暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

長月の茶事に招かれて・・・(2)

2019年10月08日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)



つづき)
お心尽くしの懐石に舌鼓を打ちながら皆様と楽しく食もお話も進みました。
特に煮物椀と炊き合せが絶品でした。覚えている範囲で献立メモを記します。

献立メモ
向付   鯛  昆布〆  
汁    一碗目 マイタケ  辛子       赤味噌
     二碗目 山芋(六角形、蒸す) 辛子  赤味噌
煮物椀  卵豆腐  蟹   隠元   柚子
焼き魚  鰤の幽庵焼
炊き合せ  里芋  胡麻麩  オクラ   針柚子
和え物   松茸  水菜  その他    酢の物
八寸    ラディッシュの酢漬け     鴨ロース
湯斗
香の物   沢庵  茗荷甘酢漬け  もう1種 
酒     天寿 (新潟)



     可愛らしく垂涎の瓢風炉

懐石の間、初対面の次客R氏はさぞやお忙しかったことでしょう。
瓢型切掛け風炉の火相を心配したり、正客の質問に応じたり、お食事をしたり・・・。
どうやら繊細な火相の世話はR氏が担当(?)らしく、何度も席を立って炭を継いだり、火の面倒をみてくださいました。

いつもは懐石後に炭手前ですが、今回は省略し(あまりに風炉が小さいため火床が狭く・・・)、主菓子が銘々皿で運ばれました。
菓子銘は「山の秋」、黄色と橙色の掛け分けの金団で石井製です。
銘々皿は久谷焼、「山の秋」にピッタリの秋草模様ですが、銘々の模様が微妙に違っているとか。
柔らかく程よい甘さの金団をしっかり頂いて、中立しました。


     

キウイ棚下の腰掛待合でひと休みしていると、
「迎え付けの鳴り物に注意していてください」とR氏。
まもなく聞こえてきたのは「鼓の音」。
「どうぞお鳴り物などでお知らせを・・・」の鳴り物といえば、今までは銅鑼か喚鐘でした。
「鼓を打つ」迎え付けは初めてのこと、Yさまの心意気が感じられ、嬉しゅうございました。 




後入すると、床には竜胆、女郎花、吾亦紅、角虎の尾などが遠州好・瓢篭にいけられ、香合、茶杓の筒、鼓が莊られていました。

点前座に回ると、高取焼水指の前に茶入が莊られ、風炉釜から湯気が上がっていて、濃茶が楽しみです。
座が静まると、お詰のKTさまが「エッヘン!」と咳払いしました(小堀遠州流独特の合図のようです・・・)。
襖が開けられ、ご亭主へ裏千家流に「どうぞお入りを」とお声掛けしました。
まもなく濃茶点前が始まりました。

茶碗に仕組む茶巾の畳み方は千鳥茶巾、茶筅の向きが反対です。
小堀遠州流は武家茶道なので、袱紗は右に着け、さばき方も違います。
茶入の清め方、茶杓の清め方、茶碗の拭き方の違いに驚きつつも憧れのまなざしで見つめます・・・。
やがて茶入から萩茶碗(12代田原陶兵衛造)に緑の抹茶が入れられ、茶筅で丸く練る様子が興味深く、どんな濃茶になるのかしら?
小堀遠州流の濃茶点前を拝見するのはKTさまの茶事に続いて2度目ですが、とても斬新で、一つ一つの所作に心の中で声を上げていました。
三客N氏も初めての小堀遠州流の濃茶点前をきっと目を丸くして拝見したことでしょう。



馥郁とした香りが部屋に満ちて、良く練られた緑美しい濃茶を頂戴しました。
茶銘は「蓬莱山」、松尾園詰です。
Yさまがお習いしているS先生の教室で使っている濃茶とのこと、初めての「蓬莱山」は薫り好くまろやかな甘みがあり、美味しかったです。
心残りは、三角に折られた出袱紗の使い方がわからず、裏千家流の古帛紗を使いましたが、次回はぜひ小堀遠州流の出袱紗の使い方で濃茶を頂きたく思います。

お道具の拝見をお願いしました。
茶入は唐物・岩城文琳写、木津喜楽作、お仕覆は・・?です。
茶杓は銘「好日」、15代小堀宗通作で共筒が床に莊られていました。
水指は高取焼遠州切型で、12代亀井味楽作とのことでした。

濃茶を飲み終わったところで、次客R氏が退席されました。
急な仕事が入っていたそうで、最後にもう一度炭の面倒を見てから帰られました。
とてもユニークで懐の深いお茶人さんでございました。またお目にかかりたいものです・・・。 


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