暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

伽羅の名木 (1)

2010年03月12日 | 茶道楽
五事式の会で、且坐に用いる香は伽羅にしたいと思いました。

ほんのりと優しく上品な伽羅を末席で聞きました。
香道を嗜んでいるIさんから頂戴した名木です。
いつまでも聞いていたい香りでした。

正客より香銘のお尋ねがあり、待合に掛けた
「春の苑紅にほう桃の花
     したでる道に出で立つ乙女  家持」
に因んで
「今日のお客さまにぴったりの「春の乙女」でございます・・」
席中が笑顔でいっぱいになりました。

天下に名高い伽羅の名木が登場する小説、
森鴎外の「興津弥五衛門の遺書」を最近読みました。

大正元年(明治45年、1912)10月に発表されたこの小説は、
明治天皇崩御と、それに続く乃木希典夫妻の殉死に
感銘を受けた森鴎外が一夜(実際には数日)にして書き上げた
・・・と言われています。

以下にあらすじを紹介します。

寛永元年(1624)に安南船が長崎に到着したというので
細川三斎(忠興)公は
「茶事へ用いる珍品を買い求めよ」
と、興津弥五衛門と横田清兵衛を長崎へ遣わしました。

折しも珍しい伽羅の大木が渡来していて、
元は一本の木ですが、本木(もとき)と末木(うらき)
の二つがありました。
弥五衛門は仙台伊達家の役人と本木を競り合い、
莫大な値段へ釣り上ってしまいます。

      (つづく)
                             
   写真は、「馬酔木(あせび)」です。