暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

淡路島・師走の茶事-1

2013年12月20日 | 思い出の茶事  京都編
          下鴨神社の大木(写真がないので・・・)

12月15日、淡路島のT氏の茶事へお招き頂きました。

四国遍路の折に通過しただけなので、淡路島は初めてでした。
T氏は真言宗寺院の若住職なので、このたびのご縁は
お大師様のお導きかもしれません・・・。

T氏の茶友でもあるSさまに同行して(はぐれぬように後を追って)、
神戸三宮から高速バスで明石海峡大橋を渡り、島をほぼ横断し、
バス停から茶友Mさまのご主人に車で送って頂き、無事到着。
思っていた以上に遠かったです。

初の御目文字にかかわらず、ご指名により正客は不肖暁庵、
次客はT氏の先輩Iさま(徳島より)、三客はSさま、
四客はMさま(淡路島在住)、詰はT氏の茶友Sさま(徳島より)です。

待合(洋間)へ入ると、
テーブルの上に舟の様な煙草盆と粉引の火入がありました。
煙草盆は機織りで緯糸をくぐらせるのに用いる杼(ひ)、
韓国の民具だそうです。

「嬉し悲しの六字あり  宗悦」
と書かれた掛物があり、六字とは嬉し悲しの字数かしら?
あとで伺うと、柳宗悦(やなぎ むねよし)の書で、
六字とは「南無阿弥陀仏」と知り、早や赤面です。

六字を唱えれば、嬉しい時も悲しい時も
仏がいつも一緒におわします・・・ということでしょうか。
その下に、何か書かれた紙が置いてありました。
それは・・・「藤村庸軒師走消息」の読み下しでした。

            

甘酒を頂戴して腰掛待合へ進むと、煙草盆が・・。
根来のような古盆、海揚がりを思わせる陶片の灰皿、漆器の煙草入れ、
(う~ん、私の好みをご存知みたい・・・どれもステキです)
手付てあぶりが人数分用意され、その温もりと精巧な造りに
一同歓声をあげてしまいました。

あとで高野山での修業の折、凍えるような寒さの中、
衣の袖に手あぶりを忍ばせて暖をとったというお話を伺い、
厳しい仏道修行の一端を知ることが出来ました。

迎え付けを受け、閑かに無言の挨拶を交わしました。
蹲で身を浄め、茶室「真清庵」(四畳半)へ席入です。

床の掛物は一目で待合にあった読み下しの本歌
「藤村庸軒師走消息」とわかりましたが、一字として満足に読めません。
当ブログで庸軒流Sさまの茶事へ伺ったことを知ったご亭主が、
何か庸軒流に因むものを・・と考えてくださったそうです。

茶室の淡い光の中、濃淡が美しくリズムのある庸軒の筆運び、
味わい深い表装を目に留めました。
消息は益田鈍翁旧蔵で、表装の一部は鈍翁が手を入れたそうです。

・・・お心入れの掛物に恐縮しながら(汗)
「ありがとうございます。
 これからが(どうなることか?)楽しみでございます・・・」


             
                    金戒光明寺の山門

藤村庸軒は千宗旦の高弟ですが、なぜか身近に感じる茶人でもあります。
2010年の今日庵・宗旦忌で庸軒作の竹一重切・銘「時雨」と出逢い、
たしか楽美術館で庸軒好み「凡鳥棗」を拝見しています。
それに、我が灌雪庵近くの金戒光明寺塔頭・西翁院には庸軒の墓と
遺愛の茶室・澱看席
があるのです(残念ながら非公開です・・・)。

先は長くなりそうですが、よろしかったらお付き合いくださいまし。

                                 

         淡路島・師走の茶事-2へつづく