暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「雨月の茶事」・・・(1)初座

2024年07月08日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

   (雨に濡れて緑が生き生きとしています)

 

令和6年6月30日(日)に「雨月の茶事」をしました。

お客さまは、正客YKさま、次客YKさま、三客EKさま、詰WYさまで、お茶はもちろんのこと(たまたま全員が裏千家流でした)、能がお好きだったり、お習いしている方々です。

ご挨拶の時に「今日は茶と能がテーマだそうで、どんなお茶事なのか楽しみに参りました」と言われましたが、「・・・実は私自身もどうなりますことか・・今一つわからないのですが、お楽しみいただければ幸いでございます」と。(ふっ~汗)

暁庵にとって茶と能はいつも密接な関係にあり、茶事をしていると能のことを思い、能を観ているとお茶や茶事のことを思うことがよくあります。

 

(待合には短冊「千本鳥居」(團十郎画)を・・)

席入は11時半、板木が打たれ、半東YSさんがロック氷の入った梅ジュースをお出しし、腰掛待合へご案内しました。

露地でお正客さまと無言の挨拶を交わし、蹲で心身を清め、初座の席入をしていただきました。

待合の掛物は短冊「千本鳥居」(團十郎画)、伏見稲荷は私にとって京都のパワースポットの1つで、中でも「千本鳥居」は「異界への入り口」のような気がします。

能はあの世(異界)とこの世を行き交うような物語の世界なので、この短冊を選びました。

床の軸は能画「隅田川」、野沢蓼州画です。

20年前に初めて「隅田川」を観た時、もう涙がでて仕方がなく、「こんなに魂を揺さぶるような感動を与えてくれる能って、なんて素晴らしいのだろう!」と、能に魅せられた体験をお話ししました。

画師・野沢蓼州は亡き母とご縁があった方で、「隅田川」を観たすぐ後にこの画と巡り合ったのも良き思い出です。

都合により朝茶事のように初炭を先にし、風炉中も拝見して頂きました。

風炉釜はお気に入りの糸目桐文車軸釜です。本で見つけた優美な伊予芦屋釜の写しを釜師・長野新氏に特注して作ってもらいました。風炉は唐銅道安風炉(一ノ瀬宗和造)です。

 

  (お気に入りの糸目桐文車軸釜)

炭斗は鵜籠、羽箒は白鳥、飾り火箸は「ひねもすのたり正午の茶事」のお正客SKさまからご恵贈頂いた龍玉頭飾火箸(当代大西清右衛門作)です。灰器は沖縄の焼物、灰匙はスッカラ(韓国のアンティークのスプーン)で遊んでみました。

香合は「涼み舟」(浮御堂古材で誠中斎作)、能「江口」の川舟のシーンを思い浮かべながら拝見にお出ししました。

「江口」は、能を観るきっかけとなった横浜能楽堂特別企画「能・狂言に潜む中世人の精神」の第3回「仏教」で演じられ、それ以来「江口」と言えば、三人の遊女が川遊びをしている、美しくもはかない情景が目に浮かんできます。

  やがて月の澄み渡る川面に遊女たちの舟遊びの光景が見えてきます。
  舟が橋がかりへ運び出され、シテの江口の君とツレの遊女二人が舟に乗り、
  「秋の水 漲(みなぎ)り落ちて去る舟の 月も影さす棹の歌」
  と三人で吟じます


三客EKさまから「暁庵さまは能「江口」がお好きですよね。最後に遊女・江口の君が普賢菩薩の姿を現し、舟は白象となって天上界へと消えていく・・・のも良いですねぇ」とお声が掛かりました。

能「江口」と共に「西行庵の朝茶」を懐かしく思い出しました・・・。(つづく)

   

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    「雨月の茶事」支度を楽しんで・・・

 


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