令和7年如月26日に「大炉の夜咄の茶事」へ出かけました。やっとできました。
Sさまに誘われ、Yさまと3人で星岡(杉並区阿佐ヶ谷)へ初めて伺いました。
いろいろお心こもるおもてなしや素晴らしい体験があり、思い出すままに書きとどめておきます。
15時のお席入りでした。寄付に入ると、座敷行灯や床に置かれた手燭が時代を感じるもので興味深く、これからどのような灯火が登場するのか楽しみになりました。煙草盆の隣に置かれた小さな手あぶりに懐かしさを感じます。
手に取ると赤い火種が温かく、可愛らしい座布団付きでした。後でご亭主に伺うと、修行僧が僧衣の袂に入れて暖をとったという手あぶりで、その昔、淡路島の茶事で出会った手あぶりを思い出したのです。
席入すると、八畳と六畳が続いた広いお部屋で、六畳に大炉が切られています。
床の御軸は、有栖川熾仁親王の和歌の短冊でお読み上げ頂いたのですが・・・「みよしのの・・・」。
ご挨拶のあと、夜咄なのでお菓子「越の雪」が出され、前茶を頂きました。
大炉の初炭になり、初履きで客9名が大炉近くに寄って炭手前を見守ります。大きな釜は野溝釜、炉中の雪輪瓦の向こうに置かれた湿し灰が赤い下火を囲むようにさらさらと撒かれ、胴炭から炭がつがれ点炭で席へ戻りました。
その後も大きな野溝釜の蓋の置き位置が亭主の動きやすいように変化して面白かったです・・・。
香は淡々斎好みの「加寿美」(松栄堂)、香合は信楽焼の「狸」、かわいらしい顔の狸でございました。
懐石になると茶室内はうす暗くなり、最初にご亭主が折敷を全員へ、次いで膳燭が運び出されました。これらの燭台が全部違っていて見ごたえがあり、唐銅、楽焼(慶入作)、美濃・黄瀬戸、徳島・大谷焼の4つでした。
魯山人の「星岡茶寮」の流れを受け継いだ懐石は、春の食材を使い薄味でどれも美味しゅうございましたが、もう頂戴するのが夢中で、詳細を思い出せません・・・トホホ 辛うじて、最初の折敷の写真だけが・・・。
(最初の折敷と近くの膳燭、こちらは楽慶入作)
中立で庭へ出ると、そこには灯篭や足元行灯が幽玄な世界を創り出していて、2月終わりだというのに夜風が心地よく感じます。銅鑼の響きにうっとりし、蹲を使い後座の席入りをしました。
(後座の床には払子とセキショウ)
濃茶が各服で出され、すべてご亭主様が練ってくださいました。暁庵は鉄絵の今高麗茶碗で、よく練られた甘みのある濃茶を頂戴しました。
大炉の一番のハイライトの後炭手前ですが。ベテランのご亭主は自然体でさらさらと行われ、ちょっと物足りないくらいです・・・やはり、炭手前は拝見するよりも亭主としてするのが一番ですね。
次いで薄茶になり、薄茶をまたまた全員分(9人分)を各服で点ててくださり、干菓子と共に頂戴しました。
ご亭主はいろいろなお話をしながらお茶を点てられ、半東さんが絶妙なタイミングでご亭主をさりげなく助けられて、お二人の見事な連携プレー(?)が心に残りました。半東さんは無駄のない美しい動きで茶碗を用意したり、運び出されたり、凄かったです・・・。
もう一つは灯り、小灯しがいくつか用意され、その透かしの花も好かったのですが、ご亭主のお好みの灯りが随所に配され、今でもその一つ一つが個性的で目に浮かびます。
「大炉の夜咄の茶事」を茶友と3人で大いに楽しんで、心に残る茶事となりました。
車で送り迎えしてくださった茶友Sさまに感謝でございます。