令和7年3月14日に小堀遠州流の茶友Yさまと茶友Sさまから「雛祭り・茶飯釜の茶事」へ招かれました。
次のような春の和歌が書かれた案内状がYさまから届きました。
佐保姫の
筆かとぞみる
つくづくし 雪かきわくる
春のけしきは 藤原為家
いろいろな茶事がありますが、茶飯釜の茶事は応用の茶事で特に決まったやり方はなく、亭主がいろいろ工夫するものと昔お習いしました。
15年?前に伺った茶道会館・北見宗峰先生の茶飯釜の茶事以来かもしれません。その時の印象や思い出が今なお鮮明で、その茶事で満足していたのかもしれません・・・。
風流な茶飯釜鉄風炉を茶友からいただいたので、YさまとSさまに茶飯釜の茶事のご指導をお願いしたところ、急に御二人から茶事へお招きを受け、喜び勇んで出かけました。
不肖暁庵が正客、暁庵社中のAYさまとY氏、仕覆師・Uさま、茶友Fさまが詰、懐石はSさまです。
待合で甘茶を頂戴し、詰Fさまが喚鐘を打ってから外の腰掛待合へ出ました。
しばらくすると、ご亭主が桶を持って現われ、蹲の水を周囲に撒いて清め、手や口を漱いでから桶を戻し、今度は手に羽箒を持って枝折戸を開け、無言で全員とご挨拶を交わし、茶室へ戻りました。
蹲を使い席入すると、立礼席の設えでした。
八畳の床には所狭しとばかりお雛様が飾られ、雪洞の灯りの元、桃の花と菜の花が雛飾りを華やかに引き立てています。素晴らしい雛と雛道具を拝見してから点前座に回ると、点茶盤にあの風流な鉄風炉が、左下には道庫代わりの旅箪笥が置かれています。
ご亭主が一人一人と挨拶を交わされ、ご挨拶を伺いながら今日の茶事を全員が心待ちにしていたようで私まで嬉しくなりました。
風炉の炭手前が始まり、風炉を羽根で清める所作が裏千家流とは違うのが興味深く、釜を下ろす位置や道具の置き方も違います。茶飯釜には火力が必要なので、びっくりするほどたくさん炭が継がれ、傍に寄って拝見させてもらいました。
香合は「都鳥」(隅田川焼、白井半七作)、香は梅が香(鳩居堂)です。
(「都鳥」香合・・・隅田川焼、白井半七作)
いよいよ茶飯釜です。釜がいったん水屋へ引かれ、濡れ釜(見どころ?)として登場しました。米の入った竹籠や茶巾などの盆一式が運び出され、竹籠からコメがさらさらと入れられました。
釜が据えられると、早く火が熾きるように全員で火吹き竹で吹いてコメが煮立つのを待ちますが、その間に客同士でいろいろなお話をしながらも釜の様子を気遣います。火力が心配で2度も吹いてしまいました・・・まさにここが茶飯釜ならではの一座建立でしょうか。
(釜から吹きこぼれ始めました)
思ったより早く煮えが付いて釜から白い汁が吹きこぼれ出しました。吹きこぼしをご亭主は濡れふきんで丁寧に優しく拭いています。
詰Fさまが「そろそろかしら? チリチリという音がしたら釜を上げるのだけれど・・・」と言いながら釜へ近づくと、音が聞こえたのでしょうか、亭主が釜を上げて炊きあがりです。
本来はここから10分くらい蒸らすのですが、懐石の最初のご飯は少し芯の残るくらいの炊き立てを出すことになっているので、すぐに飯碗へよそいます。暁庵の裏千家流ではその場で飯碗によそいますが、小堀遠州流では水屋へ引いてそちらでよそうようです。
汁の入った鉄鍋を風炉へ掛け、汁がよそわれ、向付、飯、汁が載った折敷が運び出され、ご飯を頂くと少し芯が残るアルデンテ、釜上げのタイミングがぴったりだったことがわかります。
この頃、湯を入れた釜が戻され、風炉に掛けられました(釜をゴシゴシ洗うと鉄さびが出るので、ぬめりを残すくらいが湯が美味しいそうです・・・う~ん!奥が深そう)。
斬新なトマトの汁が美味しく、ここからはSさまのセンス満開の懐石が次々に登場・・・もうもう舌鼓を打ちながらすべて美味しく頂き、これも茶事の楽しみですね! つづく)
向付(烏賊、ウド、菜の花)
煮物椀(ピンクと白の真蒸、筍、ウド?)
焼物(ステーキ、椎茸・クリームソース添え)
雛祭り・茶飯釜の茶事へ招かれて・・・(2)へつづく