つづき)
薄茶になり、遠州切型の高取焼水指に代わり、上品でモダンな水指が運ばれてきました。
続いて茶箱、初めて拝見する小堀遠州流の茶箱です。
野外に持ち出してお茶が点てられる様にいろいろな工夫があり、興味津々で見つめます。
大小2つのケンドンがあり、小さい方には「日々好日」とあり、茶器や茶筅が収まっていました。
大きい方には歌が書かれていて、後ほどご亭主に教えていただきました。
茶の道は思ふにふかき武蔵野の
月の出しほを差して行くかな
こちらには茶碗2つ(薄茶の重茶碗?)と茶杓などが入っていたように思います。
まるで宝物の入った秘密の箱みたい、どこからどんな茶道具が現れるのか、ドキドキしながら・・・。
趣深い茶器から茶が掬い出され、遠目には染付のようにも見えた茶碗で薄茶を頂きました・・・濃茶の後の薄茶の美味しさは格別です。
茶銘は「千代の松」、こちらも松尾園詰。
手に取ってみると、染付ではなくオランダ製の小ぶりの茶碗でした。
萩焼の茶碗で2服目を頂きました。
薄茶の頃には台所から聞こえていたBGMが急に静かになりました。
BGMは台所でご主人さまが懐石の器を洗っている音でした。
(その日は真夏日のように暑く、茶道口を開けていたので・・・)
「ご主人さまからYさまへの応援のエールのように聞こえます」とKTさま。
・・・暁庵にもそのように聞こえ、深く頷いたのでした。
ご主人さまやYさまの体調不良など、思いがけないことがいろいろありましたが、それ故に「日日是好日」のかけがえのない茶事の日でした。
Yさまご夫妻の仲良く一致団結の心意気が心地好く、有難かったです。
同門のKTさまが薄茶を点ててご亭主の奮闘をねぎらってくださったのも嬉しいことでした。
最後に、茶箱とセットになっている茶器と茶杓を拝見しました。
珍しい八角茶入(小堀宗通好み)には「野山走」(やさんそう)と書かれていました。「野山走」はハイキングの意味だそうです。茶杓は象牙の芋の子でした。
・・・こうして、2年越しでお招きしてくださった長月の茶事が愉しく無事に終了しました。
「お茶を長くやっていますが、見るもの、伺うこと、初めてのことばかりで感動しています・・・」とN氏。
ご亭主さまにはさぞやお疲れのことと思いますが、想い描いた茶事をやり遂げた喜びにYさまの顔が輝いていたのが印象に残っています。
ありがとうございました!
ご近所さんなので、これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
冴えわたる鼓の音に誘われて
隣りの月を見るぞ嬉しき 暁庵
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