暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

赤松禎英の道成寺

2013年06月20日 | 歌舞伎・能など
                  道成寺ならぬ東大寺の鐘楼

6月15日、藤田美術館のあとに大槻能楽堂へ。
大槻能楽堂改築三十周年記念を謳った
「道成寺フェスティバル」の第三弾、シテ方は観世流・赤松禎英です。

狂言「鐘の音」で、すぐにうつらうつら・・・夢の中。
休憩の間に珈琲を飲んで気合いを入れ直していたら、Rさんと出会いました。
「道成寺なら赤松さんのを是非・・・」と薦めてくださった方です。

いよいよ鐘後見が登場し、大鐘を釣るところから始まるのも興味津々、
前回(第1回)よりスムースに釣れて、
綱が狂言方からシテ方・鐘後見へ無事渡されました。
プロローグとして、出演者と観客の気持を鐘(舞台)へ集中させる、
にくい演出・・・と改めて感心しました。

              

まもなく、笛の音が・・・笛は竹市学(笛方藤田流)です。
なんと形容してよいやら・・・鳥肌がたつような笛でした。
長く抑揚のある音色は、あの世の霊をこの世(能舞台)へ招き入れている、
そんな気持ちになり、緊張感がいやが上にも高まってきました。

あらすじは前回に書いたので省略しますが、同じ演目でも
役者や演出などの違いで、受ける印象が全く違うことが新鮮でした。

面と装束も違い、白拍子(前シテ、赤松禎英)は
(恋に?)やつれた風情で登場しました。
面(増)と、萌黄地蝶文様厚板壷折(江戸時代)と記された装束の
せいかもしれません。
白拍子が鐘の供養のために舞うことを許されて、
扇と烏帽子を着けに後方へ退くと、鐘が再び高く吊り上げられました。

囃子方(大鼓、小鼓、笛、太鼓)が全員、素晴らしかったです。
乱拍子になり、白拍子の抑えた動きは逆に鐘への執念を思わせ、
「ホッ-」
「ヘイ ヤッ-」
「ヨウゥッ」
小鼓の気合いがからまり、緊張感が次第に増していきました。

              

クライマックスは急之舞と鐘入り。
囃子方の気合がほとばしる鳴り物が能舞台を揺るがすように響き渡ると、
我が身も舞台と一体となって、のめりこみました。
白拍子は急之舞を舞い、烏帽子と扇を飛ばして鐘の中へ。
烏帽子と扇を飛ばす直前に「キッ」という感じで鐘を見つめる場面では、
その怨念に思いを馳せる瞬間となりました。

鐘の中で数拍子を踏んで、鐘が落ちました。
数拍子踏んだことでメリハリが付き、
鐘が落ちる間合いとスピードも落ちた音が響くようでした・・・。

             
             鐘法要 (金戒光明寺)

後半、鐘がゆらゆらと動いてから、高く引き上げられると、
中には蛇体となった女(後シテ)が座っています。
面は蛇(室町時代)、髪は赤頭、第1回目の臥せているかたちと違い、
頭を上げ、迫力と存在感がある演出です。

後半は囃子方に太鼓が加わりました。
蛇体の女は僧たちの祈りによって調伏されるのですが、
鐘への執念を見せながら、もだえ苦しむさまが見せ場になっています。
前回よりも後シテの執念やその悲しみが強く伝わってきたように思います。 
特に「柱巻き」の場面は情感が漂い、秀逸でした・・・。

赤松禎英の道成寺と素晴らしい囃子方に出逢えた幸せを噛みしめています。
Rさん、薦めてくれてありがとう!

                                  


(忘備録)
大槻能楽堂改築三十周年記念「道成寺フェスティバル」
      平成25年6月15日(金)  於 大槻能楽堂

  狂言  「鐘の音」   太郎冠者:善竹忠一郎 
                主人:善竹忠重 伯父:善竹隆平

   能  「道成寺  -赤頭之伝・中之段数躙・無躙之崩・五段之舞-」
    
             白拍子・後ニ蛇体  赤松禎英
             道成寺の住僧    宝生欣哉
                 同       舘田善博
                 同       御厨誠吾

             間 道成寺の能力  茂山良暢
                  同      善竹忠亮

             囃子方  笛   竹市 学
                   大鼓  亀井 広忠
                    小鼓  成田 達志
                    太鼓  中田 弘美