拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ギアチェンジ

2015-03-16 09:15:49 | 音楽
シュッツの宗教的合唱曲集の中にある「Die mit Traenen」、始まりは長い音符。これをゆっくり歌うのはつらいしだれる。途中から音符が混んでくる。これを早く歌うと歌詞がおざなりになる。と、いうことで、(練習のため)ギア・チェンジを図る。音符が混み始めるのはソプラノから。これを意識してゆっくり歌ってもらう。うまくいきました。途中でテンポが変わるのは現代の流行ではないだろう。早めのテンポで、さら~とやるのが今風。昔の指揮者は変幻自在でした。フルトヴェングラーもテンポが揺れるので有名(指揮棒も揺れたそうだ。「振ると面食らう」)。それをよく感じることができるのは、1947年録音の「運命」。これが車の運転だったら、アクセルふかせたり、急ブレーキかけたりで大忙し。少し時代を下ったところで、カール・ベーム。この方、楽譜通りきっちりやるのを信条としているそうで、その練習風景は、「音が高い、低い、長い、短い」といった技術的なことばかり。が、この方の晩年のベト7の冒頭(4分の4拍子)は驚く。管楽器が二分音符で長い音を吹くところはまるで2分の2のようにさら~。そこに弦楽器が16分音符で入ってくるところで急にテンポが半分になる。弦が抜けて管だけになるとまた早い。こんなんで許されるんだなー、と子供ながらに思った。クライバーのオペラもテンポが動く。有名なバラの騎士の三重唱、ゆったりと始まるが最後は超速。ここを歌った歌手が「クライバーは歌手が歌いやすいように『ギア・チャンジ』する」と言ってた。「冷たい手」(ボエーム)は逆。早く始まって途中で急ブレーキがかかる(「Vivo.」と「In poverta」の間)。息を飲むような素晴らしさ。カラヤンはテンポの揺れはあまりなかったかも。おっと、古い人がみんな揺れ揺れテンポなんて言うと怒られちゃう。トスカニーニはきっちりテンポでした。ちなみに、トスカニーニのボエームの録音では、「冷たい手」を振りながらうなってる大指揮者の声が聞かれます。