大原美術館本館
平成30年7月、台風7号に伴う豪雨は西日本の各地に未曾有の災害をもたらしました。
ニュースを見るたびに死者や行方不明者の数が増加していき、胸を痛めておりました。
被害にあわれた皆様に 謹んでお見舞いを申し上げます。
一日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。
山形・鈍翁茶会のあと7月3日~5日までアートをめぐる旅へ出かけたのですが、西日本豪雨の被害地が近かったこともあり、ブログになかなか書けずにいました。
羽田から岡山へ、徳島から羽田へ、往復空の便でした
白い雲の向こうの青暗い帯状の雲が台風7号の雲です
右膝がようやく回復してきたので、今のうちに行きたいところへ行ってみたいと、「大原美術館・大塚国際美術館・小豆島・直島 芸術のせとうち4つのアートめぐり3日間」の旅(日本ツーリズム主催)へツレと参加しました。
7月3日、折しも日本海を北上する台風7号に向かうように羽田から岡山桃太郎空港へ飛び、バスで倉敷へ。
大原美術館や倉敷民芸館などを自由見学し、倉敷アイビースクエア泊でした。
ムーア作「横たわる母と子」 分館にて
20代に2回ほど大原美術館を訪ねたことがありますが、当時本館だけだった大原美術館はアメーバ―の様に分館、工芸館、東洋館と増殖し、コレクションも充実していました。
工芸館
(元は大原家の米蔵で、染色家芹沢銈介によって展示室として改装されたそうです)
ウン十年ぶりに絵の前に立つと、エルグレコの「受胎告知」に出合った時の感動が蘇ったり、ルオーの「呪われた王」や「道化師」を見て、その当時と好みが同じなのを確認したり、評価が違ったり・・・新たな素晴らしい作品に出合ったり、3時間ほど素敵な時間を過ごしました。
音声ガイドの解説がとても好く、鑑賞ポイントや作者の作品への思いを知るしるべとなり、新たな作品の発見にもつながりました。
特に次の作品が心に残っています。
○クロード・モネ作「睡蓮」
今回音声ガイドを聞いて、一番心を捉えたのがこの作品でした。何度も解説を聞きながら「睡蓮」を観賞しました。
睡蓮の咲く池の様子を何枚も描いている作品の一枚ですが、朝、昼、夕と刻々と変化する光りの微妙な移ろいを描きだし、さらに池に映り込んでいる周辺の状況やその変化をも広く巧みに描き出している・・・。
なぜかお茶事を思いました。茶室が池で、睡蓮はお客さまでしょうか?
床に御軸や花を生け、その日の亭主(作者)の心持や茶室(池)の外の季節や景色を写し出し、伝えます。
限られた空間ですが、障子が刻々と変化する光の移ろいを微妙にとらえ、障子の色を変化させています。また、障子に映る影絵の世界はその時でなくては味わえぬ最高のご馳走です。
朝、昼、夕の光の移ろいだけでなく、夜の灯りが生み出す千変万化の空間も素敵です。
・・・ここまで妄想(?)すると、「光」や周辺の景色や季節をいかにシンプルかつ趣深く伝えるか、お茶事で心掛けるテーマが見えてきたように思いました。
(この睡蓮はパリ近郊のモネの家から贈られた株です)
○エル・グレコ作「受胎告知」
ウン十年前、この絵の前で釘付になり、しばし対峙しました。
マリアの表情が気になりました。喜びよりむしろ、驚愕、当惑、悲愴のようなものを感じたからです。
再会して、またまた崇高な「受胎告知」に魅せられましたが、今回はマリアより天使ガブリエルの描き方や位置関係(構図)に興味を持ちました。
「受胎告知」は多くの画家によって描かれていますが、マリア、天使ガブリエル、鳩の三点セットがお約束のようです(解説による)。
○フレデリック作「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」
今回新たに出合った作品です。
音声ガイドがなかったら見逃すか、または作品の内容を理解できずに見過ごしてしまったことでしょう。
人々が死に絶えているシーンから始まり、神の愛によって人々が再び生と希望を取り戻すシーンが一大スぺクタルのように描かれていて圧巻です。
厳しいテーマですが、明るい色調と柔らかなタッチの画風で救われる思いがします。
第一次世界大戦で亡くなったフレデリックの愛娘が絵の中に描かれているそうです。
夜の散策の途中で雨がポツリ・・・
アートをめぐる旅(2)・・・直島のベネッセハウス・ミュージアムへつづく