暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

大豊神社の珍至梅

2013年06月14日 | 京暮らし 日常編
               大豊神社の珍至梅(チンシバイ)

哲学の道添いにある大豊神社は、隠れた花の名所で、
枝垂れ桜や椿の名木が咲き乱れる4月はもちろんのこと、
いつ訪れても季節の花が咲き、訪れる人を楽しませてくれます。

参道は茶花の宝庫でもあります。

           

           

青紫色のウツボ草の群落を見つけました。
紫陽花・・・萼(がく)紫陽花、七段花、柏葉アジサイなど
種類も豊富でちょうど見頃でした。
ピンクのホタルブクロやシモツケソウがかわいらしい・・・。
参道途中にある「椿ヶ峰の御神水」も必ず立ち寄る水場です。

           
                ウツボ草(夏枯草とも)
           
                紫陽花
           
                萼(がく)紫陽花 
           
                 椿ヶ峰の御神水

この時期、一番のお気に入りは「珍至梅(ちんしばい)」、
「庭七竈(ニワナナカマド)」の別名ですが、ステキな茶花です。
昨年6月、水無月の茶事の時に京都ではじめて出逢いました。

白い花は、上等なレースのドレスを優雅に纏う貴婦人の趣きです。
夕闇の迫る葉陰でひっそりと咲いていましたが、
清楚な美しさにもう一度惚れ直し、灑雪庵の床に生けたいと思いました。

「珍至梅(別名は庭七竈:ニワナナカマド)」は秋になると、実が赤く熟します。
実がとても固く、竈(かまど)で七回焚いても燃えないことから
「庭七竈」の名前がついたとか・・・けっこう芯が強い貴婦人かも。

神社によく植えられていて、「燃えにくい」ことから
火災除け、落雷除けの御利益がありそうです。

           
            縁結びと健康長寿の大国社

           
                大国社の絵馬はネズミです

明日(14日)は自主稽古の日
「珍至梅」を求めて、花屋さんへ寄ってみようかしら?

                                


平安神宮の花菖蒲

2013年06月13日 | 京暮らし 日常編

台風もそれて、ここ京都では雨が恋しい毎日です。
せめて・・・と、レイアウトを「雨乞い」モードにしてみました。

6月7日(金)は平安神宮の無料開放でした。
自転車に乗って、京都伝統産業館・ふれあい館の図書室へ行った帰り、
平安神宮へ寄ってみました。
平日なのに凄い人出で、いろいろな国の言葉が飛び交っています。
みんな(もちろん私も)、本殿ではなく神苑へ一目散に向かいました。
入口に「花菖蒲 見頃」とありました。

            

神苑は、社殿を囲み、南・西・中・東の四つの庭で構成され、
四季折々の花が楽しみな回遊式日本庭園です。
お目当ては花菖蒲ですが、他にも定家かずら、シモツケソウ、サツキ、
池にはコウホネ、睡蓮が咲き乱れ、訪れた人を和ませてくれます。

            
                 色とりどりの花菖蒲

            
                 水に映って・・・

            
                 定家かずら

            
                 シモツケソウ

            
                 睡蓮は午後なので眠そう

東神苑には紅しだれコンサートが行われた尚美館 (貴賓館 )があります。
コンサート2013を懐かしく思い出していると、
栖風池に面した廊下へ白い綿帽子に打掛姿の花嫁さんが現れました。
「イベントの写真撮影かしら ?」
と思っていたら、本当の結婚式でした。

            
                きれいな花嫁さんにうっとり

            
                お幸せに・・・ね!

この日この時間に居合わせた人たちと
「なんて素晴らしい日なんでしょう。
 きっと幸せのおすそ分けがあるわね」
と喜び合いました。

            
                 泰平閣(橋殿)
                                  

真如堂の菩提樹が満開

2013年06月12日 | 京暮らし 日常編

午後の散歩に近衛坂から裏道を抜け、真如堂へ行きました。
近衛坂は、吉田山から近衛通りへ通じる坂道で、
おどろおどろした古道の面影を色濃く残しています。

            
                  雨待ち顔のあじさい

            
                  おどろおどろの近衛坂

            
              近衛坂の途中に祀られている、
              おびただしい数のお地蔵さま       

真如堂は、紅葉の名所として有名ですが、青葉茂れる今頃は
いつ行っても人の訪れが少なく、静かなお寺です。
朱塗りの門をくぐり抜けて石段を進んで行くとき、
青楓に彩られた額縁の中に真如堂と石灯籠がだんだん近づいて来ます。

            

            

大きな菩提樹が本堂正面にあり、小さな黄色い花を房状につけています。
「菩提樹開花6月7日」と書かれた看板があり、
よく見ると、大木がすべて花におおわれていて、満開でした!

真如堂の解説によると、
   菩提樹は、仏教三聖木の一つで、
   この木の下でお釈迦様が悟りを開かれたとされています。
   「菩提」は「正しい悟りの智」を意味する「ボーディ」を音写したものです。
   インドの菩提樹はクワ科ですが、真如堂をはじめ日本の寺院に植えられている
   菩提樹はシナノキ科で、両者は異なる種類です。
   仏教が中国に伝わった時、中国では菩提樹が育たなかったので、
   よく似た木を菩提樹とし、日本には12世紀にもたらされました。

インドの菩提樹とは種類が違うようですが、
真如堂のは見事な大樹で、枝をのびのびと周囲に伸ばしています。
聖なる木として大切にされていたことでしょう。

            

            

            
                 甘く上品な香りが・・・

木の陰に入ると、花の香りが漂ってきました。
甘く上品で繊細な香りです。

数少ない参詣者からお声が掛かりました。
「花期が短いそうで、満開の菩提樹に逢えたのはラッキーでした。 
 ほのかですが、佳い香りですね。
 夕方になると少し匂いがきつくなるそうです・・・」

花が終わるとすぐに実を結び、秋になると茶色く熟します。
真如堂では「実が2つ以上ついているものを財布に入れておくと
お金が貯まる」という言い伝えがあるとか。
手元不如意なので、秋に必ずゲットしなくっちゃ!

            
                  静かな哲学の道

真如堂から哲学の道をぶらつきました。
なぜか、口ずさむ歌はシューベルトの「菩提樹」、
ところどころ忘れていましたけれど・・・。

   泉に添いて 茂る菩提樹
   したいゆきては うまし夢見つ
   みきには彫(え)りぬ ゆかし言葉
   うれし悲しに といしそのかげ  といしそのかげ

哲学の道ではそろそろ蛍が乱舞する頃です。

                                


大文字山へ 茶事のクールダウン

2013年06月08日 | 京暮らし 日常編
初風炉の茶事の翌日、ぶらぶらしていると、
「お疲れのようだけど、大文字山へ登ってみないか・・・」
茶事後のクールダウンが必要なのを見抜いたダンナの一言。

それで、6月4日に初めて大文字山(標高466m)へ登ることにしました。
大文字山は左京区にあり、8月16日に行われる五山送り火が有名で、
「大」の字の火床が山腹にあります。

頂上でお昼になるので、おにぎり4個、たくわん、水筒を用意しました。
疲れたときの甘味に緑寿庵清水の金平糖をポケットに入れ、10時出発です。
目指すは「谷の御所 霊願寺」、ここから坂道がきつくなりました。

             

             

坂の途中で振り返ると、京都の市街地がだんだん下に見えます。
大文字山への道は道標があっても、枝分かれしていて迷いやすく、
鬱蒼とした杉林の中を黙々と登って行きました。

「ちょうど四国遍路の焼山寺へ行く遍路道みたいだね」
「わたしもそう思っていたところ、
 こんな近くに遍路道があるなんて・・・吉田山に続いて二つ目ね」
二人とも時期は違いますが、四国遍路(歩き)をしているので
同じことを考えていました。

ひたすら登って行くと、人が住んでいた形跡のある場所へ出ました。
石碑が2つ建っていて、「俊寛僧都忠誠之碑」と読めました。
平家打倒の密謀が行われた鹿ケ谷山荘跡のようです。
さらに、小さな流れを越えて、谷の斜面を登り切ると尾根道へ出ました。

             
          鬱蒼とした杉林           俊寛僧都忠誠之碑

下りてきた男性に道を尋ねると、
「あと5分も登れば大文字山の頂上です。
 景色がとてもよく、みなさん、そこでお昼を食べていますよ。
 こちら(反対側)へ行くと大文字の火床のてっぺんに出ます」

              
                     山頂からの眺め
大文字山山頂へ12時10分に到着です。
山頂からの眺めは素晴らしく、京都市街地、御所、京都駅、山科地区、
大山崎、愛宕山の山並みがはっきり見えました。
ほぼ毎日一人で登って来るという七十代の女性に出会い、
いろいろ魅力的な登山コースがあることを教わりました。

おにぎりを頬張りながら辺りを見まわすと、たくさんのグループがいて、
常連さんも多いことがわかります。
同年輩が多いことに触発されて
「毎日は無理だけど毎週火曜日に登らない?」
「・・・・」

               
                     頂上で憩う人たち
                         
                     大の字のてっぺん部分の火床

最初の計画通り、大文字の火床を見て、銀閣寺へ下りることにしました。
大文字の火床からの眺めは絶景でした。
急斜面の長い階段を下りていくと、
ふんわりとハングライダーで飛んでいるような景色と気分を味わえます。
「この感じが好いわねェ~また来ましょうよ」と思わず叫んでいました。

               
               火床を横目で見ながら絶景を下る
                        

銀閣寺へ下りる道は階段が多く、登りはかなりきつそうです。
階段のない霊願寺道を選択して大正解でした。

下山してから甘味処・喜み家(豆かんが有名)へ寄り、
かき氷(みぞれ)と、私はクリームあんみつを食べ、帰宅しました。
素晴らしいクールダウンの一日、これで前へ進めます。

              
                                       
                                  


初風炉の茶事 -野の花とともに-

2013年06月06日 | 茶事  京都編
5月29日と6月2日に初風炉の茶事をしました。
もう若くはないんだから2回は無理・・・躊躇う気持ちもありましたが、
お客さまが喜んで来てくださるのだから・・と、茶事バカの一念でした(ふぅ~)。

今回の茶事のテーマは初風炉と野の花、
初風炉は平点前にして、シンプルで清々しい設えにしたいと思いました。

ご案内に先立ち、吉田山近辺や鴨川河原で野の花を探し回りましたが、
思うようにみつかりません。
すぐに採取をあきらめ、近所の「花長フローリスト」に相談しました。

「野の花をテーマに茶事をしたいのですが、花をお願いできますか?」
「今は花が多い時期なので大丈夫です。お引き受けしましょう。
 どんな花がお望みですか?」
花長さんに背中を押されて、茶事決行を決めたのは4月半ばのことです。

               

灑雪庵待合へ11時30分に集合していただきました。
お詰の方の板木を打つ音を聴き、白湯(桜湯)をお出ししました。
塩漬けの桜は、4月に購入した桜守・佐野藤右衛門邸の鬱金(うこん)桜です。

待合の短冊は、
「弄花香満衣」
(はなをろうすればかえにみつ) 紫野・長谷川寛州和尚筆です。
この解釈が茶事進行と共に変化したので、後ほど記します。

最初に花寄せの趣向で、野の花をいけて頂きました。
灯りをつけず、簀戸越しの自然光だけの床は見えにくかったので、
後座では灯りをつけ、諸飾りとしました。
すると、目を見張る様な空間が現れました。

「後座はお軸だけと思っていましたが、花を残しました。
 どうしても引けなかったので・・・」
Mさま(5月29日のお正客)から
「花を残してくださって嬉しいです。
 これで花を引いたらブーイングですよ・・」 (残してよかった!)

              
                     5月29日の後座の床

床の掛物は「無我」(周藤苔仙和尚筆)、
いろいろなことに捉われている自分を無にすると、
今まで聞こえなかったものが聞こえて来たり、見えなかったものが見えてきます。
しばし「無我」の境地にて、自然のサウンドや野の花を楽しむことが出来れば・・・。

              
                      6月2日の後座の床

後座で、揖保川焼水指を置きました。
陶芸家・池川みどりさんの作品で、乳白色の釉が掛けられ貫入が美しく、
野の花が描かれています。
4年前に池川邸ギャラリィで購入したお気に入りで、
みどりさんが「黙坐」という銘を付けてくださいました。

肝心の茶事ですが、何度やっても、反省点が多く恥ずかしい限りです・・・。
茶事は濃茶を一服飲んでいただくために行われるのですが、
特に風炉では火相、湯相が難しいですね。
毎回同じように、美味しい濃茶を差し上げたいもの・・・と反省しきりです。
茶事はやるたびに違っていてイキモノのように思いますが、
そこに何故か心惹かれて続いているのかもしれません。

              

待合の「弄花香満衣」ですが、
最初は軽く、花に因む掛物を・・・と選びました。
この禅語は対句になっています。
「掬水月在手 弄花香満衣」
(みずをきくすればつきてにあり はなをろうすればかえにみつ)
解釈の一つに、「自ら行動をおこすことによって得られることがある、
思うばかりで行動をおこさなければ得るものはない」

茶事の終わり近くになって、「あっ!」と気づきました。
「花」は私にとって茶事そのものであり、
茶事を弄(労)することでお客さまとの茶の交流が深まり、
より深い香り(高み)を味わうことができる・・・と。

なんか未来に向けてシアワセな気分が満ちて来て、
一人亭主の疲れも吹っ飛ぶ思いがしました。 
                                 

              
                   茶事後の玄関土間
                  (花は隣家へおすそ分けしました)