁判によって事件の構造を徹底的に解明することと、同じような事件が再び起きないようにすることについての考察」だったという。
このノルウェーの国民の反応から、森氏は「日本との圧倒的な違いの由来は何だろう、文化や民族性の違いだけでは説明できない、『罪と罰』の概念が根本から異なっているとしか思えない」と書いているが、私も同じである。
最後に、この法相が語った素晴らしい言葉を記す。私はこの言葉に出会えたことが今年の大きな収穫だった。
《殆どの犯罪には、三つの要因があります。まず、幼年期の愛情不足、次に成長時の教育の不足、そして現在の貧困。ならば、犯罪者にたいして社会が行うべきは苦しみを与えることではなく、その不足を補うことなのです。苦しみを与えることではありません。これまで彼らは、十分に苦しんできたのですから》
あの置き去り死事件の母親も、まさにこの三つの要因を持っていたと思う。