「秋耕」 野沢蓼州画 (待合に掛けました)
風炉と炉の時期に社中の皆さんと(稽古)茶事をしたいと思っていますが、なかなか思うようにいきません。
約1年ぶりの10月5日(土)に名残りの稽古茶事をしました。
今回のご亭主はKTさん、茶歴ウン十年のベテランさんですが、暁庵の社中に入ってから初めてウン十年ぶりの茶事に挑戦してくださいました。
半東は次期亭主候補のUさんにお願いしました。
お客様は5名様、正客SAさん、次客N氏、三客SYさん、四客HYさん、詰Kさんでした。
懐石と茶事の指導を暁庵一人ではとても無理・・・、それに懐石をお願いしている佐藤愛真さんが長期休暇中でした。
恐る恐る・・・東京教室のお仲間Yさまに懐石をお願いできないかしら?と相談しました。
「喜んでお引き受けします。よくぞ私に頼んでくださいました。
懐石のお勉強にもなりますし・・・お役に立ててうれしいです」
「あっ、ありがとうございます! 」
Yさまが快諾してくださって感激しました。これで何の心配もなく茶事が出来そうです。
10月5日頃に咲き始めたキンモクセイが今真っ盛りです
10月5日(土)が茶事の日と決まり、KTさんにテーマや趣向を考えていただきました。
10月なので名残りの茶事にすんなり決まり、8月終わりにお客様へご案内の手紙が出され、9月になると道具組が徐々に決まり、実際に使う茶道具を使って中置の稽古に励みました。
「先生、名残りの茶事なら家にあるやつれ風炉を使いませんか?」とN氏。
茶事の1週間前に篩った灰が入ったやつれ風炉が届きました。古浄味の写しのようです。
ちょうど1年前のY氏の「八ヶ岳山荘・名残りの茶事」で、藁灰を敷き詰めたやつれ風炉の好き風情を思い出しながら、
「名残りの茶事にふさわしいやつれ風炉だけど、灰形はどうしようかしら?」
(ご亭主KTさんから風炉と火入の灰形を頼まれていたので・・・)
「そうだわ! 鉄風炉なので掻き上げにしてみたらどうかしら?」
初めての挑戦です。
先ず二文字押切の灰形をつくり、前土器は赤。
教科書(「風炉の灰形」 山藤宗山著 淡交社)に従って、丹田にぐっと力を入れて、水屋火箸で中央の下から上へ灰を掻き上げて筋を作っていきます。
やり始めたら、あれこれ迷わないで一心に掻き上げていきました。
「二文字掻き上げ」と呼ばれる灰形が出来上がりました。
(不出来でございますが・・・毎回違うのが楽しかったです)
背の高い車軸釜(長野 新造)を合わせました
毎日1回3度作ってみましたが、最初が一番上手にできたように思います。
・・・雑念を入れる余裕がなく一心不乱に集中できたからでしょうか。
上手とは筋が比較的まっすぐに掻き上げられ、幅も深さも大体同じになるということでしょうか。
このやつれ風炉の灰筋は少し深めの方が豪快な感じがして暁庵のお好みです。
感想としては、繊細で完璧主義の性格だと大変かも・・(幸い、大雑把でして・・言い訳です)。
多少の乱れは味わいと考えて、大胆に掻き上げた方が良さそうです。
二文字掻き上げのやつれ風炉に背の高い車軸釜を取り合わせました。
名残りの稽古茶事を終えて・・・(2)へつづく (3)へ
(やっとカメラの画像をPCへ取り込むことができました・・・ふぅ~! )
9月28日(土)は長月の花ゆう会でした。
新しく9月から宗M氏が入会してくださったので総勢6名になりました。
その日はUさんがお休みで、5名で行いました。
科目は三友之式、炭付花月、貴人清次花月です。
科目に応じて皆で支度を手分けして、素早く的確に行うのも花月の良い修練になります。
先ずは13代圓能斎が好まれた三友之式、花、香、薄茶の順で行います。
花は花寄、正客から順に花を入れていきました。
最後に亭主が花を入れると、正客から「どうぞお水を」の声がかかりました。
水を注ぎ、花を整え刃を外側に向けてから花台を持って立ちます。同時に客は袱紗を腰に着けます。
白水引 角虎の尾
葛 撫子 秋海棠
亭主が折据を乗せた香盆を正客前に運び出し、定座に座ってから正客へ「どうぞ折据のお回しを」。
月の札を引いた人が香を焚き、花の札の人は薄茶の初花です。
暁庵がお香の火を担当したのですが、灰の温めが足らなかったようで香りが立ちません(ゴメンナサイ)・・・火味は何度やっても難しい!です
亭主は香盆を出窓に莊ってから立ち上がり水屋へ戻ります。同時に客は四畳半入りします。
最後は菓子付花月です。薄茶4服点て(菓子4個)ですが、5服点てとし全員に飲んでいただきました。
昨年5月に花ゆう会を始めてから十数回花月の稽古を重ねてきましたが、驚くほどの上達ぶりです。
初心者をベテランさんが上手にリードして、いつの間にか花月が身についてきたみたいで嬉しいです。
三友之式のお花、生ける方の個性が垣間見られてとてもステキでした。
花の名前をしっかり勉強してきて書いてくださっった会記を記します。
尾花 木槿
白木槿 水引(赤)
角虎の尾 野の花(紫)
10月の科目は、且座之式、壷莊付花月、濃茶付花月です。
お会いするのが今から楽しみです。
暁庵の裏千家茶道教室 前へ 次へ トップへ
つづき)
薄茶になり、遠州切型の高取焼水指に代わり、上品でモダンな水指が運ばれてきました。
続いて茶箱、初めて拝見する小堀遠州流の茶箱です。
野外に持ち出してお茶が点てられる様にいろいろな工夫があり、興味津々で見つめます。
大小2つのケンドンがあり、小さい方には「日々好日」とあり、茶器や茶筅が収まっていました。
大きい方には歌が書かれていて、後ほどご亭主に教えていただきました。
茶の道は思ふにふかき武蔵野の
月の出しほを差して行くかな
こちらには茶碗2つ(薄茶の重茶碗?)と茶杓などが入っていたように思います。
まるで宝物の入った秘密の箱みたい、どこからどんな茶道具が現れるのか、ドキドキしながら・・・。
趣深い茶器から茶が掬い出され、遠目には染付のようにも見えた茶碗で薄茶を頂きました・・・濃茶の後の薄茶の美味しさは格別です。
茶銘は「千代の松」、こちらも松尾園詰。
手に取ってみると、染付ではなくオランダ製の小ぶりの茶碗でした。
萩焼の茶碗で2服目を頂きました。
薄茶の頃には台所から聞こえていたBGMが急に静かになりました。
BGMは台所でご主人さまが懐石の器を洗っている音でした。
(その日は真夏日のように暑く、茶道口を開けていたので・・・)
「ご主人さまからYさまへの応援のエールのように聞こえます」とKTさま。
・・・暁庵にもそのように聞こえ、深く頷いたのでした。
ご主人さまやYさまの体調不良など、思いがけないことがいろいろありましたが、それ故に「日日是好日」のかけがえのない茶事の日でした。
Yさまご夫妻の仲良く一致団結の心意気が心地好く、有難かったです。
同門のKTさまが薄茶を点ててご亭主の奮闘をねぎらってくださったのも嬉しいことでした。
最後に、茶箱とセットになっている茶器と茶杓を拝見しました。
珍しい八角茶入(小堀宗通好み)には「野山走」(やさんそう)と書かれていました。「野山走」はハイキングの意味だそうです。茶杓は象牙の芋の子でした。
・・・こうして、2年越しでお招きしてくださった長月の茶事が愉しく無事に終了しました。
「お茶を長くやっていますが、見るもの、伺うこと、初めてのことばかりで感動しています・・・」とN氏。
ご亭主さまにはさぞやお疲れのことと思いますが、想い描いた茶事をやり遂げた喜びにYさまの顔が輝いていたのが印象に残っています。
ありがとうございました!
ご近所さんなので、これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
冴えわたる鼓の音に誘われて
隣りの月を見るぞ嬉しき 暁庵
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つづき)
お心尽くしの懐石に舌鼓を打ちながら皆様と楽しく食もお話も進みました。
特に煮物椀と炊き合せが絶品でした。覚えている範囲で献立メモを記します。
献立メモ
向付 鯛 昆布〆
汁 一碗目 マイタケ 辛子 赤味噌
二碗目 山芋(六角形、蒸す) 辛子 赤味噌
煮物椀 卵豆腐 蟹 隠元 柚子
焼き魚 鰤の幽庵焼
炊き合せ 里芋 胡麻麩 オクラ 針柚子
和え物 松茸 水菜 その他 酢の物
八寸 ラディッシュの酢漬け 鴨ロース
湯斗
香の物 沢庵 茗荷甘酢漬け もう1種
酒 天寿 (新潟)
可愛らしく垂涎の瓢風炉
懐石の間、初対面の次客R氏はさぞやお忙しかったことでしょう。
瓢型切掛け風炉の火相を心配したり、正客の質問に応じたり、お食事をしたり・・・。
どうやら繊細な火相の世話はR氏が担当(?)らしく、何度も席を立って炭を継いだり、火の面倒をみてくださいました。
いつもは懐石後に炭手前ですが、今回は省略し(あまりに風炉が小さいため火床が狭く・・・)、主菓子が銘々皿で運ばれました。
菓子銘は「山の秋」、黄色と橙色の掛け分けの金団で石井製です。
銘々皿は久谷焼、「山の秋」にピッタリの秋草模様ですが、銘々の模様が微妙に違っているとか。
柔らかく程よい甘さの金団をしっかり頂いて、中立しました。
キウイ棚下の腰掛待合でひと休みしていると、
「迎え付けの鳴り物に注意していてください」とR氏。
まもなく聞こえてきたのは「鼓の音」。
「どうぞお鳴り物などでお知らせを・・・」の鳴り物といえば、今までは銅鑼か喚鐘でした。
「鼓を打つ」迎え付けは初めてのこと、Yさまの心意気が感じられ、嬉しゅうございました。
後入すると、床には竜胆、女郎花、吾亦紅、角虎の尾などが遠州好・瓢篭にいけられ、香合、茶杓の筒、鼓が莊られていました。
点前座に回ると、高取焼水指の前に茶入が莊られ、風炉釜から湯気が上がっていて、濃茶が楽しみです。
座が静まると、お詰のKTさまが「エッヘン!」と咳払いしました(小堀遠州流独特の合図のようです・・・)。
襖が開けられ、ご亭主へ裏千家流に「どうぞお入りを」とお声掛けしました。
まもなく濃茶点前が始まりました。
茶碗に仕組む茶巾の畳み方は千鳥茶巾、茶筅の向きが反対です。
小堀遠州流は武家茶道なので、袱紗は右に着け、さばき方も違います。
茶入の清め方、茶杓の清め方、茶碗の拭き方の違いに驚きつつも憧れのまなざしで見つめます・・・。
やがて茶入から萩茶碗(12代田原陶兵衛造)に緑の抹茶が入れられ、茶筅で丸く練る様子が興味深く、どんな濃茶になるのかしら?
小堀遠州流の濃茶点前を拝見するのはKTさまの茶事に続いて2度目ですが、とても斬新で、一つ一つの所作に心の中で声を上げていました。
三客N氏も初めての小堀遠州流の濃茶点前をきっと目を丸くして拝見したことでしょう。
馥郁とした香りが部屋に満ちて、良く練られた緑美しい濃茶を頂戴しました。
茶銘は「蓬莱山」、松尾園詰です。
Yさまがお習いしているS先生の教室で使っている濃茶とのこと、初めての「蓬莱山」は薫り好くまろやかな甘みがあり、美味しかったです。
心残りは、三角に折られた出袱紗の使い方がわからず、裏千家流の古帛紗を使いましたが、次回はぜひ小堀遠州流の出袱紗の使い方で濃茶を頂きたく思います。
お道具の拝見をお願いしました。
茶入は唐物・岩城文琳写、木津喜楽作、お仕覆は・・?です。
茶杓は銘「好日」、15代小堀宗通作で共筒が床に莊られていました。
水指は高取焼遠州切型で、12代亀井味楽作とのことでした。
濃茶を飲み終わったところで、次客R氏が退席されました。
急な仕事が入っていたそうで、最後にもう一度炭の面倒を見てから帰られました。
とてもユニークで懐の深いお茶人さんでございました。またお目にかかりたいものです・・・。
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(いきなり言い訳ですが、9月にデジカメとPCを買い換えたのですが、
いまだに使いこなせず苦闘しています ・・・後で茶事の写真に入れ替えます)
9月20日(金)、小堀遠州流Yさまから長月の茶事にお招き頂きました。
1年半前にお招きの手紙を頂いてから諸事情で2回中止があり、3度目にして「無事に」お伺いすることができ、とても嬉しいです。
ご亭主Yさまは暁庵のご近所さん、小堀遠州流をお習いしています。
暁庵の茶事へいらしてくださって「私にもできそう・・・茶事をやってみたい!」と思ったそうです。暁庵にとって何より嬉しいことで、この日を楽しみに待っていました。
連客は4名、不肖暁庵が正客を仰せつかり、次客R氏、三客N氏、詰KTさまです。
11時過ぎに同行のN氏とYさま宅へ伺うと、リビングが待合になっていて
「日日是好日」 宗通
と書かれた短冊が掛けられていました。
ご亭主が敬愛する先代御家元(15代小堀宗通氏)の御筆だとか。
小堀遠州流の茶事は2度目ですが、裏千家流とはかなり約束事などが違っていて興味深く楽しみです。
詰の役目がたくさんあるのも特徴の一つでしょうか。
詰KTさまが青磁雲鶴の汲み出しに香煎を入れ、鉄瓶の湯を注いで出してくださいました。
この鉄瓶が素晴らしく、形と言い、色合いと言い、どっしりと落ち着いた風格があり、惹きつけられました。
次客のR氏から頂いた宝物だそうで、ここまできれいにするのに大変な手間ひまだったとか、早速、そんなお話で盛り上がり、初対面のR氏ともすぐに旧知の間柄のように打ち解けました。
腰掛待合への誘導ですが、小堀遠州流では音の合図で誘導するそうで、なんと!アンティークオルゴールでした。
それはきっと音楽関係の仕事をされていたというYさまのご主人さまの宝物なのでしょう、
ご主人さま自らハンドルを回し、針(?)を置くと、力強くしかも温かい音色の曲が流れはじめました。
曲の名前がわかりませんが、ドイツ製アンティークオルゴールを聞きながら腰掛待合へ進みました。
キウイ棚の木陰にある腰掛待合に座ると、庭には大きな石が組まれ、見事な松が枝を伸ばしていました。
石畳の露地や枝折戸があり、筧が清らかな水音をたてています。
ご亭主が茶室からガラスの鉢を持って出て来られ、蹲踞の水を周りに撒いてから鉢の水をザアッと蹲踞へ空けました。
一度茶室に戻ると、手に小さな羽箒を持って枝折戸前へ進み、迎え付けの礼をされたので、一同無言の挨拶を交わしました。
手に羽箒を持っての迎え付けは3度目です。1回目は鎮信流で、2回目は詰KTさまの茶事、そして今回。
「ただ今、茶室を清めて迎え付けに参上しました」(という意味で羽箒を持って・・・と伺っていますけど)
後座の手前座ですが・・・
席入りすると、八畳の畳の部屋に立礼の設えがあり、漆黒の立礼卓セットが素晴らしく垂涎ものでした。
「立礼の茶事をしたいので、立礼卓を探していたら良いものが見つかったの・・・」と言っていたのはこれだったのね。う~ん!
聞きしに勝る立礼卓セットは、小堀遠州流好みではないそうですが、小ぶりで優雅な佇まいでした。
Yさまで4代目、東日本大震災で水をかぶったという立礼卓がYさまと巡り逢った経緯を心が震える思いで伺いました。きっとこれから良き主を得て大活躍することでしょう。
床の御軸に次のように書かれていました。
三省
秋の夜の寝覚めにせめてはおもへかし
日々に三度はかえりみずとも
小堀遠州流15代宗匠・小堀宗通の御筆です。
毎日、三省していろいろことを省みることが大事です・・・という教えです。
(不肖暁庵は、すぐ茶事の事を考えてしまいます。茶事をすると三省どころではおさまらないのですが、その一方で一省で止めておかないと、先へ進む勇気とエネンルギーが無くなってしまいそう・・・そんなことを思いました)
点前座(立礼台)へ進むと、瓢型の切掛け風炉に出会いました。窓が七宝の意匠で、窓上に紐結びの模様があります。
なんて魅力的なかわいらしい切掛け風炉なのだろう・・・!
火窓から中を覗くと、狭い火床に丸ぎっちょが円く置かれていて、赤々と炭が熾っていました。
客一同、ご亭主と和やかにご挨拶を交わし、あれこれ教えていただいた後に懐石になりました。
長月の茶事に招かれて・・・(2)へつづく (3)へつづく