暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

アートをめぐる旅(3)・・直島の家プロジェクト

2018年07月19日 | 


(つづき)

直島(香川県香川町)の「家プロジェクト」は今回の旅で初めて知りました。

「家プロジェクト」のある本村地区をツレとぶらぶら歩くと、愛媛県西予市にあるツレの生まれ故郷にそっくりでした。すぐそばに海や漁港があり、山が迫ってそこには神社が祀られ、狭い平地に焼き板壁の民家が集まり、縫うように細い路地が走っていました。



本村は直島でも古くからある集落です。かつては塩造りで栄えていましたが、過疎化や高齢化が進み、空き家や廃屋が次第に増えてきたそうです。
1997年、使われなくなった家屋を改修して現代アートにしようという「家プロジェクト」がスタートしました。
人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものを作品化しています。
古民家大好きな暁庵としてはコンセプトを伺っただけで胸が高鳴り、興味津々の「家プロジェクト」でした。


    公園側から見た「南寺」(建築設計 安藤忠雄)

    公園のトイレも建築設計は安藤忠雄による


南寺  ジェームス・タレル  (建物の建築設計は安藤忠雄による)

今回最初に訪れたのが「南寺」、光を体感する衝撃的な作品でした。

かつて「南寺」という寺があった場所に新たに安藤忠雄氏設計の建物が建てられました。
周囲の景観に溶け込むように、コンクリート打ちっぱなしの建物の外側を焼杉板で覆っています。

16名定員で8名ずつ2つのグループに分けられ(所要10分、15分ごとの予約制)、無言で入室します。
中へ踏み込むと、そこは鼻をつままれても分からないような暗闇、左手を少し前に出し左壁を伝って進みます。
ゆっくり一歩ずつ直角に曲がっていたり・・・。
この暗闇の中を不安、恐れ、期待を感じながら進んでいくうちに、身体に染みついた常識や不要な感情がそぎ落とされて、本来の人間の持つ感覚だけが研ぎ澄まされていくように思われます。

さらに進んでいくと、ベンチのような物があるらしく
「腰かけて静かにお待ちください」・・・と案内人の声がします。

「入室してから5分経ちましたので、最初に入った方にはそろそろ見えてくるのではないでしょうか」
(えっ! この暗闇の中で何かが見えるのかしら?)
目を凝らして暗闇を見詰めること数分(または数十秒だったか?)
白っぽい光のようなものが前方に見えだすと、やがて映画館のスクリーンのように白い帯となり、左右の壁にも淡い光でしょうか? 白い影のような物が帯状に浮かんできました。

それから、さらに数分経つと、案内人の声が掛かります。
「どうぞ立って前の方にゆっくりお進みください」
スクリーンのような壁の下を覗くと、小さな小さな穴が並んでいて、光が射していました。
でも、最初は確かに真っ暗闇でした。
その闇の中で身体や機能が全身全霊で光を捉え、体感していく過程が、ジェームス・タレルの作品なのです。

ツアーのお仲間が薄暗闇の中で話しかけてきました。
「これで終わりですか??」
「そうです。なんせアートですから、ご自身で体感したことが全てです」と私。
評価や感想は人それぞれでしょうが、私は大満足!でした。
・・・それにモネの「睡蓮」と同じく、暗闇の中の「光」が茶事のテーマとして浮かんできたのでした。


  本村で出合った街中アート

はいしゃ 大竹伸朗
かつて歯科医院兼住居であった建物をまるごと作品化しています。


  アート作品「はいしゃ」の建物と入口


   外も中も凄いです


石橋  「ザ・フォールズ」 千住博
約100年前に建てられた母屋と蔵を改修し、襖絵と滝を描いた千住博の作品を展示しています。
蔵の床に漆を塗ってあって、床に滝が映って見事な景を生み出していました。


    石橋家


  「ザ・フォールズ」 千住博


  見ごたえある床に映った滝 

角屋 「Sea of time’98」 宮島達男
「家プロジェクト」の作品第1号。
暗い室内に水が張られ、125個のLEDデジタルカウンターが1~9の数字を刻む作品です。
その各デジタルカウンターのスピードは島の人たちによって決められたそうです。
不思議で魅力的な空間作品ですが、刻々変化する色鮮やかな数字が点滅するので長くは見ていられないかも?




○他にも「碁会所」「きんざ」「護王神社」があります。
今回時間がなく見れなかった「護王神社」と「きんざ」、残念ですが、また直島を訪れたい・・・と思っています。
訪れたい場所が出来て、楽しみになりました!
  

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