暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初風炉の茶事 -野の花とともに-

2013年06月06日 | 茶事  京都編
5月29日と6月2日に初風炉の茶事をしました。
もう若くはないんだから2回は無理・・・躊躇う気持ちもありましたが、
お客さまが喜んで来てくださるのだから・・と、茶事バカの一念でした(ふぅ~)。

今回の茶事のテーマは初風炉と野の花、
初風炉は平点前にして、シンプルで清々しい設えにしたいと思いました。

ご案内に先立ち、吉田山近辺や鴨川河原で野の花を探し回りましたが、
思うようにみつかりません。
すぐに採取をあきらめ、近所の「花長フローリスト」に相談しました。

「野の花をテーマに茶事をしたいのですが、花をお願いできますか?」
「今は花が多い時期なので大丈夫です。お引き受けしましょう。
 どんな花がお望みですか?」
花長さんに背中を押されて、茶事決行を決めたのは4月半ばのことです。

               

灑雪庵待合へ11時30分に集合していただきました。
お詰の方の板木を打つ音を聴き、白湯(桜湯)をお出ししました。
塩漬けの桜は、4月に購入した桜守・佐野藤右衛門邸の鬱金(うこん)桜です。

待合の短冊は、
「弄花香満衣」
(はなをろうすればかえにみつ) 紫野・長谷川寛州和尚筆です。
この解釈が茶事進行と共に変化したので、後ほど記します。

最初に花寄せの趣向で、野の花をいけて頂きました。
灯りをつけず、簀戸越しの自然光だけの床は見えにくかったので、
後座では灯りをつけ、諸飾りとしました。
すると、目を見張る様な空間が現れました。

「後座はお軸だけと思っていましたが、花を残しました。
 どうしても引けなかったので・・・」
Mさま(5月29日のお正客)から
「花を残してくださって嬉しいです。
 これで花を引いたらブーイングですよ・・」 (残してよかった!)

              
                     5月29日の後座の床

床の掛物は「無我」(周藤苔仙和尚筆)、
いろいろなことに捉われている自分を無にすると、
今まで聞こえなかったものが聞こえて来たり、見えなかったものが見えてきます。
しばし「無我」の境地にて、自然のサウンドや野の花を楽しむことが出来れば・・・。

              
                      6月2日の後座の床

後座で、揖保川焼水指を置きました。
陶芸家・池川みどりさんの作品で、乳白色の釉が掛けられ貫入が美しく、
野の花が描かれています。
4年前に池川邸ギャラリィで購入したお気に入りで、
みどりさんが「黙坐」という銘を付けてくださいました。

肝心の茶事ですが、何度やっても、反省点が多く恥ずかしい限りです・・・。
茶事は濃茶を一服飲んでいただくために行われるのですが、
特に風炉では火相、湯相が難しいですね。
毎回同じように、美味しい濃茶を差し上げたいもの・・・と反省しきりです。
茶事はやるたびに違っていてイキモノのように思いますが、
そこに何故か心惹かれて続いているのかもしれません。

              

待合の「弄花香満衣」ですが、
最初は軽く、花に因む掛物を・・・と選びました。
この禅語は対句になっています。
「掬水月在手 弄花香満衣」
(みずをきくすればつきてにあり はなをろうすればかえにみつ)
解釈の一つに、「自ら行動をおこすことによって得られることがある、
思うばかりで行動をおこさなければ得るものはない」

茶事の終わり近くになって、「あっ!」と気づきました。
「花」は私にとって茶事そのものであり、
茶事を弄(労)することでお客さまとの茶の交流が深まり、
より深い香り(高み)を味わうことができる・・・と。

なんか未来に向けてシアワセな気分が満ちて来て、
一人亭主の疲れも吹っ飛ぶ思いがしました。 
                                 

              
                   茶事後の玄関土間
                  (花は隣家へおすそ分けしました)