暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

晩秋の夕ざりの茶事-1

2013年12月05日 | 茶事  京都編

    夕づく夜小倉の山に鳴く鹿の
        声のうちにや秋は暮るらむ    紀貫之


銀杏並木が美しい11月29日、夕ざりの茶事をしました。

社中の先輩、Yさま、Mさま、Hさまをお招きしました。
秋の陽はつるべ落としに暮れるので、3時半の席入です。

            

待合に「舞秋風」を掛けました。
紅葉が絵で表された、矢野一甫和尚筆のお軸は、
準教授拝受の折に恩師N先生から贈られたお品です。
正客YさまはN先生の茶友でもあり、一入喜んでくださって嬉しいです。

本床には、白椿一枝を尺八にいれました。

            
            (翌日で花が開いていますが・・) 

ご挨拶のあと、初炭です。
灑雪庵には炉が切られていないので、置炉です。
大好きな炉の風情が置炉では今一つなのが気になっていました。
するとYさまから
「阪神大震災の後、一時関東住まいしていた時は置炉でした。
 懐かしいです・・・」
とお声があり、流石、N先生の茶友です・・・心がぴったり寄り添いました。
いつか京都で必ず役立つと思い、早くから買い求めた置炉に
釜は、これ一つだけと持ってきた天命写・責紐釜。

初炭で香は焚かずに、香席を設けました。
折据をまわして札を開けると、
正客のYさまが月(本香)、次客のMさまが花(次香)を引きました。
Yさまが香包を選び、香を焚いて廻すと、仄かな香りが漂い始めました。
末席でその香を聞くと、上品で清らかな伽羅の香です。
香銘は、和歌(夕づく夜・・・)より「小牡鹿(さおしか)」です。

Mさまが次香を焚いてくださいました。
本香とは全く違う香りで、強く、やや甘く?・・お香は表現が難しいです
香銘は「時雨」、香木は真那蛮(まなばん)です。
香炉をまわしながら、奥深い香りの妙を楽しみ、
2種の異なる香の魅力に全員で酔いしれたひと時でした・・・。

            

一人亭主なので懐石準備に時間が掛かるのが気がかりで
「香銘に因む和歌でも如何かしら?」と思ったのですが、
清談をご所望され、これもお客さま次第で好かったようです。
「ごゆっくり準備してくださいまし」のお声かけを頂き、
安心して準備に掛かりました。

 懐石献立
   向付   蕪蒸し(蕪、穴子、百合根、きのこ、銀杏)
   ツボツボ 紅白なます
   飯    コシヒカリ(近江産新米)
   汁    色紙大根  紅葉麩  白味噌  辛子
   煮物椀  真蒸(ホタテ、銀杏) 椎茸  紅葉麩 
         三つ葉  柚子
   焼物   金目鯛
   炊合せ  海老芋(柚子添)  鳥の丸  オクラ
   箸洗   南瓜の種  梅仕立
   八寸   鴨ロース  銀杏の松葉刺し
   香の物  タクワン、きらら漬、柴漬
   酒    越の寒梅
                         懐石はいつも 

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